レポート

タイガー、「炊きたて」50周年モデルが残念なところ。
土鍋圧力IHジャー炊飯器「炊きたて」ご泡火炊き JPL-A100のどこが?


炊飯器で常に先頭を走るタイガー魔法瓶。
その「炊きたて」の50周年モデルが「ご泡火炊き JPL-A100」。
タイガーは、内釜に土鍋の特性=高熱保持性を採用。そしてフタにもヒーターを仕込み、隙がない炊き方です。では、レポートしていきたいと思います。
 
◾️箱を開けたときの違和感
最近の家電の輸送箱(一番外側の段ボール箱。茶ダンだけでなく、場合によってはカラー段ボールで箱のまま陳列できるようにする)は、小さい。シンプルライフが、当たり前になりつつある令和の時代。持っているモノもできる限り、小型に仕上げます。

小型化すると、材料が少なくてなりますので、コストダウン手法としてメーカーも熱心に取り組みます。このため、最近は5.5合炊きとしても、小さめが当たり前。四角いお櫃を思わせるデザインが全盛です。

 
そんな中、タイガーの炊飯器は、少し大きいです。それは理由があります。タイガーは、炊飯器は、テーブル上におかれる可能性があるとして、「360°」どこからみても破綻のない「360°デザイン」を採用しています。

多くの家電の裏側は実用的に作られます。デザインで不都合な部分は、目につかないように裏側に集められます。しかしタイガーは裏側もキレイなモノ。不都合な部分を本体内に隠されているのです。このため、ミニマムをモデルの中では、ちょっと大きくなります。

上から見ると、「特異な」デザインとは感じられない。


しかし、20周年モデル:JPL-A100を出すときに感じたのは、「さらに大きいじゃないか!」「それに上から見ると楕円だ。」要するに、今までと全く違ったモノだったのです。

 
◾️特異なデザイン
JPL-A100のデザインはちょっと独特です。炊飯器としては異形と言って良いかも知れません。写真で見たときはさほどでもなかったのですが、実物を見るとかなり違います。実に独特のフォルムです。

私が思い出したのは、茶釜の「平蜘蛛」。戦国大名 松永久秀が織田信長に謀反をして失敗に終わったとき、信長から「平蜘蛛をよこせば命だけは助けてやる。」と言われ、かえって平蜘蛛を壊し、切腹したと伝わるほどの茶釜です。

そこまでの異形さ、美しさはないとしても、今までにない独特の佇まいであることは確かです。平蜘蛛は言い過ぎかなと思いながら、もう一つ浮かんだのは「うつろ舟」。江戸時代、常陸の国(茨城県)に漂着。中からは女性が出てきたと言う文献が残っており、UFOともタイムマシンとも言われているものです。

少なくとも、炊飯用具、お米関連用具とも違うデザイン。これから未来に向けたデザインとも言えますし、50周年だから特異なデザインにしたのかは分かりませんが、独自デザインであることだけは確かです。

斜め前から見ると、モダンに見える。


横から。見ないフォルム。


デザインの好き嫌いは個人の好みのところがありますので、デザイン評は、ここまでとします。

 
◾️めちゃめちゃ使いやすいタッチパネルと3スィッチのコンソール
今の時代、タッチパネルは当たり前です。しかし家電の場合、今でもカラー液晶ではなく、単色液晶を使う場合もまだまだあります。理由は「コスト」です。このため、ともするとディスプレイを小さくする場合が多いのですが、そうなると視認性は劣ります。炊飯器は、老若男女すべての人が使います。若いうちは、表示が小さくても何とかなるのですが、年をとるとダメですね。老眼なので、ぼんやりとになります。メーカーサイドも、ここの機微は心得ていて、なるべく大きなディスプレイを使うようになってきました。

タッチパネルながら、表示は単色。
それにしても使いやすい。


さてJPL-A100ですが、押しボタンが3つあったので、初めはタッチパネルと気づきませんでした。
当然、炊飯器セットのイロハのイ、時刻設定すらできません。で、取説を読んで気づいたわけです。

しかし、タッチパネルはすごいですね。実に使いやすい。というより、一番使う回数が多いスマホなどがタッチパネルですので、実に自然に使えます。楽な上に、セレクトが速くできる。あまりにも当たり前すぎて、どう違うのか、覚えていない程です。

 
◾️3合、1合とも、食味、食感ともに変わらず『美味い』
JPL-A100は、5.5合炊き。ですから、3合をまず試してみました。
タイガー魔法瓶の実力通り。美味い。やはり超一流です。食感はほどよく硬く、内側はホカホカ。お米の香りがきれいに立ち、味はしんみりと舌の上に広がります。
下のラインナップとは一線を画します。

土鍋の保温性を活かした萬古焼の内釜。


一合で炊く時は、内フタを使用する。これも萬古焼。
内釜を取り出しやすい様、手を入れる凹みが設けられている。


さて、炊飯器というモノは、容量ギリギリの場合、上の方は美味しく炊けます。少なくとも、不味くはなりません。逆に、少ないと美味しく炊けないことも多い。理由は、お米の上の空間が大きく、コントロールしにくいのです。タイガーはこれに対応するため、内釜と同じ萬古焼でフタを作りました。炊く時に内フタとして使い、空間を制御するのと、フタの蓄熱で1合を炊き上げます。これも3合杜甫ぼ同じ美味さ。

さすが、トップモデルです。

 
◾️フタの開け閉めにドキドキ
今ドキの炊飯器は、基本的にフタに「押しボタン」が付いています。
私は、これはイイと思うのですね。炊飯器から、ご飯をよそう場合、多くの場合、片手、もしくは両手にしゃもじや茶碗を持っていることが多いです。

このために必要なのは、片手で確実に押せることです。人差し指だけでなく、親指、薬指、場合によっては、小指でも開けられる必要があります。

フタに、大きなボタン。しかも押し込みタイプというのは、こう言うニーズで出来上がったわけです。

端にあるフタ開け。
小鳥の口ばしの様に見える。


今回のJPL-A100のフタの開閉は、鳥の嘴のように、フタの先端に付いています。
しかも小さく、斜め下に押さなければなりません。

で、まず力をぐっと入れると、本体が動くではないですか。
オッとやばい。
これは、ロックが解除する前に、力をかけすぎたため、前脚が支点となり、てこの原理で持ち上がったためです。斜め下でロック解除なのですが、いつもの通り真下に押したことも原因の一つのようです。

次の失敗は、スィッチから指が滑って外してしまいました。これは指置き場=スィッチが斜め下へ動くためです。

近年の家電で、あまり感じたことのない違和感です。

かなり下に下げないと、フタが開かない。
この後、指が滑り痛い思いをしました。


慣れて、ゆっくり動かすと、問題はないのですが、個人的には設計が悪いと思っています。
多分、スィッチの位置をここにしたのは、多分機能上の都合ではなく、デザイン上の都合でしょうね。デザインとしては、確かにいい感じなのですが、その分、フタが開きにくい。

正直、この開け方だけはいただけません。開けようとする度に、ちょっと考えてしまいます。

 
◾️最高のモノ=先進性ではない
日本は最高級品を作るのが下手と思います。
技術最高、スペック最高、品質最高はできるのですが、製品として最高かと聞かれると返事に詰まるものが多いです。

今回レポートしたJPL-A100は、日本を代表する炊飯器メーカー、タイガー魔法瓶が50周年記念モデルとして世に出したモノです。タイガーの技術を集積した際高級品でもあります。価格も、最近見かけなくなった10万円以上。肩で風切るフラッグシップです。

しかし、家電はオブジェではありません。使ってナンボのものです。
ご飯が素晴らしく美味しく炊けます。タッチパネルはナチュラルな操作感の上、はやく操作ができます。機能的にも十分ですし、洗うパーツも極力少なくしています。

内ブタは、磁力で装着。引っ掛け部などもない。
細部の工夫が凄いです。


小さな技術一つ一つの集積は素晴らしく、10万円払う価値は十分あります。

しかし、フタの開け方が良くありません。もしそれが、デザイン上の理由から来ているとしたら、意味がないですね。多分、今までのデザインでも、質感をアップさせれば、全く問題なかったはずだと思います。多くのメーカーのフラッグシップは、欠点がないようにまとめられています。ユーザー負担がないからこそ、感心もされることを狙います。他の部分がすごくいいだけに、ちょっと残念です。

 
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
http://www.tiger.jp/product/ricecooker/JPL-A.html
 

 
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2020年9月18日

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