新製品

ダイソンの新型ドライヤー
ダイソン スーパーソニック ヘアドライヤー


ダイソンが、新しい分野に挑戦です。
モーターと風制御に強いダイソンですが、むしろ今回一番感心したのは、科学と商品設計のスタンダードを外していないところです。
■髪が傷む理由
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ジェームズ・ダイソン氏。手に持っているのが新製品のDyson Supersonic ドライヤー。
ドライヤーというより、ハンマーか打ちでの小槌に見える。


本日、登壇して発表は、ジェームス・ダイソン氏。
ダイソン社の社長であり、このドライヤーが世界同時発表であることを考えると、うなずけるところがありますが、紹介される肩書きは、チーフ・エンジニア。

ダイソンの面白さは、トップが「経営者」ではなく「技術者」であり、商品の最初から終わりまで面倒を見ることです。
メーカーで、これ以上強力な体制はないですね。
とにかく、徹底、一貫したした商品。これが、ダイソン製品の魅力です。

 
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テストした髪の毛の一部。
テストした髪の毛は、1625kmに
及び、人毛束市場で一時
人毛束が不足したという。


ドライヤーを作るにあたり、ダイソンでは、いろいろな調査を行ったそうです。
髪が熱によりダメージを受けることは広く知られていますが、それがどういうことか余り説明されていません。

ダイソンによると、髪は150℃以上の熱が掛かると、修復できないダメージを受けるそうです。
ご存じの様に、髪は鱗状のキューティクルで覆われて保護されています。
しかも人間の一部ですからね。
ある程度の自己回復力を持っています。

では、150℃で何が起こっているのかというと、髪自体が持っている水分(10〜30%)が蒸発し、外に出てしまうのです。
その時の大問題は、外に通じる穴とかない状態で、蒸気が外に出ようとする。つまり爆発が起こるわけです。
顕微鏡写真では、穴が開いていました。
こうなると、決定的なダメージとなるわけです。

「えー、150℃なんて熱風がドライヤーからでるの?」と問われれば、可能性はあります。
全てのドライヤーを調べたわけではないので、断言はできませんが、ドライヤーはファンで風を起こし、ヒーターを通過する際に風を温める方式を取っています。
かなりの風速にも関わらず、熱風になるのですよ!
ヒーター自体の温度はかなり高いです。
ここに想定外のこと。例えばゴミで風の通りが悪くなったとかが発生しますと、当然温度は上がりますよね。

そう、髪を傷めないドライヤーに求められる条件の一つは、正確な温度コントロールがあげられます。

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左)競合製品の温度分布。設定温度(マゼンタ)を達成するため、中央部はより高い温度、
右)ダイソンのドライヤー 全部が設定通りの温度になっている。


 
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温度制御のコントロール基板(緑)


このためにダイソンは、ヒーターに掛ける電気量でコントロールするのではなく、送出口に温度センサーを設け温度を管理することにしました。
また、風の中で温度分布が偏らないように、モーター、ファンなども全部合わせ込んであります。

 
■11万回転/分の小型モーター
ダイソンの技術の根幹の一つは間違いなく「モーター」です。「サイクロン」システムと言うこともできますが、高回転のモーターがなければ、サイクロンシステムに必要な風を起こすことはできません。

ちなみに、初期のダイソン掃除機は五月蠅いです。
かなり近くでも会話が成り立たない程です。
とにかく何はなくとも「サイクロン」を実現するために、「高出力」が必要だったからです。
この時、まだダイソンは、現在のように他社に大幅に差を付けているレベルではありません。

時は経ち、その間、モーターの改良・開発は続けられます。
小型、高出力、省エネルギー、静音は、その時の必須条件です。
そうして、出来たのが小型の高回転モーターだったそうです。

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左)通常、ドライヤーに使われる大きさのモーター
右)今回採用された ダイソン デジタルV9モーター。


時を同じくして、次なる、新しい分野として「ドライヤー」はどうかというアイディアが出たそうです。
しかし、今の良くない所は修正してダイソンならではのドライヤーができるのか? という、いかにもダイソンらしい問いが発せられます。

男性はあまり感じませんが、髪の長い女性は、15〜20分もドライヤーを使います。
スマホ巻き肩ではないですが、負担が掛かりますね。
それはドライヤーで最も思い部分、つまりモーターが本体の中にあるからです。

物を持った時軽く感じるためには、思い部分がなるべく持ち手に近いことです。
できれば持ち手部分が一番重いのが好ましい。

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持ち手の中にモーターがあるといかに使いやすいかを説明するダイソン氏。


持ち手の中にモーターを入れればイイ。
小型のモーターはあるか?
ある! 開発されたばっかりのがある!

DSCF2688-2 偶然の産物の様ですが、そんな感じで開発は進んだとのことです。
尚、当ドライヤーの構成は、オックスフォード大学病院ゲイト研究室と一緒に人間工学的にも優れていることが検証されています。

 
ちなみに11万回転の小型モーターなど私は知りません。
高速で回転するので有名なHDDでも、7200回転/分。2桁も違うのです。

ダイソンは、掃除機で11万回転のモーターを持っていますが、それを小型化したとしても大変だったと思います。

 
■最後まで難航した音対策
このドライヤー、最後まで難航したのが音対策。
掃除機と違い、耳の近くで使いますからね。ちなみに会話が成り立たない位の爆音だと、ヘアサロンでは使用できません。

ここはモーターを小型化したことが有利に働きました。
振動ピッチが早いため、高周波なのです。一部の音は可聴領域〜20kHz。と言われているが、絶対誤り。でないとハイレゾ・オーディオなどは成り立たない。
を超えているとのこと。


ただ、それだけでは不十分。
ファンの羽数:13枚は、音対策で決まったそうですし、持ち手には中に防音材が入っています。
また、モーターの振動、音を抑えるために、特殊なマウント(モーターを設置する時に使うパーツ)を採用したそうです。

 
■使い勝手
ダイソンらしい、シンプルな使い勝手です。
送風温度と送風量は、三段階調整。事前に決めます。

使用時が、メインスィッチでon/off。そしてセットを固定させるための涼風です。

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感心したのはアタッチメント。
マグネット装着です。その上、2層構造のため表面加熱がなく、火傷の心配がありません。

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左)アタッチメントを付ける前、中)スムージングノズルを付けたところ、
右)ディフューザーを付けたところ


 
自分が納得する製品を世に出すダイソンの良さが前面に現れた製品と思います。

 
ここでCMを一本。(映像:30秒)
よりご理解頂けると思います。



 
■何故、日本市場?
11月の第三木曜日に解禁されるボジョレーヌーボが世界で一番最初に飲める国は日本であるということは皆さんもご承知のはずです。
今回の発表は世界同時。しかも、ダイソン氏自らの説明です。

何故、こんなにも日本を目指すのか?
ということで質問してみました。

解答は、「日本の女性は毎日シャンプーするから」でした。

世界各国から見て、日本は異常なほど清潔な国です。
これは江戸時代の昔からですね。
銭湯が安く、朝からやっていましたからね。

しかし、それでも髪をキチンと整えるのは、数日に一回。
髪梳きは毎日はしません。

ところが今日は、風呂、シャワーは当たり前。
髪の毛も毎日です。

こうなると少しでも、早く乾いて傷まないドライヤーは重宝されます。
ということで、ヨーロッパでも、アメリカでも、中国でもなく、日本市場を重要視したそうです。

ダイソン スーパーソニックは、アイアン/フューシャ、ホワイト/シルバーの2色。参考小売価格:45,000円(税抜)です。

 
商品のより詳しい情報は、ダイソンのホームページにてご確認ください。
http://www.dyson.co.jp
 




2016年4月28日

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