思うこと

【2020年の兆候】今ドキの安価炊飯器は、パナソニック流?!


2019年晩秋、スマホで世界第4位、中国第2位のシャオミ(小米)が、日本初上陸。その時、IoT 家電も上陸するとは聞いていたのですが、フタを開けるとビックリの、1万円を切る(税抜)炊飯器「MI IH炊飯器」。
そして、シャープもデザインに凝った安価炊飯器を上市しました。この二つ、実はかなり似ているのです。どこが? と言うと、元パナソニック社員の手が入っているところです。新しい技術の伝搬を見る思いでした。
 
■2019年の高級炊飯市場
2019年は、炊飯器のすごいモデルが「タイガー」「象印」「日立」から上市されました。広範囲の「合数」で美味しく炊けるモデルです。

今までの5合炊きの高級炊飯器。あれだけの技術を入れ込んでも、1合はそれなりしか炊けませんでした。

これは内釜の上のスペース差が大きすぎ、何らかの熱対策が必要だったからです。(似たことはコーヒーのドリッパーにも言えます。ドリッパーも3杯も抽出量が変わる場合、杯数に合わせたドリッパーを使わなければなりません。美味しさと量の関係は、それほど微妙な関係にあるのです。)

一合にこだわるなら、少量モデル、いわゆる3合炊きを買えばよいじゃない、となりますが、誰か(多くは孫、子)が来た時の食事では美味い白米は食べさせたいもの。このため、一家に一台の炊飯器で、5合でも1合でも美味しく炊けることは大きな課題でした。

2019年、アタッチメントでスペースをコントロールする他、いろいろな工夫をした全合美味しいというモデルが出たのです。

 
■「高級」とは何か?
美味しさにこだわり続ける高級モデルがそうである一方、安価炊飯器は、あまり美味しさを強調しません。安価モデルでは美味しく炊けないのでしょうか?

そんなことはありません。火加減がそれなりでも、水加減がドンピシャで炊くとお米は、美味しいです。その上、お米が暖かい間は、美味しく感じられます。

これがお米が主食になった理由です。扱いが難しくて、美味しくないものをお米になんかしません。しかし、それでも味に差が出ます。また、個人個人の好みもあります。「美味しいご飯」というと一言ですが、その意味は幅広く、多様です。

このため、高級炊飯器は、「どんな状況」でも「好み」に合わせて、「失敗なく」美味しく炊き上がるように設計されています。

 
この炊飯器ですが、カテゴリー的にどんなヒエラルキーを形成しているかというと、まずは「火力」で分けます。炊飯器の火力は、「マイコン制御ヒーター」と「IH」に分けられます。どちらがスゴいかというと、IHの方が瞬時に火力を上げられるなど、パワー、コントロール共に上です。このため、「マイコン制御ヒーター」より「IH」が格上です。

また、炊飯というのは、米の中に水分を入れ込むことと言い換えることもできます。このため「圧力」(そんなに高い圧力ではありません)が加わったモノが現在の高級炊飯器となります。

大まかに、「マイコン制御+ヒーター」<「IH」<「IH+圧力」となります。

よく宣伝とかに出てくる特殊な内釜は、「ヒーター」「IH」の力を最大限に発揮させるものです。で、ここは素材が絡みますので、思い切りお金が、かかります。

 
■炊飯器の商品ヒエラルキー
基本的には、「マイコン制御ヒーター」1〜2万円、「IH」2〜3万円、「IH+圧力」が3万円以上となります。というのは、3万円以上のモノは内釜を特殊にするなどの工夫がされているので、高くなるからです。

また、開発費もバカになりません。炊いては食べ、工夫の繰り返しです。五感を駆使する開発は、とても時間がかかります。ちゃんと開発した炊飯器は、決して易くはないです。

 
■老人向けと若者向けで、違う「標準」
技術(構成)の方から、炊飯器の商品ヒエラルキーを見ましたが、別の見方もあります。

それは誰が使うのかです。

例えば、高級炊飯器は、高齢者層に売れます。こちらはこの世の美味しいモノを一通り食べてきた世代。かなり味にうるさいです。とは言うモノの、年が年ですから、そんなに多くは食べられません。このため、いつものモノもを「より美味しく」。当然、高級炊飯器は、「欲しい!」となります。このため、高級炊飯器の「標準」はお年寄り向けのことが多いです。いわゆる「やわらかい」食感です。典型は、パナソニックですかね。

 
逆に、安価炊飯器のメイン層は、若者中心です。
住居はワンルームがほとんど。そして、この若者は余りモノに執着せず、どちらかというとシンプルライフをお好みます。このため調理家電も、炊飯器、炊飯器したデザインではなく、どちらかと言うと生活を感じさせないデザインが好まれます。
量も食べますから、どちらかというとアッサリした味で、やや固めが好まれます。

これが今の安価炊飯器の大まかな市場の状況です。

 
■「コストダウン」+「美味しさ」のシャオミ
そんな中、シャオミが日本市場に提案した炊飯器は、中国のメーカーらしく、高い技術が日本より安く提供されています。IHを使っているのに、9999円。しかもスマホメーカーらしくIoT付き。単純に言うと、今までの半額で、IHを使えるようにしたモデルというわけです。

発表会場の展示モデル。


これGA可能になった理由は、間違いなく地元中国市場が日本の10倍の規模を持つことに由来します。規模による量産効果です。

しかし、シャオミはスマホメーカー。炊飯器メーカーとしては、どうなのでしょうか? しかも日本で流通しているお米は「ジャポニカ米」で、一般に中国で食べられているお米とはかなり特長が異なります。

内釜には「厚釜」の文字。


シャオミが取った策はヘッドハンティング。
サンヨー、パナソニックで炊飯器開発に従事、「おどり炊き」を作り上げた内藤毅氏を共同開発者として招き入れたのです。要するに、日本人のプロに日本人の口に合うように、開発に加わってもらったわけです。「技術は会社に付きません。人に付きます。
」当然、開発した人は、その技術の長所、短所を知り尽くしているので、強いわけです。そう言った人をヘッドハントする。韓国の時は半導体、テレビでしたが、中国では白物家電にも及んだわけです。

同梱品が、日本メーカーの倍。(スマホは違います(@^▽^@))


正直、すごいことになったと思いました。
高級炊飯器を爆買いしてくれていた中国が、その時は日本製の炊飯器をリスペクトしていた中国が、安くて美味しそうな炊飯器で、日本に乗り込んできたわけです。まだ試食できていないので、どれくらい美味しく炊けるのかはわかりませんが、「おどり炊き」同等だったら、パナソニックは真っ青になります。安いモデルながら、本気の気迫が伝わってきます。

 
■シャープよ、お前もか!?
シャオミの発表から数日後、シャープが、若者世代に向けたキッチン家電「PLAINLYシリーズ」を発表しました。この若者向けにデザインを統一方法は、イオンなどの大手スーパーのプライベートブランドでも採用されている方法で、目新しさはありません。

シャープのトップ技術の3つは、「液晶」「プラズマクラスター」「過熱水蒸気」ですが、この若者向けキッチン家電、その中に入りません。どちらかというとシャープの苦手とするところです。特に各家電メーカーが力を入れている炊飯器は、シャープでいいモデルが思いつきません。

今回のPLAINLYシリーズは、キッチン家電全部ですから、当然炊飯器もあります。5.5合炊きのKS-HF10Bの市場導入時予想価格2万2000円。IHですから、今の日本市場の技術価格です。

発表当日、試食もあった。
試食時の感想は、並みの上、やや柔らかめ。


ここまでなら、ありがちな話です。が、この炊飯器、KS-HF5/10Bで驚いたのは、火加減のプロデュースが、元パナソニックの下澤理如氏だったことです。

 
■何故、元パナソニックなのか?
しかし、なぜこうも元パナソニックなのでしょうか? 実はこの2人はこれに加えて「元サンヨー」ということが言えます。

サンヨーはご承知の通り、倒産時に「太陽電池」目的と、パナソニックの縁が深いところがあり、パナソニックが吸収という形で買いました。一部、洗濯機と冷蔵庫部門は、中国白物家電の雄、ハイアールが買って、日本で「アクア」社を立ち上げ頑張っています。

しかし、炊飯器はそうではありませんでした。当時のパナソニックが弱かった技術「加圧」をサンヨーが持っていたからです。一躍、パナソニックの炊飯器のレベルが上がります。それが2008〜2010年の話です。

ところが、パナソニック自体は「B to C」から「B to B」へ重心を移しています。そのためでしょうか、新しく開発した技術がギシギシに入った家電ではなく、今ある技術とデザインを上手く融合させた家電を作っていると言う感じです。ガンガン新しく開発したいと言う人にはちょっと欲求不満がでてきます。このような感じの時に、「新しいことをしませんか?」と言われるとしてみたくなるのが人情でしょう。

今回は、シャオミ、シャープの話ですが、退職した技術屋で家電を開発するアイリスオーヤマも同じ構図と言えます。

 
■日本メーカーは、安価市場に向き合えられるのか? あるいは、真のグローバル化に日本メーカーは耐えられるのか?
では、これでシャオミ、シャープは、パナソニックと同じ炊飯器ができるのでしょうか?技術的にはイエスです。しかし、同じ炊飯器と評価するのかは、別の問題を含みます。

皆さんは、パナソニックの炊飯の代表を「おどり炊き」だと思われていると思います。高級炊飯器のカテゴリーに属しますし、CMで宣伝もしています。しかし、前述した通り、ターゲットはお年寄りなのです。このため「おどり炊き」は高齢者が美味しく食べやすいように、標準で炊くとかなり柔らかく炊けます。

 
しかし、今回の炊飯器は、若者向け。歯もしっかりしており、ややかためのお米を好みます。つまり、同じ技術でも使い方を変えなければならないわけです。これは試食して確かめるしかありません。

今言えるのは、お米をよく知る日本人が関わった、低価格の炊飯器が発売されるということです。これはアメリカのテレビ市場などで、日本が、韓国が、中国が行ってきたことで、アメリカは、テレビを見放し、コンピューター、通信、ビッグデータなどにビジネスを変えました。パナソニックの「B to B」も似た意味を持ちます。

さて2020年。東京五輪の年。前回は、高度成長期の象徴でした。今回は、どうでしょう。市場の節目の年と認識されるかもしれません。中国メーカーが押してきているので、炊飯器だけでなく、いろいろな安価家電が、見直しを迫られるはずですので。

 
商品のより詳しい情報は、以下のホームページにてご確認ください。
https://www.mi.com/jp/mi-induction-heating-rice-cooker/ https://jp.sharp/ricecooker/
 
■参考記事
 
●レポート 『【実力チェック】パナソニックのDNAが入ったシャープの炊飯器:KS-HF05Bの実力は?判定は保留。理由は・・・』
●ニュース『象印、人気の「STAN.(スタン)」シリーズの、炊飯器、電動ポットにホワイトモデルを追加』

 


 

 
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2020年1月5日

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