思うこと

SONYのアイボ、サポート打ち切りより考えたこと
日本のメーカーの「ブランド力」


Yahoo Newsで、「製造元に捨てられたロボット犬「AIBO」…“治療”にあたる元エンジニア集団」というニュースが掲載されました。
メーカー経験のある私は、複雑な思いでこの記事を読みました。
「自社ブランド」と「ユーザーとの絆」の思いが非常に希薄に感じられたからです。
■儲けるために
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今回、ネット掲載されたアイボの記事。


メーカーは、商品を製造販売、それにより利潤を得ることを生業としています。
そのメーカーが、必ず持っている部署が2つあります。
「品質保証部」と「お客様相談室」。

「品質保証部」とは、開発時の品質評価、出荷できる品質の決定、出荷時の品質保証の方法を決定し、それに基づき商品の出荷判断を行います。
「お客様相談係」は、故障した時のお客様の対応を行います。

この2つの部に共通した特徴は、「人手が掛かる」ということです。
品質保証部は、悪い言い方をすると、あらゆる場合を想定して、その評価を行います。
テストに次ぐテスト。
時間と人手が掛かります。

 
お客様相談係もそうです。
お客様の電話応対から始まる仕事ですが、手間仕事と言ってもいい仕事ですからね。
こちらも、時間と人手が掛かります。

 
日本のメーカーは、ここをしっかりやって来ましたからね。

日本でベンチャーが中々育たない理由の1つに、市場の通常品質が高いことが上げられます。
大手メーカーと同様な品質管理を求められると、厳しい。

ベンチャー企業が、大手メーカーと同じ品質を同じ価格で出そうとしても、なかなか出せないです。
日本家電総合メーカーの十八番と言ってもイイかも知れません。

 
■技術が置き忘れた「修理」という行為
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SONY WALKMAN II。
一世を風靡した商品。


さて話は変わります。
私が知る限り、修理できない家電を最初に出したのは、ソニーです。
製品名は「ウォークマンII」です。

「短」「小」「軽」「薄」を極め、そして安くするために、当時初めてCAD(Computer-Aided Design)システムを駆使して作られたのが「ウォークマンII」です。
通常ならネジ止めするところが溶着されていたり、上に向かって取り付ける作業台が必要だったりと、修理ができない商品でした。
故障して、無理に修理見積もりをもらった時、8万円と書かれており絶句した覚えがあります。(金額に覚え違いがあるかも知れません)

正確にいうと修理できないというのではなく、修理代より本体価格の方が安い時代が来たというべきでしょうね。

これ以降です。
家電から、「修理」という文字がどんどん消えていったのは・・・。

 
■修理ができるという意味
修理は人間が行う作業です。
このため、人間が工具で対応できることが条件です。
ところが、これを条件にすると小型にできないことが多い。

あと1つはブラックボックス部分を開かずに済むことが条件ですね。
集積回路、HDDなどは、ホコリなどを異様に嫌いますからね。
開けて、元通りにすることができない。

最近の小型のモノは、間違いなく修理するより、本体買い換えの方が安いモノが多いです。

現在、修理できるというのは必ずしも、「最先端であること」を意味しません。
むしろ、「こなれた技術」であることが多いです。

 
■修理ができないという意味
修理ができない(もしくは修理できても一部)ということは、そのモノの寿命を推し量ることが可能です。
多くの家電は、5〜10年です。

しかし、もっとイヤな言い方をすると、適当な時に新しいモノに買い換えてもらえないと、メーカーはモノが売れなくなりますからね。
この間に使い終わってもらえるようにしているのかも知れません。

 
ちなみに、部品の保管は、メーカーに一任されています。
ただし、製造終了後、どの位持たせないといけないのかは、通商産業省機械情報産業局長通達「家電製品に係る補修用性能部品の最低保有期間 の改定」「家庭電気製品部品の最低保有期間に関する行政指導」があります。

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家電公取協のホームページより転載。


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シャープのホームページより転載。
できることを明確にする姿勢は好感が持てる。


 
■とにかく修理をしなければならないモノ
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ムービーに多用された8mm。
こちらのサポートも終了。


そうは言っても、必ず修理をしなければならないモノもあります。
「記録メディア」と呼ばれる媒体です。
そうビデオカセット、オーディオカセット、DVD-R、BD-Rなのです。

再生できるハードが、世にある限り、対応するのが常です。

最近、よく放送局、映画会社のアーカイブのレストアを、××スペシャルなどで放送されていますが、個人でも、記録として「必要なモノは手を尽くすべき」ということだと思います。

ソニーは、記録メディアを販売している会社でもあります。

 
■アイボは不幸
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「来たるべき未来」と言われたアイボ。


アイボは、時代の寵児でした。
21世紀のソニーを象徴するモノになるはずでした。
それには「継続」が必要です。

ソニーは、それをやめてしまった。

孤立無援のベータビデオ初期の「VHS」との規格争い。ソニーは「ベータ」という規格の盟主。大勢が決した後も、粘りに粘った。ユーザーサポートも手厚かった。で、あれだけ粘ったソニーとは思えないです。

ソニーは、自分の作った技術は大事にするメーカーでしたからね。
「放送技術」、「ハイレゾ」などで、少しはそういう面も見ることができますが、昔の面白技術集団ではないですね。
粘りが感じられなくなりました。

少なくとも技術に最後までこだわる凄みは感じられません。

 
■ソニーの「ブランド価値」
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かつて、このロゴの価値は計り知れなかった。


今回のことで、私が感じたのは、「ほんとうにソニーブランドは落ちたのだなぁ」ということです。
ブランドとは、「メーカーとユーザーの絆」といえます。

要するにユーザーが持っているイメージを、メーカーが裏切らないということです。
商品と広告宣伝により、メーカーに対するイメージができます。
そしてユーザーは商品を買うわけですが、その時、正確にはイメージを買うのです。

「買ってみたらイメージ通り」だった。
この時、生まれるのが「絆」です。

 
アイボの場合、事情が少し違います。

一番重要なのは「教育型プログラム」が仕込まれているということです。
これは使われる環境により、反応が違うということです。
「長く使えば使うほど、オリジナル性を増し」ます。

人、犬も同じ種でありながら、個性があり、皆、違います。
それに似るということです。

 
そういう性質の家電がアイボです。
つまり「長く使って」、初めて個性が出るわけで、更にそれを楽しむとなると、時間が掛かるわけです。

採算が合わないので、発売止めます。
製造止めます。
だから修理は、後、8年です。
これだと商品の性格上、間尺に合わないのです。

それでも収益優先で、「修理止めます。
後、知りません」となったのです。

 
■ピュア・オーディオも同じこと
似たような商品に、ピュア・オーディオがあります。
ピュアと付けるのは、純粋に音を楽しむと理解してもらえばイイですね。
いわゆる高級オーディオです。

オーディオ趣味は、自分のシステムをじっくり育てることです。
ケーブル1本、数万円/mがまかり通る市場ですからね。
良いシステムにするには、お金も掛かりますが、手間も掛かります。
オーディオ趣味は、結果より過程を楽しむところが多い。

しかし、これの前提は、今自分の使っているシステムには次があるという前提です。

例えば、S社のアンプに惚れ込んで、システムを組んだとします。
で、S社が事業を止める。
今の日本の総合家電メーカーにありがちな話ですが、収まりが付きませんね。

事業継続しており、新製品を出したが良くなかった。
これはありえる話です。
この場合は、明確な理由で他のメーカーを探すことができます。
まあ、納得づくの離婚のようなものです。

ところが事業を勝手に止めてしまった。
メーカー都合です。
これは一方的な離婚宣言のようなものです。
収まりが付かない。

 
ちなみに、ピュア・オーディオの場合、パーツは生産終了後もかなり長く保管します。
20年前のモノを修理してもらえたという話を聞くことも、ないことではありません。

これはオーディオが、システムを育てるという前提だからです。

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オーディオ専業メーカー アキュフューズのホームページより
パーツがなくて修理できないかも知れないが、初代機(1979年発売)より修理を受け付ける旨が記載されている。
オーディオを熟知してる対応である。


 
■アップル社のブランド価値
今から、HEMSなど、家のシステムの話題が多く出てきます。
ただ、完全版とは言いにくいシステムも多いのが現実です。

では、そんな時、どんな実効性と、拡張を保証するのか?
特に問題は「拡張性」の保証ですね。

例えば、A社が、HEMSを発売しており、展示会でそのHEMSを拡張したものを展示し、思わず買ってしまったとしましょう。
理屈をいえば、その当時のHEMSで、できることとしたこと以外保証はできない、でしょう。
しかし、「ブランドの絆」は違う形で掛かっているというのはお分かりでしょう。

 
現在、ブランド資産が高い「アップル」は、常に拡張性をアピールしてきました。
CEOだったジョブス自身がそうしてきました。

そしてそれを実現しています。

アップルの強みは、「絆」が切れていないところが強みです。

 
■ソニーは「自社ブランドを愛してくれた社員と相談し、対応すべきだった」と思う
日本は、海外から見ると驚異的な国です。
400年以上のブランド(のれん)を誇るメーカー(店)がこれだけある国はありません。

ただ日本橋の老舗なども、話を聞くと何度も店を畳もうとした時がありますね。
幕末、関東大震災、東京大空襲の時の頑張りは、いろいろな店が話してくれます。
が、その時、一番支えてくれたのは、「お客」だと言いますね。
つまり、「絆」を切らなかった。

アイボの修理をしている会社を立ち上げたのは、元ソニーの社員だというのは深い意味がありますね。
元ソニーのエンジニアは、元自社の商品に愛着がある人だと思います。また何よりもモノを作ることが好きだったと思います。

が、今は、リストラ、リストラの時代ですからね。
そんな人も辞めさせられるわけです。

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元メーカーに勤めていたエンジニアが立ち上げた修理会社 A・FAN。
気に入ったモノを長くを使う喜びが伝わる。


 
私が思うのは、そんな人に「大企業だとできない小回りの仕事を「委託」できないか?」と思うのです。
そうすると、かなりの長期に渡り、サポートができる可能性が出てきます。
少なくとも「絆」を保ち続けることができます。

莫大な宣伝費用を掛けイメージを作っても、人は見るところを見ますからね。

ソニーは大事なものを本当に失ったのではないか?
同様の日本メーカーも多いのではないか?

 
■新しい修理の形はあるのか?
それは置いておくとして、ソニーがアイボ事業を続けていたら、どうなったでしょうか?

それぞれの機種は、必ず動かなくなる時があります。
1台に、数億円かけて、維持するならともかく、数十万円では、まず無理ですね。

私なら、新型モデルに、今までの情報を移植。
今までの「特徴」を再現させます。

必ず訪れる分かれ。
しかし、約束された再会があるわけです。

「リインカーネーション(転生)」は一つの回答ではないでしょうか?

 
これは新しい発想ではありません。
PCのデーター移植と同じです。

 
今から修理も多様化する時代になるのではないか?
アイボの記事を見ながら、そう感じました。

2015年1月5日

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