レポート

コンセプトに技術が追いつかなかった? アイリスオーヤマのスチームオーブンレンジ「MO-F1808」。


電子レンジは、冷凍、中食家庭外で調理された食品を、購入して持ち帰るあるいは配達等によって、家庭内で食べる食事の形態。が当たり前になった今の日本で持つべき調理家電の一つ。「マイクロ波」でエネルギーを与えることにより、食品内部の水を振動させます。振動が熱エネルギーになり加熱されます。水は食品どこにでもあるので全体を温められます。そんな便利なことを短時間で、自動でこなす調理家電です。

アイリスオーヤマ スチームオーブンレンジ「MO-F1808」


 
オーブンレンジは、この電子レンジにオーブン機能を加えたものです。最近ではグリル機能も加えられています。
別機能を導入した、一番の理由は、電子レンジは温め、調理には使えるのですが、料理を作ることはできないと言うことです。
ちなみに、オーブンは「放射熱」で、食材を加熱して調理します。グリルは元々「焼き網」のこと。熱源が近く焼く感じです。

 
◾️オーブンレンジの矛盾 オーブンとレンジは仲良しなわけではない
オーブンレンジはそれなりに便利です。市場導入されて、ほぼ半世紀。当たり前の様ですが、実は、「レンジ機能」と「オーブン機能」相性としてはあまり良くないのです。

というのは、電子レンジは中に、金属皿を入れてスィッチONすると放電します。マイクロ波は水だけでなく金属が持つ電子も振動させます。これが外に飛び出し、放電するわけです。つまり、オーブン&グリル(以下 オーブン)で使ってもいい素材が異なるのです。

キッチン用品の多くは、鉄(含ステンレス)、アルミが使われています。汎用性があり、水に強い。また近年キッチン用品に多用されているプラスチックは高温には弱いです。

このためメーカーは、オーブンレンジには、「レンジ用」のアタッチメント、そして「オーブン、グリル用」のアタッチメントと2種類用意しています。多くの場合、電子レンジ用のセラミックプレート。そしてオーブン用のホーロープレートがあります。使わない時は、庫内に収納しておくとしても、使う時は、片方を出して置かなければなりません。これがとっても面倒くさい。

今の台所は狭いです。使う時は、食材を出し加工するスペースが必要です。これは誰でも必要なので、必ず確保されています。一方、日本の台所は、これだけあるキッチン家電に割と不親切。まずコンセントの絶対数が少ないです。またスペースも十分確保されているとは言えません。例えば冷蔵庫。幅狭が多く、主婦の求める大容量が楽に置けるのは少ないです。しかもメーカーは、これを見越して、幅より奥行が大きくすることで冷蔵庫の容量を確保しようとしています。このため十分、扉が開かないこともあります。まぁ、こんな日本のキッチンに出したプレートなど置くところは、なかなか見つかりません。

強引に足された歪みでもあるのです。

 
◾️トーストのニーズに合わないオーブンレンジ
オーブンレンジは、レンジ、オープン、グリルの機能があると書きました。もしそれが「正解」ならば、全オーブンレンジは、トースター機能も持つはずです。事実、全てのオーブンレンジは、トーストできます。焦げ目もちゃんとつけられます。

「MO-F1808」で、トーストしたところ。


 
しかし、今はオーブントースター全盛。理由は「美味しい」からではなく、オーブンレンジのトーストは「ニーズに合わない」からです。

今使われているトースターは、大きく2種類あります。「ポップアップトースター」と「オーブントースター」です。特徴は熱源との食パンの距離が非常に近いことです。と追いオーブントースターで3cm位、ポップアップトースターで1cmもない感じでしょうか? ポップアップトースターはニクロム線で加熱しますが、遠いオーブントースターはヒーターでガンガン熱をかけます。

一方、筐体が大きなオーブントースターは、それよりも距離があります。そしてヒーターも剥き出しになっていません。

このため、多くのオーブンレンジは、上のトレイに食パンを置き、できる限り、裏にヒーターがある上面に近づけます。逆な言い方をすると、下のヒーターからは遠ざかります。そうして焼くのですが、ヒーターとの間に金属があること、オーブントースターに比べ、庫内が広いため、オーブントースターのようにトーストできないのです。熱コントロールが難しい上、時間がかかります。5分以上、速くて7分、遅ければ10分位かかります。しかも片面が焼けても、もう片面が残っています。

日本は、夜にパンを食べることは基本ありません。外で西洋料理を食べる時くらいです。ではパンはいつ食べるのか。基本朝。もしくは昼です。朝食と昼食に共通するもの。それは、時間が短いと言うことです。食べる時間も短ければ、用意する時間も短いのです。つまり、オーブンレンジでトーストを焼くのは、時間的に合わないのです。

その上、オーブントースターほどは美味しくありません。今ドキのオーブントースターは、「美味しい」方向へと進化していますからね。このため、オーブンレンジを持ちながらオーブントースターを買うと言う、小さいオーブンと大きいオーブン、両方とも持つと言うある意味、無駄なことをしているとも言えます。

 
◾️上ヒーターを剥き出しにした「MO-F1808」
アイリスオーヤマの新型オーブンレンジ「MO-F1808」、最大の特徴は、上ヒーターが裏側になるのではなく、剥き出しになっていること、そして普通のオーブンレンジより一回り小さいことです。先に、オーブンレンジでトーストする時の2つの欠点、ヒーターが裏側にあり熱制御がし難いこと。そして庫内が広く温度を上げるのに時間がかかり、熱制御がし難いことを、少しでも解消したモデルでもあります。

外寸。普通の電子レンジより一回り小さい。


 

内寸。上ヒーターが剥き出しになっている。
ただし後が出っ張っているため、中央ではなく、手前に位置する。


上ヒーターとの距離は約6cm。オーブントースターよりちょっと遠めか。


 
実際に試してみると、プログラムの通り、7分/枚、7分30秒/2枚で焼けます。

しかしヒーターの位置が手前にある性でしょうか、位置によっては半分しか焼きが付きません。

 
また、片面焼きですので、ひっくり返す必要があるのですが、かなり上面と近接しているので、金属トレイにベタおきですので、鍋つかみなどを自分で用意する必要があります。

4分30秒で、ひっくり返すように指示が出てくる。


 
オーブントースターは金属の焼き網が扉を開けると前に出る工夫がされているのですが、電子レンジ機能を持つオーブンレンジは、金属を完全除去できるようにしておく必要があるので、恒久的な工夫ができないのです。このため、熱い黒角皿はユーザーが火傷しないように、何か掴むものが必要です。シェフの調理服は袖が長くできていますが、折込んだ袖口を伸ばし、このような熱いものを持つようにできています。が、それは業務用。一般市民の我々は、タオルか鍋つかみが必要です。

尚、確かに、このことは取説に書かれているのですが、冒頭ではなく、そのパン焼きのページの引き出すときには、別途必要とあるだけです。価格を考えると、オーブンレンジ初心者も購入する可能性があるので、ここは、もう少し工夫が欲しいです。

トレイに工夫はなく、出していくと落ちてしまう。


 
MO-F1808は、かなり意欲的にできているのですが、パン焼きに関してはオーブントースター並とはいきませんでした。ただ

 
◾️MO-F1808の特徴
まず、いいところは、オーブンレンジでありながら、アイリスプラザ価格 ¥32,780(税込)と安いことです。

次は、特徴です。
まずは、温め時間を短くできる、時間ブーストを搭載していることです。これは温めの時間が決まり、作動を始めたあと、「グリル・オーブン」ボタンを押すことにより、W数を上げ短時間で温めます。電子レンジの基本は、エネルギー量=調理時間ですから、このような芸当ができるのです。

温めメニューをセレクト後、「決定」を押しスタート。
ブーストさせるには、その後「レンジ」を押す。


ただ今ドキのオーブンレンジは、温めをメニューに入れます。MO-F1808の場合、「牛乳・酒」「お惣菜」「弁当」「フライ」と、メニューの1〜4は、温めメニューです。

単機能レンジで見かけるボタンさえ押せば、オーブンレンジが判断して最適な状態に温めてくれる機能はありません。MO-F1808の場合、レンジが30秒追加されます。

 
あと、外寸からすると庫内はかなり広めです。割と使いやすいです。

オートメニューは20種類と言いたいのですが、料理メニューとしては11メニュー。メジャーなものは網羅されていると言ってもいいでしょう。

 
◾️オーブンレンジの価値は、オーブンで何を作るのかで決まる
私が知っている限り、オーブンレンジを上手に使っているのは、お菓子作りが趣味な人が多いです。小麦粉、牛乳、卵、砂糖の4材料で、あれだけ多種多様なお菓子を作り出すのは実に驚異ですが、焼くのはオーブンと決まっています。パン焼き、塊肉を焼く時、欧米の食事にオーブンがないのは、考えられません。

逆に言うと、日本では、家庭料理が西洋化されたといえ、包丁と鍋(フライパン)、ガスがあれば、なんとかなります。西洋菓子は買ってくれば、基本外で買ってきますし、余程のことがないと塊肉は料理しません。大体、箸で切れるくらい柔らかいのを好むところがありますので、肉も薄め、肉塊にむしゃぶりつくと言うとから揚げくらいのものでしょうか。

要するにオーブンを使わないのなら、単機能レンジで十分なのです。

 
逆に、オーブンの方が便利な時があります。それは、一度で多人数分を作るときと、材料を入れるとあとはほったらかしにできることです。使い慣れるととっても便利なのがオーブンなのです。

あともう一つありました。それはノンフライヤー料理が作れることです。昔、ノンフライヤーとしてから揚げをメインに考えたフィリップスのノンフライヤーが流行りましたが、一つには日本人の清潔、健康志向が挙げられます。外食 から揚げは、コロナ禍でも売りを伸ばしているようで、これはオーブンレンジでも、同様のことができます。

 
◾️まとめ オーブンレンジは見直し時期
今後、日本は人口減になります。つまり量多く一度でと言うよりは、小型でいろいろなモノが作れることが重要になります。要するに、オーブン部分をオーブントースターに近づけた方がいいと言うことです。アイリスオーヤマの「MO-F1808」は、その方向で作られています。意欲作です。しかし、ちょっと技術が足りていない気がします。頑張って欲しいものです。

一方、オーブンレンジをIoT化し、メニュー他、自分カスタムにする動きも活発化しています。今、大手総合家電メーカーは、こちらを追いかけています。

この様に、オーブンレンジは今、岐路に立っている様な状態です。しかし私は、オーブン料理の日本でのあり方をもっとよく考えるべきな様に思います。もし不要とするなら、単機能レンジとオーブントースターの組み合わせで十分です。

それでなくても、手狭なキッチン。本当に考える時期に来ていると思います。

 
 
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=H516983F
 


 

 
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2021年8月18日

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