新製品

いい一日を過ごせる朝食を貴方に!
バルミューダの新家電は「トースター」


直流扇風機を大ヒットさせたバルミューダ。
以降バルミューダは空調家電を中心に商品展開をしてきました。
しかし、今回より「Hello Kitchen!」と題し、新しいカテゴリーへの挑戦が始まりました。
熱気溢れる会場で行われた発表会は、寺尾氏の体験談から始まりました。

■寺尾氏の感じたこと
寺尾氏が、いろいろな家電を作ってきて感じたのは、「確かにモノは性能や機能で評価されることが多い。しかし重要なのは、性能や機能ではなく、気持ち良さや心地よさといった『良い体験』を提供すること。数値で測れるものより、測れないものの方が重要であることが多い。」ということです。

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発表する寺尾氏


そして話は、17歳のスペイン旅行に移りました。
1991年の頃だそうです。

欧州旅行に初めて行く寺尾氏は、第一日目、スペインはアンダルシア州マラガ県ロンダを目指しました。

スペインはヘミングウェイのファンだったから、ロンダは最古の闘牛場があるからだそうです。
まぁ、無謀と言えば、無謀な旅行といえますが、バイタリティー溢れる寺尾氏らしいといえば、らしいと思います。

しかし、ロンダは遠かった。
町の郊外に着いた時は、すっかりお腹が空いていたそうです。
でさらに町中へ行くのに30分。
こうなるとペコペコですね。

町中のパン屋から、焼きたてパンのイイにおいがしてきたそうです。
スペイン語が話せない寺尾氏ですが、パン屋さんと交渉し、丸い田舎風のパンをゲット。
泣きながら食べたそうですが、とても美味しかったそうです。
食べ物はエネルギーですからね。
力が沸いてきたそうです。

こういう体験を味わってもらえないか?
家電で、そんな体験を一番味わえるのは、間違いなく調理家電ですね。

 
寺尾氏は、朝、パン食だそうです。
で、手がけたのは「トースター」というわけです。
メーカーの創始者は、自分のためにモノを作るわけですからね。

 
■豪雨だったから、美味しかった!・・・って何?
P1020462バルミューダ社員と、小金井公園で、バーベキュー大会をした時だそうです。
土砂降りだったそうです。
社員には、「次はトースターに挑戦する」と言った後だったそうで、社員の一人がパンを持ってきたそうです。
で、焼いたところ、スゴく美味しかった!!

そして、後日、それを再現しようとしたが、ことごとく失敗したそうです。
つまりそこまで美味しくなかった!

 
ある社員が思い出したのは、「あの日は蒸していたなぁ。」ということ。

 
開発は、ある意味「視点」の問題です。
どこに着目するかで、見方がグンと変わります。

 
こうしてできたのが、「スチームテクノロジー」です。

 
■スチームテクノロジー
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バルミューダ THE TOASTER(ザ・トースター)
22,900円(税抜)、6月中頃出荷開始。
先行予約はコンラッド・ショップ、蔦屋家電、バルミューダ・オンラインストアで受付中


トースターに「スチーム」なんて!
と思った人も多いと思います。

ポップアップトースター、オーブントースター、いろいろと出てきましたが、今までスチームを使ったという話は聞きません。

DSCF2546バルミューダの理屈はこうです。
使う水は少量、5cc。
これがパンを取り囲みます。
バルミューダは「パンの表面が薄い水分の膜で覆われる」と表現しています。

以下、バルミューダのカタログより抜粋します。
「水分は気体よりもはるか速く加熱されるため、パンの表面だけが軽く焼け、パンの中に水分が閉じ込められます。ここから本格的なヒーターの制御がスタートし、焼き上げが始まります。」

余談ですが、個人的には、蒸気密度の関係で外にある蒸気が中から外に出ようとする蒸気の邪魔をしているのではないかとイメージしています。
といいますのは、例えば160℃で水蒸気の比熱は1885J/kg℃、空気は1019J/kg℃ですから、同じエリア内にある時、水分(水蒸気)の方が速く加熱されることはないからです。

これは見つけた現象に対する合理的な説明の付け方だけの話ですので、バルミューダさんの製品を否定しているわけではありません。
重要なのは、その現象を見つけたことなのです!

 
■細やかな温度コントロール
さて、話を本題に戻します。
熱により、食べ物がこんがりきつね色になることを、化学的にはメイラード反応といいます。
この反応は、旨み成分、香り成分を増やす働きがあります。

旨み成分の例は、お肉ですかね。
焼くと多くの場合、生で食べるよりも美味しいし、消化にも良いですからね。
世界で、生の文化、刺身を持つのは日本位のものです。

次に、香り成分の例は、コーヒー豆です。
コーヒー豆は焙煎して、初めて複雑な香りを身にまといます。
これもメイラード反応といえます。

 
美味しく焼くには、ここをどこまで制御できるのかに掛かっています。
バルミューダのトースターは、160℃でメイラード反応をじっくり起こさせ、最後温度を上げ、焦げ目をちょっとつける方法です。2015年05月28日08時38分44秒 P1020480この温度コントロールは、トースト以外に、トースターとしてチーズトースト、フランスパン、クロワッサンの3つのモードを持ちます。
昨今よく行われる、冷凍庫でパンを保存した場合は、そのモードに合わせ、タイマーを1〜2分加算すれば美味しく焼けるとのことです。

 
後、これに加え、クラシックモードがあります。
これは普通のオーブントースターとして使うモードで、300W、600W、1300Wと切り替えられます。

 
■味は、行列のできるパン屋さん@吉祥寺
P1020463武蔵野市吉祥寺は、お洒落な街です。
そこに「ダンディゾン」という行列のできるパン屋さんがあります。
今回はその味を徹底的に心に刻みつけて開発したそうです。

また、厨房も見せてもらい、「電気」釜だったこと。
そして「スチーム」機能が付いており、ベイクとトーストとで差があるとした上でも、少し自信がでたそうです。

 
■どっかで見たデザインは、あのアニメの・・・
P1020460ところで、このバルミューダのTHE TOASTERのデザインですが、どこかで見た記憶はないでしょうか?

そうヨーロッパで使われている石釜の扉ですね。

もう少し空想力がある人なら、分かるかも知れません。
ジブリの「魔女の宅急便」の中で、おばあさんと一緒にキキが古い石釜でニシンのパイを作るのですが、その古い石釜がモチーフです。

 
■試食タイム
最後にトーストの試食をしました。
白パンですが、正直、なかなか美味しい。
普通のトーストが、全体的にサクサクした感じだとすると、確かに外側サクサクの内側モチモチですからね。
映画「ブルース・ブラザース」で、何も付けないトーストが好きな弟分を演じたのは、ダン・エイクロイドでしたが、このレベルだとまんざらでもないような気がします。

次はチーズトースト。
こちらは掛け値なく美味しい。
チーズの焦げも、食欲をそそります。

寺尾氏の好物でもあるそうです。
寺尾氏のお勧めレシピは、これにハム、玉ねぎなども加えるので、どちらかというとピザトーストに似ますが・・・。

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左)普通の食パンに、普通のとろけるチーズをのせる。2枚同時に焼けるタイプ。
右)専用5ccカップで水をセット


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絶妙な焼き加減! 美味しそうを画にした状態!
口元に寄せると焼けたチーズの香りが素晴らしい。美味しくいただきました!


そんなにゆっくりしていられない朝に、ちょっと美味しいモノを食べると元気が出てきます。
このため価値ある機能かと問われれば、十分にあると思います。
ただし、定価が22,900円(税抜)ですから、ちょっと高めの値付けでもあります。

 
■成否を分けるのはクラシックモード?
トースト単体として考えると、22,900円は高い。

が、オーブンとしても使えるわけですから、その目で見るとどうでしょうか?
実は、ここは未知数です。
まず、THE TOASTERの仕様を確認してみましょう。

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THE TOASTERの内部構造図。
確かにトーストの焼き加減は絶妙だが・・・


オーブンの場合、重要なことが2つあります。
1つは、ヒーターのパワーが強いこと。
もう1つは、熱伝導が均一であること。

このため、最近注目されているのが「コンベクション(対流)オーブン」。
熱の対流を風により強制的に作り出すことにより、熱を一定にするオーブンです。

また、ヒーターも長さを確保し、うねらせるなど工夫をしています。

 
さて THE TOASTERはどうでしょうか?
正直、未知数です。
ただし、ヒーターの形状などを考慮すると、熱量を必要とする料理には少し足りない様な感じがしますが、これはやってみないと分かりません。

ただし、寺尾氏は「いろいろなレストランから、シグネチャー・メニュー(看板メニュー)をもらえることになっいる」としており、順次サイトにアップされるとのことです。

 
パンが美味しくトーストできるのは事実です。
そして、普通の料理も、ということになりますと、そうですね。
この価格もありだと思います。

 
しかし、今回一番大きなことは、トーストするという営々行われてきた行為に、まだ一石を投じる余地があったということです。
そして、それを掘り下げたということです。

これは大企業で「マーケティング」のテクニックを持っている人には、まず出てこない発想です。
理論ではなく五感。
そして理屈をこねる前に、とにかくモノを作り上げてしまう。
そういう意味の力強さを持った製品だと思います。

 
商品のより詳しい情報は、バルミューダのホームページにてご確認ください。
http://www.balmuda.com/jp/

2015年5月28日

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