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創作落語で語る『平成エレキ商い自由化こぼれ話』


わかったようで、分からない電力小売自由化。
今回は、この筋道を落語仕立てでお話ししようかと、思います。
まずは、熊さんが、横丁のご隠居のところに来たところから。
■電力自由化がわからねぇ
「ご隠居さん。」
「おや、熊さん。どうしたい。大寒だから、表じゃ寒い。上がって茶でも飲みなさい。」

「ご隠居のお茶は美味いですね。表が寒いので、特にそう感じますね。
顔は不味いが、お茶はほんとうに美味い!」
「褒めてるのか、貶しているのか、わからないね。
上喜撰上等のお茶。泰平の眠りを覚ます蒸気船(上喜撰) だった四杯で夜も眠れず の落首でお馴染み。というお茶だよ。
まぁ、いいや、今日は何の用だい。」

「この間、電力小売自由化になったでしょ。まぁ、それで携帯屋さんまでが、売るようになっちゃったんですがね、これの理由がよくわからない。東京電力と言えば、発電所から、全部持っていますよね。どう考えても、東電から買うのが一番得な様な気がするんですがね・・・。
でも、そうなってませんよね。
悩んでたんですがね、かかぁがお前さんの頭だと考えても無駄だから、物知りのご隠居に聞いてらっしゃいというので聞きにきました。
教えてください。」
「ほほう、熊さんが電気に興味を持つとは珍しいなぁ。」

「昔は地下鉄をどうやって入れたのかで、夜も寝られなかったんですが、今は電気代ですね。寝られない。しかもお茶が上喜撰なら、ますます寝られない。」
「わかった、わかった。じゃ、分かりやすく説明しよう。
まず、自由化をすると何がよくなると思う。」

「値が下がる。」
「ほう、分かったような口ぶりだね。何故、値が下がる。」

「そりゃそうでしょうが。誰でも商売ができますからね。他の連中を出し抜こうとすれば、工夫が必要ですよ。値を下げたり、サービスをよくしなければ、売れませんよ。」
「では、そのためには、何が必要じゃ。」

 
■競争が、いいサービスを生む
「そりゃ、安く仕入れることですよ。」
「そうじゃ。それには、どうする。」

「電力を安く売ってくれることですか?」
「その通り。そのためには、「発電」「送電」「販売」が自由に選べることが重要じゃ。電力会社は、これを全て行うことができ、それで日本国民の需要を賄ってきたわけだが、その3つを全て揃えることを参入条件にするとどうだ。規模が規模だけに、ほとんど参入できない。
このため、事業をパート、パートに分け、どこにでも随時参入できるようにしたわけじゃ。
今回は、その「販売」の自由化ということじゃ。」

「なるほど。だけど、それがどう携帯屋と結びつくわけで・・・。」
「じゃ、逆に聞くが、東電の販売ってどうだった?」

「販売って言われましても、引っ越してきた時に、電話して、二三やりとりして、それから支払い続けるだけです。盆暮れの挨拶もないです。」
「平成の御代に、盆暮れはないだろうが、いう通りじゃな。
逆に、表の魚屋はどうだ。」

「勝公のところですか。朝早くに仕入れにいって、それから、お得意様が来る度に、包丁を振るっていまさぁ。彼奴は、お客さまの好みも心得ていますし、腕も確かですからね。
一時期博打にハマってあの時はダメかと思いましたね。そのあげく芝浜で小判の詰まった財布を拾ってきたとかで騒動を起こした時もありましたが、すっかり立ち直りましたね。通り向かいにスーパーができても客足は途絶えません。」
「東電の売り方と比べて、どうじゃ。」

「そりゃ、サービス満点でさぁ。勝公は目が効きますからね。旬ものを仕入れてくる上に、大漁の時は、安く売ってくれる。に対して、東電は、こちらが電話しないと動いてくれませんからね。」
「そう、それが東電の弱点じゃ。
今まで、関東の住人は、無条件で東電から電気を買ってたからなぁ。
勝公の店は、昔から人気ある魚屋だが、スーパーが出来てからの彼奴の店の充実ぶりはスゴいな。頼むと配達までしてくれる。
しかし電力会社は自由化までは、各エリアに1つと決められていたから、顧客全員に対し満足の行く営業をするための人数を持たずに済んできたいのじゃ。」

 
■電力の社会的ポジショニング
「なるほど。」
「そしてもう一つの問題がある。」

「何ですか?」
「ところで熊さんや、お前は憲法を読んだことがあるか。」

「憲法って、一部は知っていますが、全部を読んだことはありません。
新聞によく出てくる第9条の「戦争の放棄」は有名ですからね。」
「内容の是非は置いておくとして、日本は法治国家。そのあり方をまとめたモノが憲法だ。
一度は読んでおいた方がいいぞ。
その中の第25条に『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』
とある。国の社会福祉は、この条項からでているんじゃが、電力もこれに関係ある。」

「どこが関係あるんですか?」
「昔から、食う寝るところに住むところ、とあるだろう。この間、生まれた寿限無本名は、寿限無寿限無五劫のすり切れ、海砂利水魚の、水行末 雲来末 風来末、食う寝る所に住む 所 藪柑子 ブラコウジパイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンのグーリン ダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助くんの名前の中にも入っている。
健康で文化的な最低限度の生活というのは、それを保証するものだが、この寒空、家だけあってもだめだろう。暖房がないと、蒲団の中でブルブル震えることになる。これは、文化的な生活とは言えない。
住むというのは、水、エネルギー(電気、ガス)というインフラが必要ということじゃ。
で、これらは安くなければならない。そうでないと、最低限の生活費で使うことはできないのじゃ。」

「そりゃそうですね。じゃあ、電力は安いってことですね。」
「そうじゃとも言えるし、そうでないとも言える。」

「それは何故ですか?」
「使用量が多くなると、電気料金がどんどん高くなるように設定されている第三段階料金の事。最低限の生活に必要とされる第一段階と比べると、1kWh当たり10円も高い。からじゃ。
これはエネルギーのない日本だから、無駄に使うなと言うことでもあると思う。
その上、東日本大震災で、安く、長く、電気を供給できるとされた原発が事故を起こしたわけなので、今火力を増やして対応しているが、それも東電には不利じゃ。」

「何故です。」
「ある程度の、価格で提供しなければならないのに、安くならないとしたらどうする。」

「口をつめるしか、ないですね。」
「今の東電がそうじゃ。原発の保障も必要で、有り体に言うと、金がないわけだ。
構造改革にもお金が要るし。東電の問題は、営業をと予算ということじゃ。」

 
■携帯屋が目論むWIN WINのビジネスプラン
「じゃぁ、何んで、携帯屋なんです。」
「さて、そんな時に、東電に提携を持ちかけたのは、ソフトバンクだ。
それは、ソフトバンクのビジネス方法に掛かっている。
熊さんも知っての通り、携帯は契約者数でビジネスの大半が決まるため、CM、割引合戦がスゴいだろう。」

「そうなんでさー。先ほども、駅前の3軒の前を通りましたが、学割だの、ギガ割だの書かれたチラシを貰いました。あすこは、年中お祭り騒ぎをしている様なものですね。」
「そう、それができるほど、お金持ちだと言うことだ。
この、お金持ちで、町のあちこちで店舗を持っている携帯屋さんは、東電の弱点、お金が少なく、営業部隊がないところを埋められるというわけ。」

「でも、携帯屋さんの得はなんですか?」
「正解か、どうかは分からんが、憶測になるが、こうでないかと思っている。
一つは、東電と組むと、電力の安定供給が可能ということじゃ。なんたって関東一円に電力を供給していたわけですから、ここと組めると、供給問題はまぁないということだ。
これは来年の話になるが、ガスの自由化も始まる。現在の火力発電はガスで行うから東電はガスもタップリ持っている。
東電と組むと、ガスの自由化の時も、プラスが多い。ということじゃ。」

「戦いとは、二手三手先を読んでするものですね。」
「なんじゃ、そのシャア機動戦士ガンダムに出てくるだ人気の敵役。戦場で目立ちに目立つ赤いモビルスーツを駆る。また、若いながら、その独特の気障ったらしいセリフは、ファンなら一度は口にしたことがあるはず。のようなセリフは。」

「それは置いておくとして、続きをお願いします。」
「携帯屋は、携帯事業で利が出るうちに、やっておきたいことがある。
サービスのコンビニ化だ。」

「でも携帯の料金、あっしゃぁ、コンビニで払っていますが・・・」
「そうではなく、いろいろなサービスの総合受付。
コンビニは、店舗という形態を取るために、接客は説明ではなく、どちらかというと販売に重きが置かれる。そうではなく、サービスは、その中身を丁寧に説明、納得して貰うことが重要。
携帯の営業は、それをしてきたわけだ。」

「なるほど。」
「携帯の説明だけするより、電気なども合わせて説明した方が、有利なのは言うまでもない。
通信に、エネルギー、これに保険、お取り寄せ。この様なサービスを全て扱いたいのだ。」

「全てですか。欲張りですね。」
「今のビジネスは、喰うか喰われるか。欲の強いのも、才能のうちだ。」

「ダイソンの吸引力が強いものも同んなじなんで?」
「話を茶化しちゃいけない。ま、これが携帯屋が参入している経緯じゃ。」

 
■ポイントは、会社側が有利
「まだ、分からないんで。」
「どんなことかな。」

「割引、割引というんですが、電気料金ではなく、別のモノを値引きして、そう言っている気がすんですが・・・」
「そうさなぁ。先ほども話したが、電気は最低限のエネルギーだからなぁ。値下げの余地はかなり少ない。
その上、余剰金がない。だから携帯会社と提携したわけだからな。」

「それと関係がありますか。」
「これ、戦うときは、どんなことに気を付ける?」

「天、地、人が重要と言いますからね。」
「よく知っているな。」

「NHKの大河ドラマを見るとき、調べたんで。」
「値引きも同じじゃ。」

「どういうことで。」
「要するに、地の利の悪い電力料金からそのまま引くより、携帯に還元して引いた方が、値引きしやすいし、ユーザーの確保も確実と言うことだ。」

「なるほどね。でも、見方によっては、携帯屋はお金ばかり出している。損じゃないですか。
それとも、広い目で損して得取れですか?」
「そんなビジネスプラン、株式会社じゃ許されないよ。
で、妙案は、一部はポイント還元にしたことさ。このポイントの平均還元率は、どの位か知っているか?」

「いえ知りません。」
「一声、30%と言われている。」

「少ないですね。」
「ここがポイント制のポイントだ。ポイントは本当のお金と違って利子を生まない。逆に会社がそのポイント分のお金を短期投資に廻せばどうだ。」

「小銭が稼げますね。」
「そう、ユーザーのポイントの持ち分は増えずに、会社の現金が増える。支払いをポイントで行うのは、会社にとって非常に都合のよいシステムなのじゃ。
しかも、使えるモノが限られているため、なかなか使い難くもある。」

 
■ユーザーは、自分のスタイルにあった電力プランを探すことと、契約条件の確認が重要
「そうなると、損をするのはユーザーですか。」
「そうではないだろう。少なくとも現金にせよ、ポイントにせよ、ユーザーは実入りがあるのだから。損とは言えない。が、大幅に得ともいえない。」

「となると、今の話は、皆「得」というものですか? あっしは、大岡裁きの三方一両損のように、得するためには損がでるのが、当たり前だと思いますが・・・」
「損は見えないところに隠れているものじゃ。
契約というのがそうじゃ。約束の条件に反すると、違約金を取られる。」

「やっぱそうですか。タダでお金が舞い降りるわけないと思った。」
「でも上手に使えば、節約になるのも事実。そのためには、嫁さんと話して、一番自分の生活にフィットしたプランを選ぶのが重要ってことだ。」

2016年1月24日

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