豆知識

あなたの家の隙間はどのくらいか?
「換気って何?」その3 Q値とC値


最も原始的な換気は、勝手に空気が入れ替わる自然換気です。
昭和初期までは、夏を基準として、この自然換気を最大限に利用した家が最上とされてきました。
ところがクーラーの出現で、状況は様変わりします。
密閉性のイイ家が、イイとされるようになりました。
ここでいう密閉性って、数値で表すとどんなものでしょうか?

 
■何と言って注文したらイイんだろう?
女性に多いのが冷え性。
私の嫁さんも同じです。
で、家を建てる時の注文は、「冬暖房がなくても、それなりに暖かくて、夏エアコンがなくても、それなりに涼しい。」
後で、考えると、すごーく曖昧です。

しかし設計士は「わかりました。」といって、一週間後に図面を持ってきました。
風の動線がわかりやすい間取りと、断熱材をタップリ。
窓も工夫しましたとの話で、何となく納得したことを覚えています。

 
でも、短時間で細部まで作り込むことができるのでしょうか。
実は、予め地域ごとで決まっている基本値があるのです。

eco_H1

国土交通省住宅局が発行している
住宅・建築物の省エネルギー基準

指導しているのは国土交通省。
「省エネ基準」として決めています。

更にいうと、H25年完全施行は、H27.4.1に最新の改正がなされました。
改正は、より細部まで定められました。
実は初めての人には、割とわかり難い。

ですから、分かりやすい改正前で説明します。

今からいろいろ書きますが、皆さんに知っていて欲しいのは、家構造を決めているのが「省エネ」だということです。

 
■3つの基本値
基本値というのは、次の3つです。
1)熱損失係数(Q値)
2)夏期日射取得係数(μ値)
3)相当隙間面積(C値)

それぞれ簡単に説明しましょう。

 
■熱損失係数(Q値)
室内外の温度差が1℃の時、1時間に住宅全体の天井・屋根、外壁・窓、床の貫流や自然換気(隙間など)により失われる熱量のことです。単位は、W/m2K。

もっとわかりやすくいいますと、「閉めきった部屋から、どれ程熱が逃げ出すか」ということです。

Q値が小さければ、小さいほど熱が逃げにくく、断熱性が高い家といえます。

 
■夏期日射取得係数(μ値)
夏期の冷房負荷の低減を図るために規定された夏期日射取得係数です。
「全く遮蔽がないと仮定した場合に取得できる日射熱量」に対する「実際に建物内で取得される日射熱量」の冷房期間中の平均的な比率を定義しています。

もっとわかりやすくいいますと、「夏の間、窓部がどれ程日射熱量を入れてしまうのか」ということです。

μ値が小さいと、冷房負荷が小さい家といえます。

 
■相当隙間面積(C値)
住宅全体の隙間が床面積1㎡当りどの位かを示す数値です。
単位は、cm2/m2

小さいほど、隙間のない密閉性の高い家といえます。

 
■3つの基準値の組み合わせ
この3つの基準値の組み合わせが、地区毎に決まっているというわけです。
Q値 C値 区分 なるほど、これを基本に家の特徴を出していけばイイわけです。

 
■C値と換気の関係
換気は「換気口」「隙間」という2通りのルートが有りますが、自然換気に限定した場合、換気口と隙間の比率はどんなものでしょうか?
C値 換気口:隙間
5.0 20:80
2.0 35:65
1.0 50:50
0.5 70:30
上の表は、無風状態の概算値です。
風が吹けば、隙間からの換気(要するに隙間風)はもっと増えます。
要するに、コントロールできていないわけです。

それでは省エネはできません。

 
■家の方向性と換気
「省エネ」が家の方向性を決めているわけですので、もっとQ値、μ値は下げられます。
実際、Q値、μ値が低い住宅は、目玉商品の1つです。
当然、C値も低い。
しかし、C値=1.0の家でも、隙間から50%の空気が入ります。

とことん「省エネ」をするなら、換気のコントロールをより高める必要があります。
北海道で暖房費を安く上げるなら、Q値:0.5、C値:0.5ともいわれています。

今回、数字が多い話でしたが、家の構造は省エネで、色々と決まっていること。
密閉度(気密性)は、今後も上がること。
換気は、自然換気でなく、コントロールすることが必要であることが、おわかり頂けると嬉しいです。

 
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