トレンド

2019年、炊飯器トレンド。
少量はでも、大容量でも美味しくというニーズへの回答が出始めた。


「美味しい」=「高級」という図式で押してきた炊飯器も、2017年で技術的には出尽くしたのか、内釜談義は一段落。
2018年は、象印が「南部鉄器」を超える「炎舞炊き」、パナソニックの「おどり炊き」に続き、炊き方をを世に問い成功を収めました。私も、その美味さに、絶句した位です。
では、2019年は、どうでしょうか?
しかし毎年新製品を出し続けなければ、間が持たない日本の家電メーカーは頑張ります。
今年も、いろいろな提案がなされていますが、今後のトレンドになりそうな提案をしてくれたのは、「象印マホービン(以下 象印)」「タイガー魔法瓶(以下 タイガー)」そして「日立グローバルライフソリューションズ(以下 日立)」の3社。それは、「少量でも美味しく。しかも大容量も美味しく炊ける」という、ある意味、技術的に矛盾したユーザー要望に対応したものでした。

■炊飯のトレンドは高年齢層から
日本人がお米を食べなくなった。

これはお弁当を見ても分かります。昔の漫画で出てくるお弁当は、日の丸弁当か、おむすびです。

今の子供たちは、日の丸弁当って分かるのでしょうか?
四角い弁当箱に白米を詰め、真ん中に梅干しを入れた弁当です。おかずは少々。

夏場の暑い盛り、食べ物は特に傷み易いのですが、梅干しは、「塩」が多い上、「酸味」がタップリ。一粒で、そのご飯全部食べられます。その上、「酸」ですから傷みに滅茶苦茶強い。夏になると、梅和えがどっと増えるのは、味もそうですが、食中毒になりにくいからです。

しかも、こはんは「炭水化物」。これがあれば、なんとか頑張れます。しかも、ご飯メインですから、朝の忙しい時もなんとか作れます。しかも、日本の場合、ご飯自体が、かなり美味しいですから、定番ですね。

おむすびも同じ事。今でこそ、コンビニおにぎりの定番は、「シーチキン マヨネーズ」ですが、定番は梅干し。なんせ傷まないですからね。エアコンがない時代の生活の知恵です。

 
しかし、こうしてお米で育ってきた世代は、今や高齢者。
が、今の消費。高齢者がかなりの部分を支えているのですよ。特に炊飯器はそうです。
このため、高級炊飯器は、この人たちの声が色濃く反映されています。

 
■孫にも美味しいお米を食べさせたい
昔の人は、余り贅沢を言いません。食べ物もそんなに種類がないですからね。
とにかく主食である「ご飯」を大切にします。

一番の要望は「美味しい白米」を食べたい。
このため、各メーカー、以下にかまど炊きに近づけるかを競います。
アプローチは、さまざまでしたが、「IH」「加圧」「熱伝導率、蓄熱性がいい内釜」「プログラム」で各社争ってきました。

この時の中心は、5.0〜5.5合炊き。一番大きな理由は、まだユーザーが若かったためです。要するに日に、3〜5合食べていたからです。

ところが、年を取ると食べなくなります。
その上、炊き立てが一番美味しいですから、少量を食べるだけ炊くようになります。
私もいろいろ試しましたが、1合を炊く場合、5〜5.5合炊きよりも3〜3.5合炊きで炊いた方が美味しいです。

では、彼らは、3〜3.5合炊きにするのかと言うと、ほとんどの人は5〜5.5合炊きを使います。
理由は、孫に美味しいご飯を食べさせたい。
子どもは自分にとても正直です。美味しいとお腹がはちきれんほど食べます。そして、「次もね。」とおねだりします。本当に愛くるしい。

このための5〜5.5合炊きなのですが、孫と食べるより、自分たちだけで食べることの方が圧倒的に多いので、不満が残ります。

可笑しな日本語のように聞こえるユーザーニーズが出る理由です。

 
■3.5合炊きと5.5合炊きで1合を炊くと何が一番違うのか?
一度、3.5合炊きと5.5合炊きで炊いて味比べをしたことがあります。
美味しかったのは3.5合。この差はどこから来るのでしょうか?

一つは、内釜のサイズです。5.5合炊きより3.5合炊きの内釜は、ひとまわり小さいのです。小さいと、同じ水でも深くなります。つまり、踊りやすいわけです。5.5合釜で1合炊くと、お米は縦方向3粒しか並びません。その位浅いのです。

3.5合用の内釜は、5.5合用の内釜にすっぽり収まる。
写真は象印「炎舞炊き」の内釜


それが4〜5粒になります。つまり25%以上深くなるわけです。当然、踊り方も変わってきます。スゴく大きなポイントです。

また、釜の中の水面上の空間の差も大きいです。空気は、水ほど保熱が良くありません。要するに、余分に加熱しないと、温度差がでるわけです。

この物理的な差をきちんと詰めない限り、大きな釜で少量炊いても美味いということにはなりません。

 
■象印、タイガー、日立、それぞれの対応
象印は、3.5合釜を基本に炊ける最大量をアップしました。少量をいじらずに、最大容量をいじるという考えです。ただ、今まで「炎舞炊き」に3.5合炊きはありませんでしたから、無理矢理の設計ではありません。

象印の「極め炊き NW-ES07」 4.0合。
3.5合をベースに、ギリギリまで大容量化したモデル


で、出来たのが4.0合炊き。3.5合炊きとは0.5合。茶碗一杯分の差です。

内釜が5.5合より小ぶりなため、IHコイルは2パートに分けられている。


 
タイガーは、内釜が土鍋であることを最大に活かしました。内側に凹凸を付け、陶製のフタを載せることにより、少量炊きにベストな空間を確保しました。土鍋は一度温まると、その保温力はスゴいモノがあります。このため、温度を落とさずに炊くことができます。

タイガー 「炊き立て JPG-S100」 5.5合
一合を極めたとする「一合料亭炊き」モードを有する。


ポイントは、内釜に段を設け、中ブタを使える様にしたこと。
上部空間を制限できる上、土鍋中ブタなので、蓄熱性が高く、
ヒーティング効果がある。


タイガーの土鍋内釜。土鍋部分は、土鍋の7割シェアを持つ萬古焼が使われている。


 
日立は、フタにヒーターを入れ、5.5合で1合炊くときに出てくる温度低下に対応します。

日立 「ふっくら御膳 RZ-W100CM」 5.5合炊き
去年と様変わりしたモデル。


「外硬内軟」は日立の造語。美味いお米の特長をうまく言い表している。
少量炊きは、ヒーティングプログラムにより対応。


「鉄」が基本。


全てを食べたわけでないので、まだ、どれが良いか分かりません。
近々全部食べて、レポートしたいと考えております。

しかし、多量釜で少量炊いても美味いという、ある意味滅茶苦茶な、矛盾した要求を見事に対応したのも事実。

「高級」炊飯器という、開発費が許されたカテゴリーならではの展開だと思います。お金を掛けられる開発、そして明確な目標を持った時の日本メーカーの課題突破力には目を見張るモノがあります。

2019年の炊飯器トレンドだと思います。

 
商品のより詳しい情報は、以下のホームページにてご確認ください。
象印マホービン:http://www.zojirushi.co.jp タイガー魔法瓶:http://www.tiger.jp 日立:https://www.hitachi-gls.co.jp
 
 

#調理家電 #炊飯器 #2019トレンド #象印 #極め炊き #NW-ES07 #タイガー #炊き立て #JPG-S100 #日立 #ふっくら御膳 #RZ-W100CM #生活家電.com

2019年7月14日

タグ: , , , , , , , , , , ,