思うこと

ロボット家電の最重要技術は?
「聞く」という行為を考える


サントリーの缶コーヒー「BOSS」のCM、宇宙人ジョーンズ シリーズ。
MIB映画「メン・イン・ブラック」のこと。アメリカでは、古くより対宇宙人の秘密組織があると言われてきたが、そのメンバーは常に黒尽くめであったため、こう呼ばれている。映画のタイトルはそこから。で主役を張ったトミー・リー・ジョーンズそっくりの地球人になりすまし、さまざまな職業を転々としながら、未知なる惑星・地球を調査します。
今回は、「Pepper(職場)」篇。
場所は、スタジアム建設中の湾岸エリア。「この惑星の、ロボットをつくる技術は、日々、進歩しているらしい」というナレーションから始まります。

作業員たちに「今日から手伝ってくれるPepper(ペッパー)君です」と紹介され、「よろしくお願いします」と挨拶するPepper。
朝礼の後、さっそくPepperに近付き、「危険な作業とか、やってくれんのか?」と問う作業員役。Pepperが「しゃべるだけです」と答えると、「ぜんぜん役に立たねえじゃねえか」と一言。
その後、Pepperがするのは、挨拶とおしゃべり。
で、いろいろあって、ラスト、休憩中、「なんかPepper来て、現場明るくなった気がするなー」と一言。缶コーヒーをゴクリというストーリーです。
露出量が高いCMですので、ご覧になった方も多いと思います。

 
■今の社会に欠けているモノ
私はこれを見た時、現在置かれている社会状況を痛烈に感じました。
昔の職場には、必ず居たはずです。
雰囲気を作るのが上手い人が。

しかしこの雰囲気を作る役、能力として認められていません。
リストラばやりの今、これらの人は追い出されます。
雰囲気を作るのは上の者の役割と言うわけです。

結果、ギシギシしますね。
それでも仕事が上手く行けばイイのですが、行かないと足の引っ張り合いが始まります。

これがマンガなら「友情」「努力」「勝利」少年ジャンプの合い言葉。少年マンガの王道。でカッコいい解決も図られるのですが、現実には多くの場合、「じっと我慢の子」ご存じ、青年向け劇画「子連れ狼」から。となります。

 
今の社会、昔のような余裕がありません。
金儲けに忙しい余り、人の心が亡くなっている気がします。
「忙しい」という漢字は、心を亡くすと書くわけですが、現代では洒落になっていません。
リアルです。

 
私は、ロボットを上手く使うと、人の世に余裕を取り戻すことができるのでは、と思います。

 
■心の隙間をロボットは埋められるのか?
CMの中で、ロボットのPepperがしているのは、聞いて話すことです。
これは、カウンセリングと同じですね。
カウンセリングでは、患者はひたすら話します。
カウンセラーは基本、ひたすら聞きます。
話しても相づち位ですね。

実は、それでも、カウンセラーはハードな職業です。
私的な秘密情報もありますし、精神が強くないと、心が病みます。

でも同じことを、ロボットは可能なのでしょうか?

 
最近、気になる記事がネットを賑わしました。
SONYが発売したロボット犬、アイボの合同葬儀です。

思い入れが強かったのでしょうね。

考えてみれば、動かない人形に深く思い入れる人も多いです。
人形寺と呼ばれる供養寺もある位ですからね、アイボだと当たり前でしょうね。

これは心の隙間を人形、もしくはロボット犬で埋めていたという言い方もできると思います。

 
■人形ロボットはカウンセリングができるか?
人は皆、頭がイイです。
悩み相談すると、何らかの結論を返そうとします。

しかし、カウンセリングは、何も結論を出しません。
カウンセリングのポイントは、その人が持っているものを出させ、その人に気づいてもらうことなのです。

悩みがある場合でも、多くの場合、悩んでいる人は、どうすれば自分が「納得」し、結論を出せるのかを知っていることが多い。
ただし、それに対する不安が多いと躊躇するわけです。

そうすると、当然モンモンとするわけで、ストレスが溜まります。
ストレスによりホルモンバランスが崩れると、自律神経失調症なります。

 
逆に言えば、その人が話せる状態になると、悩み(ストレス)はかなり軽減されるわけです。

 
さて、疑似でもイイのですが、ロボットにカウンセリングは可能なのでしょうか?

 
■難易度は高い・・・・か?
アイボでそれなりだし、動かない人形でもそれなりの効果があるのだから、簡単ではと考える人もいらっしゃるかも知れませんが、この道は非常に険しいと私は思います。

というのは、人形もアイボも基本、人間より格下だからです。
どこかで、自分の方が上と区別している可能性があると言うわけです。

だから、羞恥心なくいろいろと言えるわけです。

 
昔、戦争中ですかね、アメリカ人女性は、日本人の前で、裸になっても恥ずかしくない。
だって日本人はイエローモンキーだから、という話を読んだ記憶があります。

要するに猿は人間ではないので、羞恥心はないと言うわけです。
格下の意味は、こんな感じです。

 
ただ、それだけではないです。
羞恥心がなくなっても、しゃべり易い相手であることが必要です。

 
人間とは違うロボットということは、ある種 目下で、好感を持たせることが可能なのかも知れません。そう言う意味では、人より話し易いのかも知れません。

昔は、人と人とが密にコミュニケーションを取っていました。落語などでは、「恋煩い」という微妙な病気の詳細を聞き出しに行くのは誰が適任であるのかと言う話が割と出てきます。羞恥心を超えて話すわけですからね。

今は、相談できない場合の方が多い。こうなると、ロボットの方が適任かも知れません。

 
■丁寧語で、相づちが上手いこと
つぎはしゃべり方です。

基本は、丁寧語です。
CMの、Pepperくんも丁寧語です。
何たって目下ですからね。
方言とか、いろいろなバリエーションより、丁寧語がバッチリ使える方がベターだと思います。

 
そして受け答えです。
目下なのでですから、チンプンカンプンでも良いのですが、それだけだと飽きられます。
ポイントは「相づち」だと思います。

 
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なんと寿限無でジャズを。
坂田明の寿限無の読み上げから始まるこの曲、大名曲。

日本を代表する話芸に落語があります。
幼児番組でも取り上げられ、家の子供たちも寿限無くんの名前子供に長生きをさせたいが故、めでたい名前を付ける話。ただ親が決断力がなかったため、名前の候補を全て付けてしまう。曰く「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末雲来末風来末、食う寝る処に住む処、やぶら小路の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」をフルで話すことができるくらいです。

落語は演者が一人ですから、自分で話し、自分で受けるわけですが、その時多用されるのが相づちです。

幼い子供もそうですね。
一人遊びの時、自分でいろいろ言っては、「はいはい」とか受けていますね。

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今は懐かし45回転のドーナツ盤

漫才もそうです。
その昔、「うなずきマーチ」という名曲がありました。
作詞、作曲は、かの大瀧詠一(故人)。
歌は、ビートきよしツービート。相方はビートたけし。松本竜介(故人)紳助・竜介。相方は島田紳助。2006年、脳出血のため死去。島田洋八B&B。相方は島田洋七。のうなずきトリオ。
漫才のうなずき役を一つにまとめたユニットです。

確かに、相方の三人は、ビートたけし、島田紳助、島田洋七ですから、ピンでもスゴいのですが、先ほどの相方がいなかったら、スベりに滑って人気が中々出なかったかも知れません。

話は脱線しましたが、人が話す時、少しでも受けがあった方が、話しやすい。
これが相づちなのです。

 
■「聞く」のが大問題
最大の問題は、聞くことだと思います。

昨年9月に発表されたパナソニック 4Kテレビ ビエラ AX900は音声操作が可能です。
「マイクオン」「チャンネル 1」「ボリューム 30」「番組表」「日曜午後8時」「ディーガに録画予約」「終了」など、きちんと言うことを聞いて動作します。

しかし、カスタマイズはできないそうです。



例えば、「チャンネル 1」ですが、「NHK」という人もいれば、「1チャン」という人もいます。ヨチヨチ歩きの赤ちゃんに話しかけるのではなく、日常品ですから、どうしても言葉は簡略化されます。

それについて行けないのは厳しい。

私は、この技術の集約化が、楽に家電を声で動かすことになると思います。

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Pepperは、クラウドで感情分析を行う。
その中の一つが音声認識。

多分、人が話すいろいろな言葉、話題について行くとなれば、ネットを通じ、クラウドに上げて言葉を分析し返すことになるでしょう。
つまり、一部学習型のコンピューター、一部クラウドで対応するわけです。
そして、本体内部にある学習型のコンピューターが、そのロボットの個性ですし、個人情報をネットに流さない管理もするわけです。

アイボも学習型コンピューターを搭載していましたが、なにぶんにも、元犬ですからね。

 
■聞いたり話したりする機能をロボットに付ける理由はあるのか?
私はあると思います。
というのは、人間の世が可笑しな方向へ進んでいるからです。

 
昔の未来都市を見てください。
機械に単純仕事を任せ、人間は芸術など、人間性、精神性を高めることに時間が使えるように書いていましたよね。

生産ロボットが増えた現在、人は職を失い食べられなくなって行く。
まぁ可笑しな世界です。
自由主義をいう言い方は、別な言い方をすると優劣主義と言い換えてもイイかも知れません。
平和な人も、そうでにあ人も「自分が一番じゃないとイヤ」というヤツに巻き込まれるわけです。当然ギスギスしますね。

ほどほどなら、まだ良かったのですが、ね。

そうすると、人間相手だとどうしても心を開けない人が、出てきますね。

心の弱い人には、話を聞いてくれるロボットがあった方がベターだと思うのです。
また、高齢者にも。
高齢者は、孤独になり易いからですね。

 
■なか〆
実は、この話、自分の中での最終結論がでていません。

「話を聞いてくれ、相づちをうってくれる機能を持ったロボットがいたら幸福になるのか?」と聞かれると、可能性は十分あると思います。

しかし、方向性はそれだけでしょうか?

 
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シャープのココロボ V200。
何やら光るモノがある!

私はそうでないと思います。
例えば、シャープのココロボ。
足下、前を通過する時に「通りまーす」と言われると嬉しくなってしまいますね。
「おう、頑張れ」と言ってしまうのですよ。

「萌えてるの?」と聞かれると、そうなのでしょうね。

ロボット掃除機にしゃべる機能が必要かと問われれば「?」は付きます。
多くのロボット掃除機はしゃべらないですから。

的確に言うことはできませんが、ココロボには掃除機としてではなく、何か別の要素があると思います。

 
あと、ここまで書いて気付きました。
これってディズニーの映画、アクション機能以外のベイマックスの性能解説になっていますね。
皆、考えることは同じなのかも知れません。

2015年3月9日

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