思うこと

ネット通販だけの家電が増えているが・・・
メーカーの思惑とユーザーの要望は並び立つか?


最近、新しい製品を自社のネットストアだけで売るという手法をとるメーカーが増えています。
消耗品などがある家電では、本体はいろいろな所で販売しても、消耗品はネットでお願いということも言われます。
この販売方法の是非は置いておくとして、今後の店の役目を見てみようと思います。
■お店の役目
お店の役目は3つあると思います。

1つめは、「商品情報発信」です。
2つめは、「販売」です。
3つめは、修理を含む「サービス」です。

店により、3つの割合が異なりますが、この3つがポイントになります。

 
■量販店と町の電気屋さん
ヨドバシカメラ、ビックカメラに代表される量販店は、「商品情報発信」「販売」が魅力です。

特にヨドバシカメラ、ビックカメラの「商品情報発信」はスゴいですね。

日本で初めて「HD DVDレコーダー」が発売された時、初めて置かれたのは秋葉原のヨドバシカメラだったと記憶しています。
日本初ということで、会社の帰り、まわり道をしてヨドバシによった記憶があります。
PM11:00代のニュースでも、ヨドバシの店頭が茶の間に流れました。
商品情報発信力の中、「速さ」「独自性」を有しているわけです。

また、何度か書きましたが、店舗は家電のデパートと言うより、「万国博覧会」。
テーマ別にきちんと並べられた家電。
体感することが必要な商品は、実際に使うことも可能です。
商品情報発信力の中、「多種」「体感」を有しているわけです。

そして店員の質です。
お願いすると丁寧に説明してくれます。
全てではないですが、押し並べて高いレベルにあります。
商品情報発信力の中、「わかり易さ」も有しています。

 
次は販売です。
まずは「安い」。そのうえ「ポイント」が付きます。
ポイントは、次の買い物から使えます。
安い上に更に値引き得点があります。

 
それに対し町の電気屋さんは、違いますね。
どちらかというと「サービス」「商品情報発信力」に力を入れています。

高齢者が増えて行くと、段々家電との距離は離れていきます。
LED化したので、もうじきなくなると思いますが、電球の付け替えは定番サービスですね。
今の照明は、天井に付いていますので、この照明を変えるには、脚立が必要です。

決して日常使いするモノではありませんから、戸惑う人も多い。
そんな時、電球を定額で買うと、付け替えのサービスを行ってくれるのは便利です。

行くと電球だけでは終わりません。
あれも、これも、とお願いされ、サービス料が手に入ると言うわけです。

そんな時に、興味ありそうな新しい家電の話をして、次の商売に結びつけることもします。
日本で大画面TVが普及した背景の1つです。

 
■ネット販売の強み
ネット販売の強みは、選択さえできていれば、24時間発注でき、家まで届けてもらうことができ、しかも「安い」ということにあります。

価格.comというホームページがありますが、スゴいですね。
ありとあらゆるモノの安い価格が分かります。

アマゾン、楽天も似ています。
「品揃え」と「安さ」がネットの特徴ですね。

 
■今の主流はハイブリッド買い

実は今、割と多いのが店とネットのハイブリッド買いです。
要するに店で実物を確認、決めて、ネットで一番安い価格で買うわけです。

逆にいうと、ネットだけで決めて買うのは難しいということです。
できれば、実物を見て納得した上で、買いたいわけです。
私も、ネットで買うのは、素性のわかっているモノです。

逆にいうと、身の回りにキチンとした情報がないと、ネット買いは難しいともいえます。

 
■メーカーの防御策
メーカー側からすると、できる限り高く買って欲しい。
そして多く売りたい。
店、ネット側からいうと、できる限り少しでも多く売りたい。

ちょっと違いますね。

そのためでしょうか?
最近はメーカーのネット販売を中心に、『ルート限定販売』が多くなっています。

メーカーの防御策の1つでしょうね。

 
■ユーザーに取り、イイ事なのか?

この対応は分からないではないのですが、ユーザー益になっているのでしょうか?
必ずしもそうではないと思います。

一般に商品情報は、多くの場合最終的には「口コミ」化を狙います。
それができると、「定番」化できる可能性があるからです。
要するに「強い商品」となるわけです。

ところが、そのためには、多くの人がそれを「見る」必要があります。
冒頭に書いた通り、その役目をするのが「店」なのです。

 
ネット情報だけで、見ず知らずのモノをネットで買うかというと・・・。
買いますね。
ただし、安価で、性能他が検討つく場合に限られますが・・・。

 
さらに言うと情報が、ユーザーまで届かない場合もあります。
お金がお金を生むように、情報が情報を生みます。

店頭陳列というのは、巨大な情報です。
「百聞は一見にしかず」という言葉がある位です。

それ程、実物を見て触れるという体感経験は強いのです。

 
■ユーザーが欲しい情報を、メーカーは出せるか?
メーカーが情報の第一発信者であることは、間違いありません。
しかしその言葉はユーザーに伝わっているでしょうか?

余り伝わっていないと思います。
というのは、ユーザーは実は「思い込み」を加味し、メーカー発信の情報を『感じ取ること』が多いからです。

では、メーカーで発信したい情報はどうやって出せばイイのでしょうか?

メーカーで一番、雄弁に話をするのは、経営者でも開発者でもありません。
『商品』です。

製品ではありません。商品です。
似た言葉ですが、私は違うと思います。

商品は、単なるモノではなく「商える品物」なのです。
価値あるモノなのです。

 
商品にモノを言わせるためには、実物を見てもらうことが大切です。
イイ商品は、商品自体が語るからです。

が、商品にも個性があります。
饒舌な商品もあれば、じわじわと持ち味を発揮する商品もあります。
この雰囲気は、実物なればこそ感じられます。

 
多分、現在のユーザーの買い方がハイブリット化しているのは、理由が2つあると思います。

1つ目は、やはり現物を見て決めたいということです。
これはご納得頂けると思います。

2つ目は、ネット検索だけでの購入は、かなりし難いということです。

例えば、ネット販売で、洗濯機と検索するとドッと出てきます。
写真で、これは良さそうと見ると、10kg品が欲しいのに6kgだったりします。
つまり条件設定が難しいということです。

ところがメーカーのホームページを見に行くと、整然とラインナップ順に並んでいるのですが、普及価格帯は余り特徴がないように感じられ、自分の欲しい条件にマッチしながら自信が持てない・・・。
また、他社比較というのはできません。

店員が居れば聞けるのですが・・・。
となりかねません。

 
メーカーの正当な利益を確保するための自社ネット販売中心の考え方も分からないではないですが、ユーザーが納得できるだけの情報を出しているかと言われると一寸疑問なところもあります。

「商品に実際に触れることなしに買う時代」といわれますが、本当にそれは成立するのでしょうか?
今の状況で、そう言い放ってイイのでしょうか?

今、販売という行為は大きな岐路にかかっていると思います。

2015年5月6日

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