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写真とグラフで見るスティック型掃除機の現在(前編)


2018年3月、ダイソンは今後の開発リソースをスティック型掃除機に集中させることを宣言。実販売でも、スティック型が、キャニスター型を抑えるなど、掃除機の主役はスティック型になりました。このスティック型2018年モデルを写真とグラフで紐解いてみたいと思います。
■スティック型掃除機の3つのポイント
お題目のように「吸引力」が重視される掃除機ですが、今ドキのスティック型の場合、他にいろいろなところがポイントです。

1)使い勝手 「重さ」「バランス」
2)吸引力 「モーター」「バッテリー」「ヘッドサイズ」
3)密閉空間での使用 「排気フィルター」

 
■使い勝手 「重さ」「バランス」
まず、スティック型掃除機は、いろいろな形があります。が、元々はハンディ型掃除機から進化したものです。大きくは、次の2つに分類されます。

1)自立型 ホウキ、モップの様に、一番重たいハンディ掃除機の部分を下にレイアウトしたタイプ。具体的には、スティック型掃除機形の巨大なアタッチメントに、ハンディ部分をはめ込む構成です。
メリットは、手に荷重がかからないため、極めて楽なこと。
スウェーデンの大家電メーカー エレクトロラックスが採用している方式です。

エレクトロラックス
Pure F9


取っ手あり


2)手持ち型 ハンディ掃除機に、パイプ、ヘッドなどのアタッチメントを付け、スティック型掃除機にしたもの。
メリットは、手に近いところに重心があるため、掃除機を振り回しやすいこと。
ただし、ハンディ型と同様にずっと手にかなりの荷重がかかる。

そして、手持ち型は、「握りしめ型」と「手提げ型」の2つがあります。

2−1)手持ち・握りしめ型 典型例は、ダイソン。ダイソンはDC-35で、スティック型掃除機デビュー以降、一貫してもの方式を採用している。常にある程度の力を入れているので、掃除機のコントロールがし易い。その一方、疲れるのも事実。

ダイソン V10 フラフィー


赤いのがパワースィッチ


2−2)手持ち・手提げ型 日本のメーカー、シャープ、東芝、日立が採用。持ち手の自由度があるため、人を問わないところがあります。

日立 パワーブーストサイクロン PV-BFH900


 
さて、こう書かれても非常に分かりにくいですね。
と言うわけで、地上から60cmの高さ(168cmの筆者が掃除機を持つ高さ)で、手に掛かる重さを計ってみました。

結果をグラフ化すると、次の様になります。

まず、手に掛かる重さですが、1kg、1.5kgは、それぞれペットボトルの重さをイメージしてください。

「自立型」は、手荷重が1kgを切るように設計されています。これは楽です。今、普通の人が持ち歩くモノの中で最も重いのは、パソコンでしょう。気合いを入れずに常に持ち歩ける重さは、約1.0kgだと言われています。自立型は、それを切っているわけです。

内、軽いのは、エレクトロラックスの「エルゴラピード リチウム プレミアム」です。僅かに500g。最新のパッド(スマホのデカいやつ)並みの重さです。逆に同社の「Pure F9」の本体は、4.1kg。持つのがいやになる重さです。(5kgの米袋を買って持って帰る時をイメージしてください。)

それでも手に掛かるのは約1kg。自立式最大のメリットです。F9はエルゴラピードに比べると「鈍」と言ってもイイかも知れません。しかし、ヘッド周りの作りが良く、上手い感じで取り回しができます。このためどちらかと言うと「ゆっくり・丁寧に」という感じで掃除できます。

F9のヘッド。
巨大な車輪で、取り回しは軽く、
フレキシブルホースでの接続なので、ヘッド浮きなどもない。


 
次に軽いのは「手持ち・手提げ型」です。これは本体の軽さがそのまま出てきます。しかし、本体が軽いと言うことは、何か特殊な技術を入れているか、一部機能を省略しているということです。

シャープ採用のカーボンパイプ。
特別な技術の例。


一番重いのはバッテリーです。バッテリーのセル数を少なくすると稼働時間は短くなりますが、取り回しやすい。どちらを優先させるのかはメーカー都合です。

 
今、一番重いのは、「手持ち・握りしめ型」です。ここの主、ダイソンは、元々紙パックの吸引力が落ちるのを不服として、サイクロン方式の掃除機を作ったわけですから、バッテリーの技術も上がってきた現在、全部入りのパワフルな掃除機を出しています。ダイソン V10 フィラフィーは、その1つの頂点モデルです。

本体重さ:2.58kg。エルゴラピードが、2.5kgですから、特別な軽量化をしない限り、スティック型掃除機はこれ位の重さになりそうです。

しかし、パナソニックも、同じ形式で、本体重さ、2.5kgですが、手持ち重さに一寸差が付いています。これはどうしてでしょうか?

 
■重いモノを持ち手に寄せたレイアウト
先ほど、バッテリーが重いと書きましたが、もう一つ重いものがあります。モーターです。ほとんどのメーカーは、手、バッテリー、モーター、サイクロンシステムと順でレイアウトします。バッテリーが手の近くにあるのは、一番重いので手から離れれば離れるほど重く感じられるためです。

パナソニックも、基本このレイアウトです。
ダイソンはここでレイアウトに一工夫します。V10の前のモデルは、V8です。これモーターの名前。V8なんて、アメ車のエンジン形式のようですね。ちなみにV9は例のドライヤーに搭載されたモーターがそうです。

話しが脱線しました。元に戻します。

V10でダイソンは、このモーターとバッテリーで使用者の手を挟むレイアウトを取りました。重いモノが近くにあるという鉄則を貫くわけです。

方や、パナソニックは、バッテリーは使用者の手の下ですが、モーターとサイクロンシステムは手の前。ダイソンより距離があります。

この差が、ダイソンの方が手荷重が軽い理由です。

 
■パナソニック スティック型掃除機 MC-SBU820J、もう一つの弱点
新製品「パナソニックの新型スティック型掃除機。ハイスペックと第一印象のズレ。」に書きました通り、この掃除機には、もう一つの使いにくさがあります。

それは握りしめる理由がないと言うことです。普段、手提げを持つときの握りはどうしていますが、すごく軽い握りしめです。手提げ鞄を持つとき、手持ち・手提げ型の掃除機を持つときは、そうして握ります。

そうでないと疲れてしまうからです。

 
その逆がダイソンです。トリガー(引きがね)状のスィッチを用いることにより、常に軽い、手提げ型より、強い力をかけるように設計されています。

しかし、パナソニックのMC-SBU820Jは、そのようになっていません。
押しっぱなしのスィッチです。

結果、ある程度力を入れて握っている場合はいいのですが、手提げ型位力を抜くと手首が曲がり、手が上プレートに当たります。結果、握りしめるわけですが、ダイソンのように常にトリガースィッチを引いていなければならないわけではないですから、また軽くもってしまう。で、当たる。不快なのでまた握る。

力を入れている状態。


手提げレベルまで、力を抜いた状態。
上プレートに当たっている。


掃除機は、だんだんキレイになっていくので、気分が高揚するモノですが、かなり半端となります。

最先端の技術がギューギューに詰まっているのですが、詰めが甘い感じです。

⇒魂半に続く

 
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2019年1月2日

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