思うこと

名前の威力
DEEP AQUA 谷尻誠 氏のトークショーから


10月31日、ハイアールAQUAの新製品発表会が行われました。
会場となった東京ミッドタウンでは、グッドデザイン賞受賞展(以下G展)が行われていました。
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AQUA AQR-261B
2013年度 G賞受賞


ハイアールAQUAも、冷凍冷蔵庫「AQR-261B」で2013年度のグッドデザイン賞を受賞しました。
また今回の新製品も、デザインは優れております。

実際、ハイアールアクアは、G展会場では新製品をデザインされたコンテナの中にディスプレイしていました。
そのコンテナデザインを手がけた、建築師:谷尻誠さんのトークショーが、11月3日に行われました。
非常に示唆に富むトークでした。
余りにも面白かったので、ちょっとレポートします。

 
■名前を取り除いてモノを見直す

彼の思いは、「新しいものを作りたい。ただしふつうの新しさ、その辺にある新しさ」だそうです。
これは色々な意味を持ちますが、それは置いておくとして、それを行う時の発想術が面白かったです。

モノに別の意味を持たせるために、そのモノの名前を取ってみるのだそうです。

例えばコップ。
「コップ」というと「飲む道具」という概念が固定されてしまう。

だから名前を取ってみる。そうするとガラスで出来た円柱形もしくは円錐形のモノになるわけです。
例えば、花瓶にもなりますし、筆立てにもなる。ランプシェードとしても使えます。

素材と形で発想することができると言うわけです。

 
■名前の役割

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局所的な真空で、脚が切れることがある。
昔の人は3匹のカマイタチで説明。
切れても血が出ないため、カマイタチは血止めを塗りつけることにされた。


話は変わりますが、妖怪をご存じでしょうか?
ゲゲゲの鬼太郎で有名なあの妖怪です。
水木しげるがビジュアル化にしているため、その姿、形をしているものがあるように感じるかも知れませんが、実際は違います。

あったのは「怪異」です。
例えば、夜道を歩いていると、「ひたひた」とつけてくる足音がする。しかし誰もいない。怪異ですね。
このままだと凄く怖いです。

稲川淳二の怪談にも似た話があります。最後は、「稲川さん、あれって何だったのでしょうね?」で終わります。
そうなのです。分からないと人間は恐怖を持続させてしまうのです。

その対処法が、名付けです。
この怪異は「ひたひたさん」と呼ばれます。名が付けられると人はわけがわからない恐怖からは解放されるのです。
そう「ひたひたさん」に会ったということです。
怪異ではありますが、説明は付いているのです。わけがわからないわけではありません。

この怪異から逃れるには、その怪異特有の対処法を講じれば良いのですから。
例えば、口裂け女だとポマード、ポマード、ポマードと3回言えば災難から逃れられるわけです。

怪異は現象ですが、名付けることにより分類、認識ができ、対処法も分かると言うわけです。
これをビジュアル化できれば、人気漫画家にもなれます・・・。

逆に名前がないと、いつまでも足音に怯えることになります。
名付けは、そのものを特定し、説明もできる合理的な手法で有るわけです。

 
■名前を付けると機能も付く

谷尻さんは、次に段ボールにPOSTと書いた時の話をしました。
茶ダンのミカン箱を思い浮かべてもらえればと思います。
玄関前に置いておくと、きちんと手紙が入ったそうです。

POSTの文字が、茶ダンの箱に、郵便を受け取るという機能を持たせたわけです。

名前を付けることで、新しい価値も創造されるのです。

 
■縛られない発想

つまり、そのモノを縛っている名前を外すことが重要と言うことです。
谷尻さんは、建築家ですので、プロダクト系で話をされましたが、ビジネスにも応用可能です。

今、携帯電話は通信事業者が扱っています。
しかし、デジカメとしても屈指の機能を持っています。コンパクト・デジカメも風前の灯火になる位ですので。
ならこれをカメラ屋がメインになって売るためにはどうすれば良いのでしょうか?
名前を変えるのです。「携帯電話」ではなく「デジカメ」という名前にするのです。
これでカメラ屋が中心になって販売できるわけです。

逆説的な言い方ですが、名前はこのように、いろいろ縛ります。

 
実に単純な手法ですが、非常に効果的な発想方法だと思います。
いろいろと応用も利きそうです。
皆様も使ってみてください。

2013年12月15日

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