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ネスカフェ 香味焙煎「香道サロン」。原宿で「香り」に遊ぶ。


「香味焙煎」というネスレのレギュラーソリュブルコーヒーはご存知のことと思います。市場に出たのは、1998年ですが、このソリュブルコーヒーは、香りや品質に対するこだわりが強い日本人のために開発されました。深い焙煎が生み出す豊かな香りとコクが特徴。人気もあり、2020年9月には、“香り”と味わいを最大限引き出す「ネスカフェ」独自の「香味真空氷結製法」を採用したレギュラーソリュブルコーヒー「ネスカフェ 香味焙煎 豊香(ゆたか)/柔香(やわらか)」の2ラインナップ化されています。
 

香味焙煎「豊香」。


香味焙煎「柔香」。


ネスカフェ 香味焙煎「香道サロン」は、その香味焙煎と、古くからあり日本独自の発達をした志野流「香道」を組み合わせたお遊び。一つお付き合いのほど、お願いいたします。そんな秋のイベントです。ちなみに何故秋かというと、1992年10月30日に七尾市で第7回国民文化祭「世界の香りフェアIN能登」が開催されたからなのだそうです。

 
■香道とは何か?
良い香りがするものは古くから書物に記載されてきました。

有名なのは旧約聖書でしょうか。
その中の一節、紅海が真っ二つに別れるシーンで有名なモーゼのエジプトからの脱出を描いた「出エジプト記」には、次のような記述があります。

モーゼはエジプト王を説き伏せ、祖国を失いエジプトで奴隷として働かせてたユダヤ人を率いて出国。エジプト王は出国を許したことを後悔、後を追わせる。前には紅海、後には軍隊。この時モーゼが神に祈ると、紅海が2つに割れ・・・


「主はまたモーゼに言われた。あなたは最も良い香料をとりなさい。すなわち、液状の没薬(もつやく)500シケル、匂い香ばしい肉桂(にっけい)をその半分の250シケル、またオリーブの油を1ビンとりなさい。これを聖なる油を作るわざに従い、混ぜ合わせて匂い油を作らなくてはならない。これは聖なる注ぎ油である。」

没薬というのは、ムクロジ目カンラン科コンミフォラ属(ミルラノキ属)の各種樹木から分泌される、赤褐色の植物性ゴム樹脂のことだそうです。現地では、ミルラ(Myrrh)とも呼ばれます。
一方、肉桂とはニッキ、シナモンのことです。正確に言うと、ニッケイ属(肉桂属、Cinnamomum)の複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料のことです。

ここまで具体的な要求をする神って何? と突っ込みたくなりますが、神も香りがいいものは好きだったということです。

 
また、香料と美女は、切り離せません。マリリン・モンローが寝るときはシャネルNo.5と言った話は有名ですが、歴史の美女は一味違います。

クレオパトラは「キフィ」という香料がお気に入りだったとか。キフィは、ワインをベースに、乳香(にゅうこう)、没薬、サフラン、カシア、干しぶどう、ハチミツ、スパイクナルドを混ぜ合わせたもので、実際レシピも残っています。ちなみに乳香は、ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂のことです。乳香の名は、その乳白色の色に由来しますので、決して赤ちゃんの様に、ミルクの匂いがするというわけではありません。

京都市東山の泉涌寺にある楊貴妃観音。流石に美人。


一方、中国の楊貴妃。こちらは麝香(じゃこう。ムスクのこと。ジャコウジカの臭腺の分泌液)を好んだと言います。西方の民族だった彼女は、体臭、特に腋臭があったようです。しかし、それに麝香を合わせると、なんとも言えない香りがした様ですね。腋臭で悩んでいる人もいますので、こちらは再現、販売するとかなり売れるのではないでしょうか。

 
このように、香料は多種多様ですが
、日本はこれら香料の原料はほとんど取れません。基本輸入物です。そのためでしょうか、香りが長く残る香木が好まれました。

正倉院の御物で名高い「蘭奢待」(らんじゃたい。正式名、黄熟香(おうじゅくこう)。天下第一の名香です。)も、その一つで、ジンチョウゲ科ジンコウジュ属(Aquilaria)の植物の樹幹に樹脂や精油が沈積した沈香の一種。べトナム〜ラオス辺りでとれたものではと推測されています。

 
実は香りを発する物質、匂い物質は約40万種だそうです。そのうち、現代日本で手に入れられるのが、科学的に合成されたものを含めて6000種以上。汎用的に使われると、500〜800種程度だとか。

とにかく色々な種類があります。

 
■香道
香りを楽しむ文化は実に長い。多分、有史以前から楽しんできたのではないでしょうか? しかし香料にはお金がかかります。初めは神の宗教的なことで使われてきましたが、当時は生活が宗教に依存してもいましたので、なんとかしたのではないでしょうか? そして次第に特権階級が遊びで使い始めます。平安時代の貴族などですね。

平安時代の名著「源氏物語」に後朝(きぬぎぬ)の別れがあります。顔を見られるのが最も恥ずかしかった平安時代、同衾した貴族は、闇の中で別れます。当時は、男が女性の元に通う通い婚。この別れの時、互いの下着を交換します。そして、それに想いを込めた香を炊きしめ、香る服を渡すのです。粋ですね。また、香りを嗅いで香料を当てる遊びも盛んに行われた様です。当時は、殿上人以外は人でないという感覚もあり、税をガンガン取り立てます。一握りの人の遊びを、日本全部で支えていた時代です。

 
しかし、武家の世だとこうはなりません。まず領地に分割されるので、上限があります。また軍を軍隊として維持すると膨大な経費がかかります。ということで、普段は領地、火急の時駆けつけることが決められました。「いざ鎌倉」です。遊び中心の貴族とは違うのです。しかし、だんだんですが世の中リッチになっていきます。新田を開発したりして、同じ領地でも、富を蓄えていくわけです。

そして室町時代。幕府が京都にあったため、それらが融合します。禅宗、貴族、武家が混じり合います。この時代、華道、茶道、能など、今に日本文化として伝わるものが整えられます。しかも室町時代、後半戦乱に明け暮れ、幕府は零落しますが、三代将軍 義満は金閣寺を建てています。当時の金閣に幾ら金箔を貼ったのかは記録に残っていませんが、昭和に再建した時は、金箔:20kg。今、地金の価格は7000円/gですから、1億4千万円。外装費、塗装費としては、信じられません。しかし、それ位の富があったわけです。

鹿苑寺金閣。夏の夜もいいが、雪はもっといい。


香道ができたのは、こレから少しあとの時代になります。

ネスレの資料によりますと、「香道は、室町時代、八代将軍足利義政の命を受けた志野流初代志野宗信が、中世芸道のエッセンスを凝縮させ、また炷香(ちゅうこう:香をたくこと)の作法などを制定し大成させたそうです。香道では、東南アジアで産出される沈水香木(じんすいこうぼく)のみを使用し、自己の精神を高めるために香りを心で「聞き」取ります。」とあります。香道では香りは嗅ぐのではなく、聞くと言います。「聞香(もんこう)」ですね。この言葉を聞いたら、香道だなと思ってください。

では、どのような香りを聞くのでしょうか? 香木は、そのまま嗅いでも多少香りがする程度。ちょっと拍子抜けするほどです。このため。温めて香りが綺麗に出るようにしてやります。

伝統的な手法では、香炭団(こうたどん)が使われます。炭団とは、炭(木炭、竹炭、石炭)の粉末をフノリなどの結着剤と混ぜ団子状に整形し乾燥した燃料です。炭はショックで小さく割れますので、粉はすぐ出ます。「鬼滅の刃」の「炭治郎」の生家は炭焼き。きっと炭治郎も炭団を作っていたと思います。香炭団は、その炭団の一種です。こちらは、上質の木炭の粉を小さな円筒形に固めたものです。

まずこれ香炭団全体に火がまわるまでよくおこします。そして火鉢のように中に灰が入った聞香炉を用意し、香筋(きょうじ)という、独特の道具で、灰に香炭団を作る穴を掘ります。ポイントは灰に空気を含ませるよう、底の方からゆっくり静かにかき混ぜること。ここに空気がないと香炭団は消えてしまいます。

そして香炭団を入れ、灰でフタをします。そしてその部分を山形に整えます。

一本の香筋で山の斜面に香炉の正面の目印として『聞筋(ききすじ)』を浅くいれます。
また、山頂部分から香筋を垂直に差し、香炭団まで続く『火窓』と呼ばれる穴を開けます。この火窓から熱が出てきます。そしてこの上に「銀葉」をのせます。

聞香炉。炉と言っても大きめの湯呑みという感じ。


銀葉とは、透明な雲母のこと。きらら、きらとも呼ばれます。また電気業界ではマイカと言いますね。ケイ酸塩鉱物のグループ名です。薄くはがれるのが特徴。多くは六角板状の結晶です。結構見つけやすい鉱物で、私も小学生の頃、山で見つけ採集したことがあります。

特徴は、耐熱性で電気を通しにくいこと。このため、半田ごて等の絶縁体として利用されています。近年では、マイカコンデンサーというのもありますね。また、発熱物のニクロム線を、絶縁材である雲母で挟み込み、工業・業務用ヒーターとしても使われています。穴あけ・切りかけ加工なども可能なため、アイロン・ポット・コーヒーメーカーなどの家庭電化製品にも多く使用される。これは、加熱物に、直接接触させるため、熱効率が良く、昇温速度が早いからです。

東洲斎写楽の「市川鰕蔵の竹村定之進」。濃い灰色のバックが「きら刷り」。実際は光によりきらきら光る。


また、きらきらした見た目を利用することもあります。大首絵で有名な写楽の第一期作品は、「きら刷り」という技法で刷られています。雲母の粉もしくは貝殻の粉を用いて背景を一色で塗りつぶすものです。文字通り、キラキラしているのが特徴です。最近、トレーディングカードでは、スペシャルカードにホロが付けられてキラキラしていますが、それと同じ効果を狙ったと思ってください。

雲母は色々なものに使われていますが、香道の銀葉は、2番目の特徴、加熱物に直接接触させるため、熱効率が良く、昇温速度が早いので使われます。小さく割った香木(もしくは刻み)を銀葉の中心に乗せるのです。ここで、香木から煙が上がるとNG。香りを聞くのは、「燃焼」ではなく「熱する」のがポイント。香木、銀葉を一旦外し、香炭団の位置を調整しなおします。そしてもう一度セットします。

 
そして茶の湯の茶器の様に、両手で包むように持ち、香りを聞きます。お茶を飲んでいる様でもあります。

聞香する志野流第21代家元継承者蜂谷 宗苾若宗匠。
お茶を飲んでいるようにも見える。


 
■「ネスカフェ 香味焙煎 香道サロン」
ネスレは、JR 山手線 原宿駅近くに、「ネスカフェ 原宿」 (所在地:東京都渋谷区神宮前1-22-8)を持ちます。原宿の駅は、今度の改装で、実に不恰好でかつ不便になりました。40年間以上使ってきた駅ですので、情けない思いです。日本の都市は再開発に弱いですね。

それは置いておくよして、「ネスカフェ 原宿」は昔のアメリカンな雰囲気持ついい感じの建物です。その中で、香りを遊ぼうというのが、今回の趣向です。

体験できるのは、
1)和の世界観を体感できる店内装飾
2)「ネスカフェ 香味焙煎」のコーヒーと香道を組み合わせた2種の体験の提供
3)「ネスカフェ 香味焙煎」のコーヒーと相性が良い和菓子の提供

です。1)は見てのお楽しみ。

イメージ図だけ掲載しておきます。


2)ですが、2種類の香味焙煎とともに、香木がセットされた電気聞香炉は運ばれ、これを嗅ぎ比べようとするわけです。コーヒー、香木とも熱帯地方の産で、日本では取れません。コーヒーは焙煎で、香木は熱することにより、香りを開かせます。3つとも複雑な香りですが、ほんのり土の香りもします。香りとはある意味、地球を嗅いでいるようなところがあります。

今回の監修を引き受けた志野流の第21代家元継承者蜂谷 宗苾(はちや そうひつ) 若宗匠(わかそうしょう)が面白いことを言っていました。彼らはベトナムなどに、原木の植林をしているとのことです。この植林たるや、某国の杉、ヒノキの様に必ずしも香木になるわけではありません。原木の内、運よく香木になるものが出てくるかもしれないというレベルです。それでもしなければ、熱帯雨林のジャングルは年々伐採されていますからね。このため、志野流は積極勧誘をしていないそうです。大量に作られるフレグランスとは一線を画す。香木はそんな面もあります。

さて、香木は誰でも上手く香を聞くことができるよう、電気聞香炉は使われていますが、香味焙煎の方に工夫はあるのでしょうか? こちらの工夫は器です。それぞれ信楽焼、滑床焼とちょっと凝った焼き物で出してもらえます。

「豊香」は信楽焼で出される。ちょっと渋い。


「柔香」は滑床焼で出される。


3)は2つの和菓子「源氏香」と「かすてあん」から1種類からチョイスできます。かなり甘めですから、コーヒーはブラックがお勧めです。

 

和菓子「源氏香」。


和菓子「かすてあん」。中にはあんが入っており、とても甘い。


 
■ちょっと遊びの「月見香(つきみこう)」も体験できる
ここまでは、「ネスカフェ 香味焙煎 香道体験一式」1,200円(税込)で体験できることです。

しかし、今回は、もう一つ別に体験できるものが用意されています。
それが、「ネスカフェ 香味焙煎 月見香体験一式」 1,000円(税込)

こちらは、2種類の香りを組み合わせた香道の遊びの一つ「月見香(つきみこう)」を体験するものです。

「月見香(つきみこう)」>の手順は次の方法で行われます。
●まず「ネスカフェ 香味焙煎 豊香・柔香」(いずれか1つ)の香りを試し聞きした後、 3つの器に淹れられたコーヒーの香りを順番に聞いていきます。
●3つの器に淹れられたコーヒーの香りが、はじめに試し聞きした香りと同じかどうか聞き分け、 回答を記入します。
●回答の組み合わせによって、様々な月の種類 (十五夜、十六夜、水上月、雨夜など)をあてはめます。

香りを水や明るさに例えながら様々な月を鑑賞する遊びとなっています。
ネスカフェはやはり「違いがわか」らないと様にならない様です。

さて期間は、~11月12日(金)まで。原宿で手好きになった人は是非。新しい体験が待っています。

 


 


 

 
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2021年11月4日

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