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本当にユーザーが便利に思えるサービスを。 10分宅配スーパー「OniGO(オニゴ)」を考える。


欧米でスタートした「ダークストア」。黒魔術グッズを売る怪しいお店ではありません。「表にでない店」という意味での「ダーク」です。ネットで注文すると、10分以内に配達するという業態のお店です。10分、600秒。これは短いですよ。実際そんなことができるのか、目黒区鷹番に日本初のダークストアを出した、OniGO に行き、取材してきました。
 
■あると便利な10分配達
小学生だった頃、夕飯の材料で足らないもの、切れしてしまった調味料があると、お袋からお使いを頼まれました。妹もいるのですが、ちょっと小さいですし、ましてや女の子、人の多い夕方のスーパーに行かせるのはとんでもないと、兄である私の役目だったわけです。今ドキは少子化の上、塾通いなので、子どもも忙しい。子どものお使いというのも、あまり見なくなりました。

スーパーにも宅配サービスはありますが、こんな細かな、とっさのニーズには対応してもらえませんね。多くの場合は、午前中11時頃までにお願いして、午後、夕飯の支度に間に合うように配達してくれる感じでしょうか。

便利そうに見える宅配サービスですが、午後ある時間は、ずっと自宅で受け取りを待つ必要があります。ちょっと ATMへ、ちょっと歯医者へなど、ちょっとした用事が片付けることができなかったりします。また人と会うのが苦手な人は、ずっとプレッシャーを掛けられている気持ちになるかも知れません。メリットが多く語られる宅配ですが、メリットばかりのサービスは、この世にありません。

そんな中、欧米でスタートした「ダークストア」。好調だそうです。そりゃそうでしょう。ニーズはあったのですから。

 
■スマホでポチ、10分待つ
注文には「OniGO」という専用アプリで、スマートフォンから行います。

スマホアプリのトップページ。
青枠は筆者がつけたもの。


画面は、一番上が「特集」「野菜・果物」「ハム・ソーセージ」「惣菜・お弁当・サラダ」・・・「ベビー」「ペット」という大枠の商品カテゴリー。19項目もあります。二段目が詳細カテゴリーです。例えば「野菜・果物」の場合、「果物」「野菜」「いも・根菜・豆類・かぼちゃ」「薬味・香味野菜」「きのこ類」となります。

その分類をうまく使い、あとは、ポチるだけです。

ポチると、ご請求額が示されます。「小計(税込)」「消費税(内税)」「送料(税込)」「合計金額(税込)」。

問題なければ、「お届け先」「お客さまのお名前」「置き配指定」に入力して、クレジットカードで支払います。

そして10分後。「ピンポーン」のチャイムが鳴り、品物を受け取り、確認して、全部終わります。

かなり簡単です。二回目からは、住所、カードの登録など、ややこしい入力がなくなりますので、もっと簡単に注文できます。

 
■10分でどうやって配達するか?
10分という枷があるので、OniGOが配達できる範囲は限られます。自転車は電動自転車を使いますが、そんなに遠くへ行けるわけではありません。なんせ、東京23区内は人の嵐、電動自転車のトップスピードは30km/hr など余程のことがない限り、出すことができません。交通ルール順守、信号待ちなども考慮すると、平均:10km/hくらいかも知れません。

1号店舗は、目黒区鷹番。目黒通り沿いにある。


宅配に使われる電気自転車。かなりイカしている。


このため、OniGOの配達範囲は、大体、店から1.5km範囲内。平均:10km/hだと、1.5km先でも9分で到着できる計算になります。

さて、注文が入ると「注文いただきました」の声が店舗に響きます。体育会系のノリですね。瞬時にピック担当が商品を揃えにかかります。担当の相棒はスマートフォン。腕に装着のスマートフォンには、注文の品の写真と棚番号が映し出されます。それを一つ取ってはチェックを入れ、次の品物を取りに行きます。常温で問題ないモノは特殊素材のレジ袋に、生鮮食料品はマジックバック(銀色で、断熱材が入ったバック)に入れた特殊素材のレジ袋に詰めていきます。速い時には20秒。驚きのスピードです。

店内棚(一部)。


こんな時活躍するのが、スマートフォン。
腕の装着はかなり強引(笑)。
またコロナ禍で、どんな商品に触る時も使い捨てゴム手袋を使用。


生鮮食料品は冷蔵庫から取り出す。


この袋を専用バックに入れてピック作業は終わります。Uberのように立方体ではなく、レジ袋に合わせ、細長いバック。入れただけで、荷物はほぼ固定。まぁ汁物を入れるわけではありませんので、商品が擦れ合うことを防げればOKというわけです。また、バッグの中には熱対応でアルミは貼られています。荷物が多いとき、例えばトイレットなど嵩張るものがある時などは、バッグ2つに分けます。

専用バッグ。内部側面、底には断熱材が貼られている。


ピック作業は全て1Fで行われます。ドアを開けると駐輪場。時間ロスがないように動線が組み立てられています。自転車に乗り出発。荷物は基本背負(せおい)、バックパックです。

配達口。中は商品の傷みを最小にするために、
やや薄暗い。冷暗所になっている。


自転車にはクルマのような衝撃吸収のためのサスペンションがついていませんので、一番商品を傷めにくいという訳です。あと一つは、自電車はママチャリ型なので、前傾しない。今は少なくなりましたが、以前Uberのバッグを背負いロードレーザーで背を丸めスピードを出している人を見たことがあります。

自転車は、バイクのように振動を和らげる
サスペンションがないため、背筋をたて、
荷物に影響を与えにようにする。


2つある場合は、片方は後カゴに入れます。こちらはショックを受けやすいので、動いても問題ない商品を入れます。

スマートフォンは各人持っていますが、常にGoogle Mapを見ながらの配達ではありません。狭いエリアですから、「丁目・番地」までは覚えた方が速いそうです。最後の「号」は、その番地をぐるりすれば大丈夫。バイクだと規制があるので無理ですが、それは自転車ならではのメリットです。
そしてお客様に、品物を確認してもらい、配達は終了。ほぼ10分で対応できているとのことでした。帰路に約10分。1時間に3回が目安です。10分というと驚きますが、食事の配達もほぼ同じです。食事の場合は、調理時間がかかるので、30分が基本になっていますが、純粋な配達は、片道10分程度です。逆に、そのレベルに区切らないと店から直行するタイプの宅配はできないということかも知れません。

 
■OniGOのビジネスプランの私的見解
私はこの時間ギリギリの配達こそ、OniGOの長所であり、弱点でもあると思います。
その問題は、雇用方法の問題にも繋がります。

まず、古くからある出前、宅配。これは従業員、もしくはアルバイトの仕事です。自転車の時代もバイクの時代もありました。ここで重要なポイントは、配達を行うのが従業員、アルバイトであることです。雇用契約に基づき、お客の注文の有無に関わらず、時給もしくは日給が支払われます。

これに注文がない時は無駄でしょと、ビジネス改革を叫んだのが、Uberのような宅配サービス。この2つの違いは、それまで方式が、注文がある限り同じ人が配達するという連続して仕事があるのに対し、Uberは一軒運ぶと仕事は一旦終わりということです。

もう少し、噛み砕いて言うと、昔からの方法は、ご近所は2、3軒まとめて配達し、効率をあげることができるということです。このため、バイクでの宅配は、できる限り、数軒分持って行きます。これにより往復の時間を省くことができるので、効率化できる訳です。

Uberは、それを人数で対応します。そしてUberの効率化は、個人がおこないます。安全を守らずに暴走するのは、効率化の実践という訳です。しかし、その分、品物はラフな扱いを受けます。確実にリピーターを取りにく店舗と大きく違うところです。

OniGOは、複数持ちではなく、一軒、一軒の時間で勝負をかけます。先程、一番長くて9分と言いましたが、何気に時間がかかるのが、エレベーターの上がり下がり。タワーマンションだと、往復で、5分位かかる時もあります。そうなると、電動自転車+一軒持ちでの配達は、かなり不利。時間を捻出しにくいと言えます。ただし、計算通りに行けば、何の不安もありません。あくまでも、想定外が重なった時のバッファーが足らないということです。

 
まぁ、リスクだけを語ってもビジネスは前に進みません。と言うことで、この指摘はここで終了。それより、OniGOはどんな理想を持っているのでしょうか? そちらからも、このビジネスを考えてみましょう。

 
■地域に馴染む宅配サービスを
OniGOの場合、宅配ビジネスが、その地域の人に支持してもらえる様、細かな心配りしています。

配達員には、明るい強い色がよく似合う。スマイルも必要。
ご近所さんが頼ってくれるのが目標。


配達員はお揃いの、オレンジ色のウインドブレーカーを来て、オレンジ色のバッグを持ちます。よく見えるので安全という言い方もできますが、注意を引くので自制心も働きます。当然、自転車は軽車両として法規に定められた通り、車道を走ります。要するに左側通行を順守するわけです。暴走Uberが時々メディアを賑わしますが、見られている自覚もないのでしょうね。Uber配達はバッグも黒であり、特に闇に紛れる夜は、視認し難い時があります。

OniGOのように、狭いエリアが営業範囲ですと、クチコミがとにかく影響力を持ちます。人付き合いが悪いと言われる東京23区と言えども、ご近所に挨拶位はします。当然、悪評が立つと顧客は減ります。逆に「今日も頑張っているね」と見られるようになると、注文もいただくことができます。そのエリアで目立つということは、その商売をしています、よろしくお願いしますというアピールをしていることでもあります。

このルールを守る会社以外に、OniGOはもう一つ特徴を持ちます。環境配慮です。特殊なレジ袋と書きましたが、これ石油系樹脂ではなく、原料はお米。廃棄の時の環境負荷が低減されます。また電気自転車にしたのも同じ考えですね。日本の50ccビジネスバイクは、約150km/Lの燃費を誇る超優れもの。ですが、環境負荷を考えた場合、やはり電気自転車に軍配が上がります。

要するに、OniGOは、その地域に根ざし、その地域と発展することを望んでおり、それを一つ一つ実行しながら、ビジネスを行っているわけです。

 
■商品特徴がもう一つの車輪
さて宅配システムの構築と運用が片方の車輪とすると、もう一つの車輪は商品の品揃え、どんな商品が置いてあるのかです。これが全然魅力がないと、だめです。注文が来ません。

OniGOが狙っているのは、スーパーとコンビニの中間です。

みなさんが利用するコンビニ最大の魅力は「便利」さです。そして一番の売れ筋はお弁当、そして今「中食」などにも力を注いでいます。その反面「価格が高め」ということがついて回ります。お弁当、中食ともに、食材ではなく、食材を加工したものですから、高いのは当たり前と言われればその通りですが、それでも高いと思う時がありますね。その分、コンビニは味でカバーしようとしています。高いことに対する理由づけとも言えます。

一方、スーパーはこの逆です。コロナ禍でスーパーも惣菜に力を入れるようになりましたが、コンビニレベルではありません。やはり一番の魅力は、食材が安く手に入ることです。自炊するならスーパーということです。

では、OniGOはどうか。話を聞くと、狙いはコンビニとスーパーの間です。とにかく、すぐにでも必要となるのは、調理時ですので、惣菜より食材に力を入れているとのことです。ただ色々な特徴ある商品は揃えたいとのことでした。

例えば今、アプリを開きますと、「こだわりの食品 特集「信濃屋セレクション」」とあります。そこには、「信濃屋無添加丸絞り白みそ」や「信濃屋 再仕込み生木桶醤油」「木桶仕込み醤油の玉ねぎドレ」などが、掲載されています。ちょっとした贅沢ですね。
また、「ミシュラン三つ星冷凍お弁当」もあります。1,296円ですから、少々高いのですが、在宅勤務で頑張ったのなら、自分へのご褒美として手頃ではないでしょうか?

家で、三つ星の味。しかもレンチン。しかもスーパー価格。


酒類販売免許も取得できたということで、商品にはお酒も加わっています。こちらも飲んでいる時に足らなくなったら配達して欲しいモノです。

食材&ちょっと贅沢。なかなかいい組み合わせではないでしょうか。

 
■未来を追いかける、名前に込めた思い
OniGOという独特な名前には、実は創始者の深い思いが込められています。何から来ていると思います。閃いた人もいると思いますが、「鬼ごっこ」です。時代に追いつけ、ユーザーニーズに追いつけ、未来を掴めという思いが、そこには込められています。

「鬼」の最近の使われ方には、もう一つありますね。「鬼強い」とかという「超」に当たる強調表現です。OniGOは、「すごーくすぐ配達します」という屋号でもあります。

プロタイプでもある第一号店は順調に伸びているということで、計画通り、ルート環状7号線添いに二店舗目、三店舗目を考えているとか。前述の通り、このようなビジネスはメジャーになるまでは、クチコミが一番頼りになりますので、環状7号線と目黒通りの交差点にほど近いところにある一号店の近くに設けるのはセオリーです。

新しい業態であるダークストア OniGO。一軒あるととても便利そうです。

 
より詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://onigo.club
 

 
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2021年11月5日

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