レポート

ネスレ、Special.T その1
紅茶のラインナップをチェック!


11月1日は紅茶の日です。
寛政11代将軍 家斉の時代3年(1791年)暴風雨のためロシアに漂着してしまった大黒屋光太夫がロシア皇帝エカチェリーナ2世の茶会に招かれ、日本人で初めて紅茶を飲んだことに由来します。
さて、この日に最も相応しい家電、ネスレ Special.Tのレポートを前編・後編、2回でお届けします。
■一番重要な茶葉を、もう一度考える

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茶の木。中国奥地原産とされる。ツバキ科。
日本茶、中国茶、紅茶も発酵度合いが異なるだけで皆、茶の葉から作られる。


まずは紅茶の話を。

紅茶ってどの位の種類があるか、ご存じでしょうか?
アールグレイ、ダージリン、プリンス・オブ・ウェールズ、セイロンオレンジペコ、アッサム、イングリッシュ・ブレックファスト、等々が色々販売されています。

 
茶はすべて茶の木から作られます。
が、実際の紅茶は大きく3つに分類されます。

1つは、その地域の単独茶葉の紅茶。その地名で呼ばれます。
コーヒー豆と同じ感覚コーヒーの木も現在はほぼ2種類しか生産されていなし、ストレートで飲まれるものはアラビカ種。しかしあれだけ味が違うのです。ですね。
ダージリン、セイロン、アッサム等です。

ちなみに世界3大紅茶は、俗にウバ(スリランカ ウバ州)、祁門(キーマン、中国安徽省)、ダージリン(インド 西ベンガル州)と言われています。そう言われたのは20世紀前半ですので、少々古いかも知れません。

母がダージリン好きだったので、私も紅茶と言えばダージリンしか知りませんでした。

 
2つ目は、ブレンド紅茶です。これは「使い道」で呼ばれるのが一般的です。
イングリッシュ ブレックファスト等です。

日本では、ブレンドするの? とお思いの人もあるかも知れません。
日本茶はほとんどブレンドされませんですから。

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世界で最も有名かも知れない茶会。
不思議の国のアリスより、「きちがいじみたお茶の会」


昔のイギリスでは、貴族の間で茶会が大流行しました。
当然、自分がホストの時は大いに褒められたいわけです。
そのためには、他人様と違う味の紅茶を出さなければなりません。混ぜて味を整えるのは、西洋では一般的な技術。
で、ブレンド茶が出来るわけです。

また紅茶が大流行した時は、万年茶葉不足。そのため単一銘柄より、ブレンドの方が味を調えやすかったのかも知れません。
輸入量の2倍の消費があったともいわれていますので、ここら辺になると何が真実やら・・・。

ところでイギリスに詳しい人だと、イングリッシュ ブレックファストってミルクティーだと言うことを承知されていると思います。
また、砂糖を入れて飲むのが通常だそうです。
この習慣は、産業革命以降だそうです。
理由は、庶民が紅茶を飲み出したこと。仕事が長時間化したために、空腹を紛らわせるためとも、栄養が必要になったためとも言われています。
それまでの朝のドリンクはエールビールの一種。ビールは栄養価の高く、安全な飲み物(夏場、生水は腐りやすい)として、ヨーロッパでは広く愛飲されていた。しかし、朝からですか・・・。という感もあるのも事実。現在、ガラス工房では熱を下げるのと、体力維持のためビールを飲むことが許されている。ですので、栄養もタップリあったことと思います。

 
紅茶の日ですので、さらに蛇足です。
ミルクティーは、ミルク、紅茶がどちらが先と言うことで、争われることが有名です。
当初はミルクだったそうです。理由は簡単で、陶器の質が悪いと、熱い紅茶で割れが入いるためです。

特に国民全員が紅茶を飲む環境になった時は、凄かったでしょうね。
紅茶も足らない、カップも足らない。産業革命でお金を持っている。しかも天下の大英帝国。
ちょっと歴史が垣間見えます。

ついでにブレンドで特殊なものをご紹介しておきましょう。
トワイニング社の「プリンス・オブ・ウェールズ」です。
1921年にジョージ5世とマリー王女の長男である皇太子(のちのエドワード8世)のために作られたパーソナル ブレンドです。
トワイニング社が、皇太子よりその名をブレンド名につける栄誉を賜ったものですので、トワイニング社以外に使用することはできません。

 
本題に戻り、3つ目は、フレーバーティー(着香茶)です。
香りの少ない紅茶に、フレーバーを足したものです。
関係者の名前が多いです。
アール・グレイ1830年代、中国に外交使節だったグレイ伯爵(アールは伯爵の意)が、中国で聞いた紅茶に着香する製法をロンドンの紅茶商ジャクソン社に教えたことに由来する。等です。

ちなみに、オレンジペコは、紅茶の茶葉の等級区分の1つなので、種類とは異なります。

 
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ウェルカムボックス(10種セット)の内の紅茶5品。
ピュアタイプ2、ブレンドタイプ1、着香タイプ2。


Special.Tの、紅茶ラインナップは、よく考えられています。
茶葉に最高級品質を求めるものは「ピュアオリジンズ」に分類されます。
「セイロン ヌワラ」、「ロイヤル雲南」、「スプリーム・ダージリン」の3つです。
世界3大紅茶の産地、セイロン、中国、ダージリンをきっちり押さえています。

次のブレンドとフレーバーティーですが、SPECIAL.Tはこれを新旧で分けます。
古くからあるものを「クラシック」。新しいものが「クリエーション」となります。

クラシックには、「アールグレイ」と「イングリッシュ ブレックファスト」。

クリエーションには、フレーバー系が2点、「アールグレイ ライム」、「トロピカル セレクション」。
ライムはレモンティーと同じ柑橘系です。アールグレイのベルガモットの香りがライムに置き換わるわけですが、この組み合わせも有りだと思います。
またトロピカル フルーツの酸味&甘味の合わせ方は、センスの良さが感じられます。

ブレンド系は3点。内、「グッド モーニング サンシャイン」、「ノワール インペリアル」はモーニングティー。「ノワール デラックス」がアフタヌーン ティー系となります。
先ほど、モーニング ティーはミルクティーが一般と書きましたが、SPECIAL.Tは「グッド モーニング サンシャイン」は、ミルクを入れずに茶葉を味わって欲しいとしています。

SPECIAL.Tは茶葉の銘品、クラシックの文化を押さえた上で、新しい味、つまり新しい食文化の開発に力を注いでいることがお分かり頂けると思います。
SPECIAL.Tの特長の1つです。

 
■歴史を動した飲み物、「紅茶」

イギリスは欧州でも古くから「法」に重きを置いてきました。
「国王といえども神と法の下にある」と言われた程です。
世界でも有数の法治国家ですので、国の根幹となる税金を納めないと大変です。

紅茶は元々、オランダの東インド会社が独占販売をしていましたが、イギリスに紅茶が持ち込まれますとイギリスの東インド会社が独占権を奪い取ります。紅茶は贅沢品ですから、税負担も大きいです。
この過剰な税負担が、歴史を動かします。

イギリスに運ばれた紅茶ですが、ロンドンに荷揚げする前に、半分くらい港町で売りさばいたと言われています。
これで紅茶文化が広まったのが、お隣のアイルランド。
2008年は紅茶の消費量世界一。重税は新しい消費国を産むわけです。

海外の植民地は、国内より酷い重税を掛けます。
その当時のアメリカは、「代表なくして課税なし」イギリス議会に代議士を出せないのなら、税金は支払わない。本国に対し国民の権利を主張した分けです。が、スローガンでした。そんな中、重い課税対象の紅茶がボストン港に入港します。
そんなものは荷揚げしたくないアメリカと、在庫がだぶつくと税が取れないイギリスで意見は別れ、紅茶は荷揚げされずにボストン港の船の中に待機状態になります。

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記念切手も出ている有名な「ボストン茶会事件」。


で、1973年12月16日事件は起こります。
毛布やフェイスペイント等でモホーク族風の簡易な扮装をした50人ほどの市民がボストン港に停泊していた船を襲撃。342箱の茶箱を海に投げ捨てました。被害総額は、当時の金額で100万ドル。
世に言う「ボストン茶会事件」です。余りにも有名なアメリカ独立の1シーンは、紅茶により演出されたのです。

寡聞にして、コーヒーでこのような事件を聞いたことはありません。
これは紅茶がイギリスの代名詞でもあるからだと思います。

ちなみにアメリカは、これからコーヒー党の道を歩みます。重税がもたらした結果も、アメリカとアイルランドでこうも違うわけです。歴史の綾ですね。

 
■紅茶で遊ぶということ

私は嗜好品の醍醐味は、「それを味わうことではない」と考えます。
もちろん「味わうこと」は重要ですが、それ以上に「追い求めること」が重要と思います。

コーヒーの香りは、焙煎技術ですごく変えることが可能です。しかし、これは内在している香りを引き出すわけですので、フレーバーを合わせるのとは異なります。
フレーバーティーは、人間が組み合わせるものです。
SPECIAL.T は「クリエイティブ」で、その楽しさを伝えようとしています。

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トロピカル セレクションのカプセルとお茶。
オレンジと紅茶の香りは渾然となり、深くかぐとその甘い香りのため、ミルクティーが連想されるほど。


香水業界では、創造性のある調香師を「ネ」と尊称します。
創造性があることはそれだけ重要です。
ちなみに、味と香りは重要な関係にあり、味の80%は香りで決まるそうです。

長々と書きましたが、SPECIAL.Tの魅力の1つは、クリエイティブのティーだと思います。
私は、ネスレのSPECIAL.Tを高く評価していますが、それはトロピカル セレクションに感心したからです。
ネスレの面白い挑戦を見守りたいと思います。

 
■ちょっと残念なニュース

SPECIAL.Tのホームページで、11月上旬発売予定の新ラインナップが、12月に延期になることが告知されています。

11月1日は紅茶の日ですので、ハードではなく、ソフト(茶)の方から見たSPECIAL.Tを書いてみました。
次回は、ハードよりの話をしたいと思います。

2013年11月1日

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