豆知識

【マスクの選び方】マスクの品質基準「JIS規格」の扱われ方(後編) 〜マスクの製品パッケージの実表記と商品力訴求〜


前編では、マスクのJIS規格の説明をさせていただきました。
JIS規格適合を商品パッケージに記載する目的は、このコロナ禍の時代、マスクを有用に使いコロナの飛まつ感染を防止ですが、マスクは多目的に使えるので、「微小粒子」「細菌」「ウイルス」「花粉」をテストして、JIS規格にしています。
後編は、JIS規格が決まったら、商品はどのような影響を受けるのか、パッケージ表記を中心にレポートします。
 
しかし、まずはマスクのJIS規格に対する、前編の積み残し説明からです。

 
◾️「PFE」認証と、「VFE」認証は異なる
さて、もう一つ重要な話を。

マスクをフィルターとして考えると、フィルターは物理的なトラップ。サイズでトラップします。そうなると、「PFE」は0.1μmのサイズをトラップできるわけですから、約1.7μmのサイズで試験される「VFE」のテストは必要なのでしょうか?

答えは「必要」です。

というか、「VFE」は「VFEの試験をクリア」しないと認められません。それは試験により使用する試験粒子が別物だからです。要するに、間Lちゅたく同じとは言えないことから来ています。バイ菌は生物、ウイルスは無機物と生物の間の存在ですから、トラップ後の挙動なども違ってくるのです。

品質保証は「疑わしきは、必ず試験!必ず確認!」が鉄則。これは、「人はまだ全てを知っているわけではない」という科学的な考え方から来ます。そう人は神ではない。全知全能ではないのです。だから手間、費用を惜しんではいけない。どんなに単純なことであっても、見落としはあるかもしれないという考えから来ています。

この表を埋めるためには「PFE」「BFE」「VFE」「花粉」「安全衛生」「通気性」の
テストを全てクリアする必要がある。


余談ですが、逆に手間を惜しんだのが、原発ですね。特に核リサイクルなどは、私には机上理論、要するに理想論だけで、Goサインを出したとしか思えません。ある意味、傲慢。また、人は必ずケアレスミスをします。その挙句が、取り返しのつかない事故。スリーマイル島(アメリカ)、チェルノブイリ(ソ連)、福島(日本)。一級の技術大国が、ごぞって大事故を起こしています。

人類が使うエネルギーは地球の大問題ですから、政治という人間臭いゲームが付与されるのですが、その分、謙虚さが足らなくなったというべきでしょうかね。人間の知恵などでは、複雑な真理の融合体である先端技術を全て知ることはできません。ちょっとでも真理に近づくことは必要ですが、それを急ぐと盲目のエリアも増えます。科学はアニメの様に、短期間で次々凄いものは出てきません。一歩一歩確実に歩むことが必要です。

 
◾️JIS規格と商品力
さて本題に戻ります。

今まで、書いてきました通り、JIS認証表示は、そのマスクの性能を端的に表します。例えば、効果薄と、取り沙汰されているウレタンマスクを同様の試験を行ったら、クリアできない=JIS認証表示できないことになるでしょう。

元々、今回のマスクのJIS制定の目的は、「試験方法の標準化を図り、一定の性能要件以上のマスクを国内で流通させる」です。つまり、マスクは感染防止の観点から極めて重要という考えで定められたものです。逆にいうと「JIS規格をクリアできないマスクは、今、コロナ禍のマスクとしては不適切」というわけです。マスク不足の一年前ならともかく、不織布マスクが出回った今、正直、JIS規格に達しないマスクは、呼吸力が足らない人を除き、不織布マスク以外使用しないで欲しいと思いますね。使うのは個人の自由という人もいるとは思いますが、今はまだ「緊急時」ですからね。

また別な言い方をすると、JIS認証表示できるということは国が認めた品質以上のマスクであることを意味します。真面目なメーカー内試験ですと問題はないのですが、どんな品質でも出荷してしまえばいいと考える人もいるかも知れません。そんなマスクにお金を出し、最終的にコロナに罹患したら泣くに泣けないのではないでしょうか?

別の言い方をすると、「マスクにJIS認証表示がされることを知る人が増える」に連れ、表示してあるマスクの「商品力が上がる」ことになります。JISマスクは性能=商品力ですから、これが大きなポイントになります。

 
■マスクのパッケージ表記
マスクの場合、マスクそのものにJISマークを付けるわけには行きません。「アゾ化合物」「蛍光」をテストしなさいということからも分かる通り、マスクへの印刷は、あまり推奨されないからです。

このため「パッケージ訴求」できちんとJIS規格を満たしていることがポイントになります。

 
では、パッケージには、どんなことが書いてあるのでしょうか?
今回、いち早くJIS規格に認証されたアイリスオーヤマの「ナノエアーマスク」で確認してみましょう。

 
■パッケージ表面 〜高性能イメージをユーザーに伝える〜

ナノエアーマスクのパッケージ表面


パッケージの表面には「商品名」「特徴」そして「イラスト」などが書かれています。表面はユーザーにアピールする面ですから、商品としに性能、もしくはそれを創起される、もっとも重要なことが描かれます。それは多くの場合、端的な数値データーではなく、イメージでユーザーに伝えられます。その位、数字だけでユーザーに伝えるのは、難しいことなのです。

 
マスクの場合は、衛生のため、中を守ため密閉包装されています。まず商品の鉄則。「目立たなければ、どんなに良くても手に取ってもらえない」ことがあります。ということで、アイリスオーヤマは、光沢のある「アルミ蒸着フィルム」を採用。キラキラさせ人目を引く仕様になっています。

大量陳列(大陳)した場合。キラキラしているので、目立つ。


そして、大きなマスクのイメージイラストを入れています。アイリスオーヤマのナノエアーマスクは「ウイルス防御と通気性を両立」させたマクス。そのイメージを伝えるためのイラストです。

大きなイラストを入れる目的は、大きく2つあります。

1つ目は、中身が見えないので、マスクであることをビジュアルでわかってもらって「買い間違えを防ぐ」ことです。

2つ目は、このマスク、性能がいいんだというイメージを持ってもらうことです。極端にいうと「ウイルス飛まつを××%防げます」というのではなく、「すごそう」「性能良さそう」というイメージを、ユーザーが持ってくれれば、それでいいのです。そしてそれを認識させるのが「キャッチコピー」です。数字より、記憶に留まりやすい言葉でアピールします。

確実に伝えなければならないことは、文字を添えて伝えます。

商品名とキャッチコピー。
目を動かさず連続で読んでもらえるように、文字を集中させている。


文字で最も目立つのは『ナノエアーマスク』。商品名です。名前ですから当たり前と言えば当たり前です。
全ての商品が目指すのは「指名買い」。名指しで買ってもらえることを目指します。このため、名前の「語感」と「覚えやすさ」はとても重要です。このため、よく使われるのが、英語を日本語的に並べる手法です。「ナノエアー」。絶対に欧米人なら「?(はてな)」となります。「ナノ」は極微小サイズ。そして「エアー(空気)」は分子ですから、数ナノが当たり前。論理的な欧米人なら、「?」と奈良座えうを得ません。しかし、日本人は違いますね。「語感」を重視します。「ナノ」=小さくて凄そう。「エアー」=空気でなく、わざわざエアー。なんか凄そう。凄そうな言葉が二つ重なり、強調されるので、正確にはわからないが、「すごいに違いない!」となるわけです。ナノエアー。空気分子はナノサイズですから当たり前過ぎる、欧米人なら使わないだろう名前ですが、海外から入る文化を珍重した日本人ですからね、なんとなくスゲー。説明できないけどスゲー。理論的に説明しても、最後は感情に負けることが多い日本人にぴったりのネーミングと言えます。

奥ゆかしさを尊ぶ日本人は、この感覚ネーミングにとても弱いのです。日本は、最後まで理論で押し切る欧米とは、違う文化なのです。

 
次に目立つのは『通気性UPで、息快適』の特徴を示したキャッチコピー。ナノエアーマスクが開発された理由は、不織布マスクの息苦しさが挙げられます。そのため開発されたマスクですから、一番の特徴だからです。そして、ここで数字を使わないのが日本流です。例えば、茶の湯で使う茶碗。戦国時代、一国に匹敵する価値があるとされたこともあります。
しかし間違いなく、そんなことはありません。茶器はどんなに優れていても、一国に変わるものではありません。しかし信長から、平蜘蛛の茶釜を差し出せば命を助けてやると言われた松永弾正久秀が、平蜘蛛の茶釜を爆破、自身自害するに及び価値観は逆転します。大名物は、一国一城を上回る価値を持つに至ったのです。どんな形であれ、鉄は鉄という即物的な価値観から並外れて遠い価値観です。

ちょっと大上段な書き方をしてしまいましたが、日本人の価値観は、金銭だけでなく、このような価値を尊ぶところがあります。
例えば、日本人はキャッチフレーズに数字を入れることを余りしません。動力性能を数字で表す、クルマですらそうです。「300馬力だから凄い」と口が裂けても言いません。日産のスカイラインを例に取ると、「ケンとメリーのスカイライン」「NewManスカイライン」「超感覚スカイライン」などなど、数字ではなく、語感で対応しようとします。日本の商品に特有の癖です。

 
さて、次に書かれているのは、マスクのもう一つのポイント防御性です。『花粉・ウイルス飛沫・細菌飛沫・PM2.5等をカット!』とあり、その下に小さく『※マスクは感染(侵入)を完全に防ぐものではありません。』『※マスク本体部の身の性能』とあります。ここで問題があるとすると「飛沫」の文字でしょうね。裏面は「飛まつ」で統一されているのに、表面は「飛沫」です。これは「飛まつ」の方が、文字スペースをとるので妥協したためだと思われますが、妥協するなら「裏面」だと思います。「顔(表面)」に傷を付けるのは、正直良くありません。

これに加えて、「日本製」が目立っています。日本メーカーが契約している場合、中国企業でも一定の品質なのですが、中国政府がしたマスク外交で、中国製=粗悪品であることがイメージされていたので仕方ないですね。

日本製=高品質イメージ。
そうでないと表に書く理由はありません。


 
■「図解」という方法
今、カタログなどで手広く使われている「図解」というのを、最も上手く用いたのは、怪獣博士の異名を持つ「大伴昌司」であると言われています。男性なら一度は見たことがあるとは思いますが、怪獣図解、怪獣の一部を切り取り、中身を見せて、その怪獣の能力を説明するというモノです。

例えばカネゴンだと、「コインえらび腸」が描かれており、キャプションとして「にせ物のコインをよりわける」という感じです。

まあ怪獣を作るときに、そんな設定はありませんし、現実にもあるわかりません。が、「絵に描かれる」と、そうなのかと思いますね。「絵」「イラスト」というのもは、それ位説得力を持ちます。

 
当然、ナノエアーマスクのイラストにもそれは使われております。不織布と耳掛け紐の拡大イラストがそれです。
太い網の目の中にさらに細かい糸がランダムには張られ、トラップを作っている。様子がわかります。そこに『エレクトロスピニング製法』。

人を分かった気にさせる、図解。


その横に、『太さの違う繊維を組み合わせて、「高い捕集性能」&「通気性」』と効能が記されています。

『エレクトロスピニング製法』は、製法名であり、マスクの網目を表すモノではありませんが、ほぼイコールです。そして、それは性能を示すものではありません。が、凄い名前で周りを固められると、なんとなく「凄いのでは」となりますよね。日本で発達した、しかも子どもへ説明するために使われた図解という技法は、今、大人を説得するために多用されているのです。

 
ナノエアーマスクのイラストは耳ひもが出てきます。拡大された上に『ふんわりやさしい幅広耳ひも』とあります。耳ひもなど、すごく一般的な名称のところに、特別名称を与えても、ユーザーにとっては、基本「耳ひも」。効能だけ表記した感じです。

図解は、イメージ図(小さい文字で『※イラストはイメージです』とも書いてあります)をイメージだけでなく、とてもリアルな説明図として使う技法です。正確さとわかりやすさを併せ持った表現です。

 
■表面のその他の表記
「アイリスオーヤマのロゴ」「「7枚入り」「ふつう サイズ」、そして「個別包装」。枚数とサイズは、買いミスを防ぐためです。しかし『個別包装』は異なります。こちらは衛生をうたっています。

 
■裏面の表記
目立たせるために、ある意味派手な表面に対し、こちらは取扱説明書(以下 取説)の面持ちです。取説は2つの意味を持ちます。1つ目は、正しい使い方を説明すること。2つ目は、その商品として必要と定められたことが書かれています。

正しい使い方は、何も知らないユーザーにとっても有効ですが、メーカーとしては、自衛のためにも必要です。

 
今や都市伝説の1つと化した「電子レンジの猫」の話をご存知でしょうか? お風呂に入れた猫を乾かすために、電子レンジに入れ「チン」をしたアメリカ人のおばさんの話です。

電子レンジは、そこにある水分を沸騰させます。人間もそうですが、猫の60〜80%は水分だと言われています。このため、猫は、血液を含む、体内の水分がいきなり沸騰。哀れ、亡くなったそうです。怒ったのは、猫の飼い主のおばさん。訴訟大国アメリカですから、弁護士を雇いメーカーに対し訴訟を行います。

弁護士の主張は「電子レンジのどこにも、猫を乾かしてはいけないと書いていない。温めができる利点ばかり書いてあります。そうなると、猫を早く乾かすために使いたいと思うのは、おかしくないのでは?」というもの。この主張は認められ、とんでもない賠償金をメーカーは支払ったということです。

今、これは作り話ということが明らかにされていますが、これほど、わかりやすくメーカーの立場を物語る話もないので、今だに使われる話です。

要するに、「正しい使い方以外、メーカーは認めません。もしそれ以外の使い方の場合は、自己責任で。」ということをユーザーにアピールする必要があるのです。このため、どうしても正しい使い方をはじめとする免責文を入れる必要があるのです。
ただ、世には曖昧な場合も多く、色々な混乱の元にもなっていますが・・・。

 
■実際の表記

①表面に書ききれなかった特徴、②マスクの使い方、③フィルタリングの説明図、④用語の説明、試験先、⑤JIS認定表、⑥日本衛生材料工業連合会の環境情報、⑦使用上の注意、⑧日本衛生材料工業連合会自主基準による表示、マスクサイズ、⑨事業者情報、⑩コールセンター電話番号、11 外装材料表示


 
■意味不明になるJAPOCマーク表示、雄弁なJIS認定表
一番問題なのは、『JAPOCマーク』です。人口の1/3に関係する「花粉症対策認定」を受けているにも関わらず、有名でないので、マークだけだと意味がわかりません。

裏面にあるJAPOCマーク。知っている人が少ないため単独使用だと、何のマークで、何故付いているのかがわからない。


加えて、JIS認定表の中に「花粉」の項目があります。これは95%で認定、ナノエアーマスクは99%でクリアしたことがわかる形になっており、知名度から言うと『JIS認定表』だけでいいのかもしれません。

このように、規格認定は、知られていることが前提となります。まぁ、水戸黄門でも、「三つ葉葵の印籠」そして「天下の副将軍」という、徳川将軍の名前を全員が知っているので平伏するのであり、無名の大名ならこうはなりません。それと同じです。

 
■アイリスオーヤマ ナノエアーマスク
マスクで、いの一番にJIS認定されたのは、アイリスオーヤマ「ナノエアーマスク」。

何故一番に認定されたのでしょうか? それは国産、かつ品質がよかったからです。めちゃめちゃシンプルな答え。

この手の話が出て来ると、工場の品質保証部が中心になって認定を進めます。が、特に面倒くさいのは、材料(マクスの場合は不織布)を外から調達している場合です。降ってわいた様な話なので、材料メーカーの対応が遅いのです。

一方、アイリスオーヤマは、不織布も自社で作っています。関係書類もすぐ集まったことと思います。そして、ナノエアーマスクは、元々第三者機関で、花粉、PFE、BFE、VFEのテストを行いクリアしています。JISの担当も、やりやすかったと思います。

 
ちなみに、この夏、私もナノエアーマスクを使い続けました。というのは、ここまでの防御力を通していながら、息苦しくないからです。ナノエアーマスクは「通気性」が抜群にいいのです。猛暑の中、他メーカーのはちょっと使えませんでしたね。

なお、アイリスオーヤマのマスクは100を越す品番があるそうです。ただし、原材料を混ぜる品番はないそうですから、中国製、ベトナム製が混ざっているなどはなく、全部日本製です。今後、全マスクで、JIS認証を進めるそうですが、終わりは来年後半だとか。パッケージ変更もしなければなりませんので、お金も時間もかかります。

 
■今後
コロナ禍 マスクは必需品とされていますが、長引いている上に、猛暑も手伝い、どうしてもルーズになります。また、ある音楽イベントでは、オシャレでないと言うことで「不織紙マスクNG」と報道されたイベントもあった様です。(真意は、ダンス音楽イベントなので、不織布マスクだと息苦しすぎて外されるかも知れない。それはNGなので、息苦しくないマスクをつけてくださいだったそうです。)

しかし、コロナの拡散、防御を考えるなら、「VFE」をクリアしてないと意味はありません。確かにオシャレではないでしょうし、基本再利用もできません。しかし、再利用不可(ディスポーザブル)というのは、衛生、安全、経済で揉まれてきた医療で採用されたモノでもあります。そして何より、直接飛まつを体に付けないのは重要なことです。

今後、「JIS認定品」という文言は、「日本製」に代わり「表面」に出てくると思います。国民の安全を確保するために、今回定められたマスク用のJIS。大いに活用したいモノです。

 
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://www.irisohyama.co.jp/products/health-care/mask/pleated-mask/nano-air-mask
 
 


 

 
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2021年10月9日

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