豆知識

【花粉症2020 01】花粉症の原因のスギ、ヒノキって、どの位あるの?
欲を出した林業が起こしたモノ。


花粉症についての知識をまとめておきたいと思います。
国民病と騒がれる割りに、医療ガイドが今年ようやくできる花粉症。実は、花粉症は、林業から始まり、花粉飛散の状況把握、眼鏡、マスク、空気清浄機での防御、そして医療と多分野にまたがります。国の省庁で言うと、環境省、気象庁、農林水産省、文部科学省、厚生労働省ですから、組織お得意の縦割りでは対応に不具合が生じます。このため横断で対応を進めているのが、現在。遅々ですが、進んではいます。
これらを、整理しようというのが、今回の特集。第1回は、スギ、ヒノキ花粉を作る人工林のまとめです。

スギは、雌雄同株。このため、同じ樹にに雄花と雌花の両方を持つ。
雄花が花粉を飛ばし、雌花が受粉。生殖を営む。花粉は風が媒介する。。
特に珍しい受粉方法ではない。
写真は、スギの雄花。


■人工林と天然林
日本は誰が何と言おうと山国です。島国ですから、しかたがありません。
中央に山脈があり、そこから海に一散器に落ちていく感じです。平野はあっても少ない。その上、温帯で降水量も多い上に、南北にも拡がっている。まさに博物学の見本市のようなところです。古文書には、とてつもない巨樹があったように書かれていますが、真偽の程は分かりません。

当然、天然林の場合、いろいろな木が生えます。ミズナラ、クヌギなどの広葉樹。松も生えますし、杉もヒノキも生えます、大きく、木の実をタップリ付けるもの、小さく実がならないモノ、枯れ木もあります。同じ種類の樹だけ延々と生えるなんてありません。本当かどうかは分かりませんが、昔の大工さんは大きな建物を建てるときは、山をまるごと買って、樹を選び使ったそうです。北で育ちが悪そうな樹でも、耐える力が大きいとして、上手く使ったそうです。多様性を活かしたわけです。

里山風景。同じ樹が連続して生えていないことが分かる。


実は、里山の山の樹は、人が植えませんので、天然林に含まれます。(木が枯れた場合、同じ樹を植える場合は、人が行っても天然林に区分けられます。)村人が手入れをする里山は、美しく、また暖かみがあります。私もよく昆虫採集に行ったものです。本当にいろいろな虫がいました。カブトムシ、ノコギリクワガタ、黄金虫に、カミキリ虫。秋になると草地にコオロギ。松の木下にはマツタケもありました。

ところがスギの人工林は、ほとんど昆虫に出会いません。と言うより、虫も含めて生き物の気配が余り感じられません。かなり寂しいです。

 
■数字で見ると
林野庁のデータでは、日本の総面積は、3780万Ha。内、森林は2505万ha。実に、国土の68.5%は森林です。この森林率は世界で第二位。(トップはフィンランド) どう言おうとも、日本は緑豊かな国です。

では、その内、天然林は、1348万ha(内訳54%)。人工林は、1020万ha(41%)。その他:136万ha。
そして、スギ、ヒノキの人工林は、444万haと260万ha。人工林の69%、実に70%がスギ、ヒノキです。
森林の28.1%がスギ、ヒノキ。国土の18.6%がスギ、ヒノキ。

ちなみに、天然林の場合、広葉樹:針葉樹は1080万ha:238万ha。80%が広葉樹ですから、人工林、中でもスギ、ヒノキがいかに歪な割合なのかがお分かり頂けると思います。

逆に、人工林は、広葉樹:25万haで、針葉樹:1007万haですから、いかにスゴいか分かります。

この人工林の目的は、建築材です。

 
■人工林は今に始まった事ではないが・・・
人工林の歴史は、古いです。
神社、仏閣は、すごく木材が必要ですからね。京都の本願寺さんの建物など、スゴいモノです。
あと、戦国以降は「城」です。

が、今直接、影響を及ぼしているのは、戦後、高度成長期以降です。1955年と考えてもらえればと思います。
戦後、ベビーブームで、人口が爆発します。人が生きるためには、家が必要。当時のほとんどは木造建築ですから、建材が底を付きます。1ドル。360円時台ですから、海外から輸入しても高いわけです。また、輸入制限も大きなハードルとしてありました。

このため政府は、余り使われない天然林から、人工林へ変えて行きます。こうして、人工林は急増するわけです。要するに、1980年代まで、人工林は一気に増えるわけです。

JAPOC(花粉問題対策事業者協議会)の説明会資料から。
赤枠内が、1965〜90に植林分。面積が広いことが分かる。


が、為替自由化、輸入制限の緩和で、状況が一変します。国産の建材はすごく高値となります。
要するに、採算性の取れない高級材木が唸っている山があちこちにあるわけです。また、これは林業関係者が少なくなることを意味します。

里山ではありませんが、山は手入れが必要です。手入れしないと、山は荒れてしまいます。

 
■スギの樹が花粉放出を始める樹齢
この人工林の歴史と、合わせて知っておかなければならないのが、スギはどの位から、花粉を出し始めるのか?ということです。

ご存じですか、一声30年です。

1955年〜90年まで、むやみやたらと造林したスギが、花粉をまき散らすことができる樹齢に入ったといわけです。で、それ以降も植林していますので、花粉を出すスギの本数が増えて行きます。つまり、花粉量を減らすのは、まず無理な相談です。

 
■ここ10年以上、今の状況が続く
で、90年以降、植林されていないかというと、バッチリされています。このため、花粉を出すスギはもっと増えます。

花粉を出さないスギができたとかいうニュースもありますが、採算が取れないスギをどうするのかも決まっていないため、なかなか花粉を出さないスギ、他の樹に代えるのはとても難しいと言えます。

 
要するに、「花粉の量を減らす」と言う根本的な対応は、極めて対応しにくいことが分かります。
自然が上手くバランスを取っている環境を、人間が経済の名の下にグチャグチャにしたわけですから、山の神様などは、「知らないよ。」と舌を出しているかも知れませんね。

 


 

#花粉症 #植林 #花粉量 #生活家電.com

2020年2月15日

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