思うこと

人の世は丸く出来ているのでは?
オリンピック展示問題を取材して思う


国際展示場と国際会議場は併設されることが多いです。
世界最大の家電ショーIFAが行われるドイツのベルリンにあるメッセ・ベルリンがそうですし、国内でも千葉の幕張メッセ、東京のビッグサイト、博多のマリンメッセ福岡コンベンションセンターもその様な配置にしてあります。
これは展示で刺激を受けながら、取り決め、ビジネスを行うためです。
2020年、東京オリンピック(以下 東京五輪)の時、メディアセンター(報道センター)として、7ヶ月以上ビッグサイトを使いますと宣言されたので堪りません。
展示会と、それに伴うビジネスができなくなってしまう。
さて、どうするんだ?
これが「オリンピック展示問題(以下 展示問題)」と言われるものです。

 
この問題を、WEDGE Infinityに書きましたところ、かなりの方に読んで頂けました。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9105
問題解決に対し、微力ながら協力できたのではないかと思っております。
が、ちょっと言い足らなかったのも事実です。今回はそれを書いて見たいと思います。

国内最大規模の展示会場、東京ビッグサイト。
東京ベイエリアにあるが、必ずしもアクセスし易いとは言えないのも問題。


■代替案はどこが出すのか?
今回の東京五輪、国立競技場だけでなく、東京都所有の競技場の整備、国際的に安全と言われる食事を出せるのか(日本の食事が危険と言うわけでなく、業者が国際ルールを遵守していることを証明することが必要)、選手村は?、交通は?、観光客の受け入れは? 課題が山積みです。
そうそう一応決着がついたとは言え、エンブレム問題もありました。

何故、こんなにごたつくのかと言うと、2つの問題があるからだと思います。

1つは、招致時と実行時の受け渡しがスムーズでないこと。
2つめは、責任者がいないことです。

特に2つめは大きな問題で、リオで安倍総理がマリオの格好をしても、安倍総理は最終責任を取りません。
これは、東京五輪でいうと、最高の決定機関とも言える、調整会議を見るとすぐ分かります。
「東京都」「組織委員会」「日本オリンピック委員会(JOC)」「日本パラリンピック委員会(JPC)」「文部科学大臣」「五輪担当大臣」がメンバーです。

ここでスゴいのは、議長と事務局がいないのです。
つまり、責任者と予算を仕切る財務部門がいないわけです。
東京都知事も、組織委員会会長も、パワーがある一参加者と言うわけです。

これだと、予算関連も、スケジュールも出ません。
当然、関連問題に対する代替案も出るわけありません。
何たって、責任者もいませんし、お金の使い方もはっきりと決まってないわけですから。

 
ちなみに、「組織委員会」は東京都の外郭団体。政府は関与しません。
何故、ここに森氏を長にしたかという問題はあるにせよ、とにかく東京都の手腕が問われることとなります。

 
■観光業に対する認識がプアな日本
展示会も含めて、ショービジネスで一番スゴいのは、間違えなくアメリカです。
アメリカのスゴいところは、動員人数をキチンと吸収してしまえることです。

例えば、アメリカで1月恒例のCES。(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)
IFAと常に比較される、家電ショーです。
行われる場所は、ラスベガス。
そう、アメリカの強みは、ホテルとショーで形成される土地、ラスベガスを持っていることなのです。

ラスベガスのホテルは一声 100万室と言われます。
まぁ、それが本当か、どうかは置いておくとして、膨大な数のホテルがあります。
稼働率は、80〜90%と言われるので、スゴいモノです。

大きな展示会はここで行うのです。
展示会場も、宿泊施設も整っています。
しかもカジノ、ホテルのショーもあり、家族を連れてきても(欧米は部屋貸しなので、余分な宿泊費を払わずに済みます)ノー・プロブレムだし、海外からも人を呼びやすい。
東京も、和食(WA-SYOKU)がイイと言われなければ、夜、ベガスほどは遊べませんので、外国のビジネスマンも大挙して押し寄せることはなかったでしょう。

インデックス大阪。こちらもベイエリア。
こちらも大阪中心部から時間が掛かる。


それはさておき、日本は、そんな認識が足りていません。
観光客がちょっと増えると、日本のビジネスマンはラブホテルでの宿泊を余儀なくされるほどです。

2014年、2015年と、博多に大相撲九州場所を見に行きました。
2016年初場所に、日本生まれの琴奨菊が優勝する前、稀勢の里が横綱になる前でしたので、それなりにチケットも入れやすかったのですが、宿が取れなかった。
2014年はポール・マッカートニーのコンサート、2015年は嵐のコンサートとぶつかったためです。

要するに、5万人のプラスすると、博多は宿泊アウトなわけです。
これでは、「観光業」と言われても、「???」なわけです。

ラスベガスの周りは単なる砂漠。
ダム、キャニオンを見に行くとしても、クルマを半日くらい飛ばします。
このためなのでしょうね。
ホテルのアミューズメント化を、すたわけです。
カジノとショーで。

日本の観光は資源がないからとなりますが、アメリカは「作ってしまえ。」
ハングリーさが違います。

 
■取材時使われた「陳状」という言葉
今回の取材で違和感を感じたのは、2つです。

1つめは、彼らが出してきた「代替案」のプアさ。
2つめは、「陳状しなければ」という言葉です。

何かと、色々な事が言われている、豊洲市場。
建物の外観は立派なのだが・・・。


1つは、現在揉めている築地、豊洲への移転問題。その使わない方の施設を借りられないかと言うのがアイディアの中にあったからです。
その場で、取り消しはしたものの、言ってはならないこと。言うべきでないこと。世にはそんな類いのことが多くある。もし豊洲が市場としてNGとなったら、と言うのは報告会の中では言ってはならないだろうと思いました。

もし洒落で言うなら、某TV局と契約。メディアセンターを新規に作り、半額で新社屋として、某TV局に売り渡す。予算は都で半分、TV局で半分とか言うのはどうでしょうか?
(友だちのアイディアを拝借しました)

ただし、これは余り大きな問題ではありません。

 
私が一番大きな問題と感じたのは「陳状」という言葉である。
日本国憲法 第16条には、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」とあるので、今回の問題に対し未然に請願する権利はある。

しかし、どこにするのであろうか?
責任者がいないのだ。
決めることができなければ、何にもならない。

ビッグサイトは、東京都所有。当事者ではあるが、責任者ではない。
これは納期ある仕事を行う場合に対し、非常に由々しき問題なのだ。

 
■「東京」は誰のモノか?
日本の東京は、世界でもかなり珍しい都市だ。
世界にメガロポリスに当たるのは、東京とニューヨーク。しかし、立場が全く違う。
アメリカは連邦制であり、ニューヨークはその中の都市で、独自発展したものである。

東京は違います。
日本の首都であり、全ての権力が集中しているエリアでもあります。
つまり、何でもありになってので、人が集まってしまい、ビジネスの中心にもなってしまった。

しかし、江戸時代を考えて見てください。
確かに江戸は政治の中心地。しかし、かなりの間は、大阪が商業の中心地だったし、蘭学の中心地は長崎だった。結構バラバラでした。

いろいろな施策がなされましたが、東京は、「政治」、次に「軍事」の中心地として作られており、決してビジネスがし易いように作られてはいません。数が少ないですし、施設自体もプアな場合が多い。
立派に見える東京ビッグサイトでも食事などは泣き所です。

ドイツベルリンのメッセ・ベルリン。
規模はビッグサイトの2倍以上だが、世界では17位。


本当に、経済を維持するつもりなら、金の巡りを良くすることも必要ですが、それと共に、ビジネスプレーヤーが動きやすい環境をもっと整えることが必要ではないでしょうか?

中央集権を維持するなら、もっと東京を整備する必要があります。
少なくとも、少ないビジネス施設をやり繰りさせるのは余りいい考えとは言えません。

展示会場だけを取っても、サイズ、数とも、ほとんどの国に負けています。
観光客の誘致も必要ですが、ビジネスマンに取って魅力的な街になっているのでしょうか?
中央集権で、東京に一通り何でもあるというだけではないでしょうか?

東京都がビッグサイトを「都の持ち物だから」と言ってビジネスから遠ざけることがあってはならないと思いますね。
都民も、そんなことは思っていないと思います。
それを都民の代表である東京都が、やってはダメでしょうね。

この問題、表面的には、「会場」の問題ですが、大きく見れば、東京はどうなければならないのかが問われている話でもある。
ゴジラより100mも高い都庁(平成ゴジラシリーズの VS キングギドラで、ゴジラ:100m、キングギドラ:140m。都庁は243m。ゴジラが吹き飛ばされ都庁に当たっても崩れなかった。日本の建築技術を褒めるべきか、それともムダにスゴいと称えるべきか・・・)を作った金があったら、展示会場の一つも作れたと思ったりします。

さあ、この問題の着地点は如何になりますことやら。
今できる、一つのことを示唆して、終わりたいと思います。

 
今、民主主義国家の第一歩として、署名を集めているところ。
心ある人は是非、ネットでの署名をお願いしたい。
https://2020event.tokyo

2017年4月3日

タグ: