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【シェーバー】2023年 シェーバー・トレンド(前編)


今、シェーバーは、いわゆる進化の分岐点に来ています。
シェーバーは発明されてこの方、「肌を傷めず、深ぞりをする」という課題に真摯に対応、進化してきました。この課題に対しては、一つの終着を迎えたようです。
結果、今はどのメーカーをセレクトしても、ほとんど、ハズレはありません。メーカーもそれを熟知しており、新しい方向性を模索しています。今回は、それをまとめてみました。
 
■シェーバーの基礎知識
一つの終着を迎えるということを納得するには、少なくともそのカテゴリーの基礎知識が必要です。まず、前編では、その基礎知識をまとめて解説します。後編では、次の進化ネタをまとめて解説します。

まずは、シェーバーの種類です。シェーバーは刃により分類されます。逆にいうと「刃」は超キーパーツというわけです。

 
■種類 シェーバーは刃の種類により3つに分かれます。知っていて欲しいのは「回転式」「往復式」の2つです。

 
●回転式 外刃でヒゲをキャッチ、回転運動でヒゲを剃る内刃があるタイプです。往復式に比べて刃が長持ちしやすく、替刃交換の手間が少ないことが特徴。その他のメリットは振動音が静かなこと、肌に優しいことです。回転刃が肌の表面を滑るようにヒゲをカット、面積が広いため、推し圧が分散しやすく、刃が深く当たらないからです。
逆に、デメリットは、複数枚数にした時設置面積が多く、円を描くように動かさないと肌に貼り付けてしまうということです。要するに、自分の好きなように剃るにはテクニックが必要です。全部、剃り上げる人に向いており、ヒゲをデザインしたい人には勧めません。

 

回転式一筋のフィリップスの三枚刃。回転式といえば、フィリップス。


 
●往復式 網刃(外刃)でキャッチしたヒゲを左右に往復する内刃で剃るタイプ。メリットは、シェーバーをコントロールしやすく、ヒゲをデザインしやすいこと。深剃りしやすいこと。
デメリットは、深剃りした時、肌を傷めやすいこと。
内刃を円柱回転式にした場合は「ロータリー式」とも呼ばれます。以前、日立から販売されていましたが、最近は音沙汰なしです。

 

パナソニックの6枚刃。迫力モノの刃だが、当たりはやさしい。


 
●ドーム式 安価なモデルに時々使われています。外刃がドーム球場のように盛り上がっています。これも昔からある構成ですが、余り進化した話は聞きません。

 

マクセルイズミの新製品発表会プレゼン資料より。
刃に自信を持つマクセルイズミだからこそ。


 
さて、色々な刃を製造してきたマクセルイズミは、この3種類のシェーバー全てを作っていますが、そのマクセルイズミでも、フラッグシップは往復式に絞っています。
多くのメーカーは得意な刃を中心に商品展開をするわけです。そうするとどこそこのメーカーは「XX式」というイメージを作ることができます。

 
今、日本でシェーバーを頑張っているのは5社です。
回転式は、蘭フィリップス、そして最近参入のヤーマン。ヤーマンは美容家電専門の日本メーカーですが、美容家電の技術を活かしたシェーバーで参入しました。

往復式は、パナソニック、独ブラウン、マクセルイズミの3社です。

 
ちなみ世界一のシェアを持つのはフィリップス。カセット、CD、BDとソニーと共にエレクトロニクスを牽引したフィリップスですが、90年位から、彼らは永続する事業にのみ注力します。照明、シェーバー、そして医療。どれも人がいる限り、必要なものです。SDG的視点のビジネス決定法です。

今の日本シェアNo.1 はブラウン。ここ数年、日本市場に力を入れなんとか、もぎ取った感じです。

 
■今までの進化
今までの進化は、どうして肌を傷めずに深剃りするのか。引っ張ってきたのは、往復式です。構造的に、回転式より弱いので当然と言えば、当然です。

ブラウン シリーズ9 Pro+ 9577ccを例に、これまでの進化をみてみましょう。見て分かる通り、ブラウンは往復刃。薄い網刃を肌に当てると、網の目からヒゲが覗きます。そのヒゲを往復している内刃が切り落とします。外刃と内刃の合わせ目で切るのでハサミと同じ理屈です。

また、往復とはいうものの、実際は凄まじい速度ですので、目には振動しているようにしか見えません。物理的制約が少ない分、押し付ければ深剃りが効きます。当然、その分、肌を傷めるリスクも上がります。また高速モーターを使うので、動作音が五月蝿いモデルが多いです。

 
さて、ブラウンが行ったのは「多枚化」です。刃を特殊な形状にし、今まで一枚の刃で行ってきたことを、機能を分離、対応させようというわけです。これはT字のカミソリでも実績があります。今の時代、安価な使い捨てカミソリでも、最低二枚刃は当たり前です。

加えて、多枚刃は同じ力で押し当てた時、瞬時の圧力アップを防ぐメリットがあります。当たり面積を多くとることになるので、単位面積あたりの圧力は小さくなります。回転式と同じ、柔らかいあたりと同じになるわけです。

ただし回転式より、当たり面積は小さく、このため、回転式のように円を描くように動かすなどという制限はなく、思う通りに動かせます。

●刃は「5枚刃」。刃を詰め込まれたヘッドは「巨大化」。
肌に当たる面積が広くなり、当たりは弱くなる。


しかし巨大なヘッドは、固定では肌を追従しにくい。というより、まずできません。そうしようとすると、手が捩れてしまいます。このためかなりの角度が動くヘッドジョイントが付けられています。

 
さてもう一つ重要なのは、防水技術が進み、お風呂場でも使えるようになったこと。風呂場は長い間シェーバーNGでしたが、今ドキのシェーバーの多くは、防水です。

防水化で良いのは2つ。シェービングクリームが使えることと、使った後水洗いできること。この2つ出てきた時は、すごいと思いましたが、風呂から上がる時、シェーバーを出さなければならない、水拭きを丁寧にしなければならないなど、ちょっと面倒なところもありますが、完全というわけにはいきません。

 
これに加え、長時間バッテリーを採用。加えて清潔仕様に、したのが、今ドキのシェーバーです。

●充電ケース。上の電源ボタンを押すと充電が始まる。
ほぼ一月分の電気を溜めることができる。バッテリー内蔵。


●自動で、「洗浄」「消毒」「充電」を行う洗浄機。


●時々 170mlの洗浄液(アルコール溶液)とケースを破棄する必要がある。


肌を傷めず深ぞりという技術に一番有望な「多枚刃」も、ブラウンでは5枚刃、最大で6枚刃。回転式で3枚刃と、来るところまできてしまいました。便利な付属品も付けられるだけ付いた感があります。

2021〜22年に、ほぼ全メーカーが到達しました。
今後、どこを目指そうか、さて何をしようかという感じです。

 
 


 

 
 
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2023年11月7日

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