思うこと

VAIO、二年目の結果と三年目への思い


ソニーのPCのブランドだった『VAIO』。
ソニーから独立して1年で、社長交代。
その時、大田社長は、ビジネス用PCに大きく舵を切り、新しく営業組織を作り、商品力を強化すること。また請負という新しいビジネスに挑戦することを発表しました。
それから一年。
結果はどうなったでしょうか?

 
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二年目の成果と、三年目の基本計画を
説明する大田社長


■営業利益は「黒字」
結果を言うと、2年目決算は黒字だったそうです。

新しい営業組織で売りが立ったことを意味します。
営業は、技術者を一部配置転換したと聞いています。業務用だからこそできたと思いますが、社内での結束もかなりのモノだったと思います。

2年目には、PC、スマホを上市していますが、孝行息子は「PC VAIO S13」だったそうです。
ソニーグループである程度の数字は見込めますが、それだけではなく、いろいろな顧客先で評価をもらえたそうです。

私も新製品発表会には出させて頂きましたが、確かにPCの出来はイイです。
力を入れて、隅から隅まで考え抜いて作ったことが、スペックだけではなく、本体からも感じられます。

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EMS事業の一つ。
AKA LLCの英語学習
AIロボット「Musio」


が、大田氏の弁によると、これ以外に理由は2つあるそうです。
一つ目は、第二の柱にしようとしていたEMS(電子機器の製造や設計を担うサービス)が、急速に立ち上がったこと。

PC事業とEMS事業の収益比は、50:50。
PCの利益を小さいと見るべきか、EMS事業の伸びが早いと見るべきか。
多分、いずれも正解だと思います。

二つ目は、細かな「改善」の集積。日本の得意技でもあります。
日本の工場、品質が高く評価されるのは、実は常に改善し続けることにあると思っています。
「転がる石はコケが生えない」のです。
最近はM&Aに目がくらんだ会社も多いですが、商品を世に問うなら、こちらの方が重要です。

閑話休題

話を元に戻します。

とにかく大田氏が就任時に出した方向は間違えなかったわけです。

 
■PC事業成功の要因
PC事業の要因を、大田氏はこう見ています。
一つは、営業部(営業技術部)が、ユーザーの声をきちんと拾い上げてきたことです。

実は、民生用PCは、クルマでいうとフル装備車に当たります。
実際使っていない端子類、ドライブが付いているものも多いと思います。
業務用の場合、重要なことは、その様な過不足がないことです。
(それができないと、コストダウンさえままなりません。)
そのためには、ユーザーの要求を的確に把握して対応することが必要です。

 
これは当たり前のことなのですが、「上手いなぁ」と思ったのは、ビジネスユニット制を導入したことです。
このユニット制の特徴は、リーダー(設計リーダー)が損益責任を持つと言うことです。

例えば、1万台/月に売れて、10億円/年の利益を出せる商品を作るとしましょう。
これの責任を取るとしたら、設計リーダーしか取れません。
つまり、上記条件に合ったPCにするためには、そう言った仕様にすることが必要だからです。

これを明確に認識できないと、ラインナップを増やすことになります。
ラインナップが多いということは、不良在庫を多く持つと言うことでもありますからね。

一番効率がイイのは、商品を設計する者が、それを統べることです。
が、多くの場合、バラバラ。
営業の仕方によっては、商品の良さが伝わらなかったりします。
そうなると、ユーザーは自分が望んでいるモノが、それであることが分かりません。

このため、今回はリーダーにモデル毎の事業計画を出させたそうです。

これはスゴいと思いました。

 
■「身の丈に合った」という言葉
最近のイイ感じの会社に、かなり共通するのは「身の丈に合う」という感触です。
特に、こんなご時世でも、緩やかながらも右肩上がりを続けているそんなに大きくないメーカーから発せられていることが多い。

VAIOの発表でも、その言葉が何度か発せられました。

 
黒字化したと行っても、VAIOは300人足らずの会社です。
人と金、そして時間が余っているわけではありません。

しかし守りに入っているわけではありません。
むしろ安定を目指し、多方面に「身の丈に合った」投資をしています。
そして、それが三年目の目標と言うわけです。

 
■三年目の計画
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VAIO C15。
久しぶりの一般民生用PC。


単純に言いますと、「PC」「EMS」の両事業は、安定した発展をめざします。
しかし難易度は高いです。
それはそうですよね。

仕事、学業でも、PCは欠かせません。
しかし、その他、今までPCで行ってきた所は、タブレットやスマートフォンに取って変わられています。
学業も複雑な分析などをしない限り、タブレットで用は済みます。

これに対抗するVAIOの策は
1)VAIOのものづくりの姿勢「快」の継続
2)数量を追わない / 頻繁なモデルチェンジを行わない / ターゲットユーザーの明確化
3)各モデルの事業改革と P/L作成を継続
4)法人向け施策の強化
だそうです。

余り変わりませんね。
実は、EMS事業も似た感じです。

 
そして、それに第三の柱となる事業を加えるそうです。

内容は教えて頂けませんでした。
ただ、EMS事業が、PC事業の技術を使い派生した様に、第三の事業は、PC & EMS事業から派生するものだそうです。
 
■メーカーの再生は「製品」で
VAIOは黒字化を果たしましたが、私は、それはPCを作り続けたからだと思います。
メーカーは、モノを作る会社です。
それは、銀行や証券会社とは違います。

VAIOの良かったのは、PCの製造を捨てなかったこと。
最終的には、単にモノをくるメーカーでなくなると思いますが、基本をそこに置いたことが、今回の成功に大いに結びついていると思います。

メーカーの基本のモノ作り、そこから偶然か、意図的かはわかりませんが、それから再出発できたのがVAIOの強みだと思います。

 
VAIOのホームページは以下の通りです。
https://vaio.com
 
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