思うこと

“HEMS” ビジネスは、誰が主役なのか?
ENEX / SEJ / 新電力EXPO展示会から


家電が口をきく。昔からある発想です。
SFは、完全オートで人をサポートする家を何度となく描いてきました。
スマートウォッチなど、今実用化が急がれているウェアラブル家電は、元々SFの小物でした。
しかし、スマートハウスの基本となるべきHEMSの動きはある意味緩慢です。
現在の状況を、一度まとめておきます。
■エネルギーがあれば・・・・
地球の歴史は、ざっと46億年だといいます。

で、色々な条件が重なり、生命体が形成されたのが40億年。
以降、主には太陽のエネルギーで、生命を育て上げます。

つまり、地球の生命体は、太陽エネルギーが姿を変えたモノと見立てることができると思います。
石炭、石油は、昔の生物が姿を変えたモノ、すなわち太陽エネルギーが姿を変えたモノとなります。

つまり、特に20世紀以降使われた、膨大なエネルギーは、何億年かはわかりませんが、長年掛けて地球に注いできた太陽エネルギーを濃縮して使ったわけです。
度が過ぎ、あるレベルの太陽エネルギーで循環するように作られていた自然は破壊されます。

それはそうですよね。
自然が許容できる量を超して、人類は経済活動を推し進めたわけですから。
これが公害です。

で、それではまだ人間という貪欲な動物の飢えは満たされません。
太陽が使っているモノと同じエネルギーに目を付けました。
「核」ですね。

ギリシャ神話では、イカルスは太陽と同じ高さまで飛べると言い放ち、太陽の怒りをかいました。
地上に落下、帰らぬ人となったわけです。

「核」も同じでないでしょうか?
「アメリカ」のスリーマイル島、「ソ連」のチェルノブイリ、そして「日本」の福島。
最先端の科学を有している国が、理由はどうあれ、こぞって失敗したわけです。

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1979 米 スリーマイル レベル5 、1986 ソ チェルノブイリ レベル7 、2011 日 福島 レベル7
注)「レベル」は国際原子力事象評価尺度。7は「深刻な事故」で、これ以上ないとされる。


日本はエネルギー資源がありません。
しかし、近代国家以前、江戸時代までは太陽のエネルギーだけで人は暮らしてきたのも事実です。
そこで、言われているのが「再生可能エネルギー」。

「再生可能エネルギー」がまだまだといわれるのは、当たり前です。
このエネルギーが集約された石炭、石油を使ってきたわけですから、集約されていないぶん「再生可能エネルギー」は扱いにくいからです。

で、そのための案が「節約」です。
その手段が「HEMS」なのです。

エネルギーが豊富にあれば、顧みられない分野です。

 
■わかりにくい個人への必要性
と、大上段にHMESが必要な最も大きな理由を書いて見ました。
世の中全体のお金の動きの様に、ピンとこないですよね。

エネルギーが少ないといって、電力料金さえ払えば、電気は買えます。
国から言われ、節電したあげく、熱射病で病院搬送された方もいましたが、ニュースになる位ですからレアケースなことは、間違いないです。
ほとんどの人は、ちょっとだけエアコン使用を控えた位です。

当たり前ですよね。
通常の生活でキュウキュウしているわけですので、「ほっといてくれ!」となります。
昭和前期なら、社会のためにという時代があったかも知れませんが、今は「個」の時代ですからね。

「個人ベースで、わかるようにしてくれぃ」といいたいですよね。

 
■個人ベースでのHEMSの経済学
あるHEMSのセミナーで経産省の人が言っていた言葉です。
「HEMSの値段は、最終的に5万円/軒。年間5000円が電気代で節約するため金額ベースで、採算が取れる・・・」と。
白物家電の耐久性は一声、10年間といわれていますので、回収した時はHEMSはどこかが壊れている!!!???
非常に割り切れません。

これが今の個人レベルでのHEMSの経済学です。

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経産省の描く、スマートコミュニティのイメージ
どのエリアをイメージしたのであろうか?


 
ところで、この余剰電力は、どこに向かうのか?
1つは、現存の電力会社の規模縮小でしょうね。
そして、現存が小さくなるということは、ビジネスの新規参入者を増やすことができるわけで、回り回って電気代も安くなるわけです。

ただし、これは確約された世界ではありません。

 
このためメーカーは最近クラウドサービスをアピールするようになってきました。
要するに買う理由を提示するわけです。

曰く、
「冷蔵庫の中身が扉を開けなくてもわかります。」
確かに便利です。
しかし、それに5万円も掛けるでしょうか?

曰く、
「家の中、温めておきました。(お前は木下藤吉郎か?)」
確かに便利です。
しかし、それに5万円も掛けるでしょうか?
タイマーあるし・・・。

正直、新たにお金を出してまで欲しいと思うサービスは、ありません。

 
■経済以外の理由
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電力メーターは、電力会社により、
スマートメーターへの置き換え中。
写真は、東電のメーター。

経済的な理由は、お分かりですよね。
HEMSの普及のポイントは、大義的には必要でも、個人的な利が見えてこないためです。

その上、余りユーザーに親密なシステムとはいえません。

この理由の1つは、まだメーカーが主体だということだと思います。
日本のメーカーの品質にかける思いが強いからです。

例えば、エアコンはA社を薦められたので、照明は家を建てる時工務店から薦められB社とします。
A社のHEMSを付けようとした場合、「B社の製品保証はしかねます。」と言われます。

最近の照明は、色々な機能が入っています。
上の言葉は、それらの機能を全て使えるようにできないかも知れないということです。
理由は、コントロールはメーカー毎、やり方が違っているためですね。

こうなると、日本のメーカーは真面目ですからね、「品質保証できません!」となってしまいます。
そうすると、全部コントロール下にあるので、「全部、我が社の製品で・・・」となるわけです。

ユーザーとしては、「自分の気に入った家電でお願い」と思っているのに、これではちぐはぐです。

 
さすがに、これでは厳しいです。

 
■HEMSの未来
と書きましたが、筆者はHEMSは必要だと思っています。
しかし、故なくお金を出すつもりはありません。

ポイントは、
●自分が持っている家電でHEMSが組めること
●自分が欲しいサービスが提供されること
の2点でしょう。

 
その解答の片鱗が、1月末にビッグサイトで行われた、ENEX/Smart Energy Japan/新電力EXPOにありました。
展示されていたのは、神奈川工科大学スマートハウス研究センターのブースです。

 
■神奈川工科大学スマートハウス研究センターとは
DSCF8492一見、大学の一施設のような肩書きですが、ここが運営しているのが、HEMS(ECHONET Lite)認証支援センター。HEMS認証支援センターでは、エコーネットコンソーシアムの会員向けに「ECHONET Lite認証支援」と「SMA認証試験」を行っています。

「ECHONET Lite認証支援」というのは、「ECHONET Lite認証の自己適合試験」と「ECHONET Lite対応実機との相互接続試験」を行うことで、ここの自己適合試験で、問題ないことがわかると、ECHONET Liteのロゴを付けることができます。
また、今まで出されたECHONET Lite対応実機との相互接続試験により、実問題がでないのかの検証も可能です。

「SMA認証試験」は、2024年までに、全世帯が使うことになるスマートメーターとの接続の認証試験です。

要するに「HEMS(ECHONET Lite)認証支援センター」で、HEMSに関する資格は全て取得することができるのです。

 
■呼びかけが変化
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古事記によると、日本の地名の
大半はダジャレといえる。
ダジャレ大いに結構です!

センター長を務める一色正男さんの話は、次のようなモノでした。
「スマートハウス(HEMSを導入した家)は、住まう人スマートのダジャレであることは言うまでもありませんのための家。
オープンなプラットホームとしてのECHONET Liteがそれを支えます。
様々なプレイヤーが相互につながりサービスを創造しましょう。」

これはどこかで、誰かが言わなければならない言葉だと思っていました。
が、実際に聞くとインパクトは大きいですね。

まだHEMSを大々的に行っている国はありません。
行われつつある国はあっても、企業が収益を確保しながらコツコツとです。

実は、メーカーができるサービスは、ある程度決まっています。
メーカーは基本ハードを生産し儲けるわけですから、ハードに関するサービスは得意です。
しかし、サービスを売るのを基本にした会社ではありません。

HEMSのサービスは、基本「省エネ」ですから、エンターテイメントに富むモノではありません。
節約も、1ヶ月 数万円何てこともありません。
数百円です。
お金は絡むのですが、少額です。

 
■将来はHEMS富豪??
HEMSは、家電をコントロールすることができますからね。
これを何らかのサービスに結びつけようというわけです。
アイディアがある人は参加できるようにしようと、いうわけです。

で、出してきたのが、「KAIT-4S -Canvas」。
何がスゴいって、プログラム言語などを知らなくても、プログラムが組めるのです。
方法は、ブロックを合わせ、日本語の文章を作るだけです。
子供でもできます。

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KAIT-4S -Canvas
左)左のリスト欄より、必要な言葉を選択。どんどんつないで文章化
右)入力すると、その通りにエアコンが動いた。完全ゲーム感覚。


 
スマホのメールアプリにLINEがあります。
その中にスタンプを使うというのがあります。
このスタンプ、絵心とアイディアがある人は売ることも出来るのですね。
中には、かなり当たっているのもあるとか・・・

多分、HEMSのサービスもそうなのでしょうね。
色々なサービスを自分で作り、販売することもできます。
人気がでてくれば、HEMSのサービスでお金が儲かります。

 
■まだ見つからないキラーアプリ
サービスを皆で考えましょうというのは、珍しいパターンです。
主体者がわからないですからね。
しかし、そうする土台が整いつつあるのは事実です。

が、ブレイクするにはキラーアプリが必要です。
私は「空調」「掃除」「健康」「安全」が、キラーアプリになるのではと思っています。

「安全」は、イッツコムさんが、ビジネスを始めています。
私が欲しいの「空調」ですね。
別稿で「換気」のお話をしていますが、空気は、「酸素量」「温度」「湿度」「浮遊物」をコントロールしなければならないのでとてもやっかいです。

中でも、「湿度」ですね。
冬場は乾燥しがちなので、加湿機を使われる人も多いですが、密閉度がある程度以上になると、過加湿になります。
つまり、部屋のいたるところで結露するということです。
で、そこにカビが生える。
カビは、空気中にある程度浮遊していますので、ある程度までは問題ないのですが、体が弱ると体への影響が出てきます。

福島の仮設住宅など典型例ですね。
元々、健康的な生活を意識して作られていませんからね。

私は「換気システム」「エアコン」「空気清浄機」の連携により、これを解決することができるのではと考えています。
連携はHEMSのお仕事ですからね。
意識しなくても、健康的な生活。
重要ですね。
結露しない。カビが生えない。
こちらも無駄な労力を掛けずに済みます。

 
これですとお金が出るかも知れません。
しかし、もっと出してもらえるのは、側にあって楽しい、エンターテイメント系です。
例えば、こんなアプリが提案されていました。

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提案されていたアプリの1つ。「節電時計。」
数字ではなく、時計の色により今の状態を知らせる。
お知らせという余り面白くない機能を、少しでも分かりやすく面白く


 
■将来は、システムごと輸出?
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ユカイ工学(株)のコミュニケーションロボット。
言葉でのやり取りはインターフェイス上極めて重要

実は、HMESを普及させてたいと考えている国は、日本だけではありません。
人口過多の国、インド、中国、その他いろいろな国は、エネルギー問題を早かれ、遅かれ抱えるのはわかっています。
そのケース・スタディとして日本の現状を見ているわけです。

エネルギー政策は、国の根幹の政策の1つですからね。
10%減は非常に大きな意味を持ちます。

 
ここ1年、余り声高な情報がなかったHEMSですが、2016年の電力自由化に向け、大きく動きそうです。

 
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2015年2月8日

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