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【2021 珈琲 04】スペシャルコーヒー道楽への道 その1
ハンドドリップ編


江戸時代は人が来ると、とりあえずタバコ盆でした。明治以降は、これにお茶が加わります。今ではコーヒーがお茶にとって変わりました。
この3つは、どれも嗜好品。「粗茶」という言葉がある様に、実にピンキリです。
コーヒーも同じですね。が、何が最高かは意見が別れます。ドリップ派とエスプレッソ派です。今回は、安価で、深い、ドリップのお話です。

本日は、コーヒーの「ハンドドリップ」がお勧めな話。
前口上が長めですが、ぜひお読みください。


◾️お茶、コーヒーのとんでもない歴史
日本は、いろいろなモノがブームになります。多くの場合、海外から材料を大量買いして一気に流行させます。その時、よく起こるのが、輸入した分量より、消費量が多いことです。これ、20世紀、21世紀だけの話ではありません。16世紀からそうでした。例えば、ティー(紅茶)が流行ったイギリス。貴族ですら、ワラなどで増量した紅茶を淹れて飲んでいたそうです。ワラも新しい物だけでなく、牛舎、厩で使ったもの、つまりう●ち付きのモノも使われたとか、流行というのは実に怖いものです。

日本でもありますね。有名なのが、ブルーマウンテン。日本独特の「ブルマン」という言い方で注文された量は、最盛期輸入量の2倍弱あったとか。

しかし、それでも、日常的に飲まれる様になった、紅茶、コーヒーはまだましです。今は、流行している原料を安く仕入れるために、人件費が安価な国に材料を作るために設備を販売。そして流行している間は、安い原料を仕入れて儲けます。で、ブームがさると、ハイさようなら。会社を立ち上げ、急激に大きくし、潰す様なものです。決して経済的には間違ってはいないのですが、急速に立ち上げるので環境負荷も大きいですし、雇用などの社会問題も引き起こします。まあぁ、サスティナビリティーではないですね。

よく「経済を回せ」という掛け声がありますが、それを強調しすぎると、とんでもないことになるわけです。

 
◾️今ドキのコーヒー
今の世は色々なコーヒーが溢れています。ネスレのネスカフェから始まって、ブレンド、ストレート、エスプレッソ、カフェラテ、カプチーノ。バーに行けば、コーヒーカクテルも飲めます。

そして今、全体の流れは、一杯の質をあげる方向へ変わってきています。昔のコーヒーメーカーは数杯一度に作るのが当たり前でした。で、サーバーポットを温めて保管しておきます。2杯目を飲む時は、煮詰まっていたりして、あまり面白くないコーヒーを味わったことがある人も多いことでしょう。

今は、カプセルコーヒーに代表される様に、一杯づつ淹れるのが当たり前。ベストな味を作るために、湯温、湯量他を丁寧に調整します。

 
その中でも、サード ウェイブと呼ばれる動きがあります。名前はスペシャリティコーヒー。単純にいうとストレート(一種類の豆で淹れる)のハンドドリップ(機械でなく人が淹れる)です。

昔からある淹れ方、コーヒー好きならよく使う淹れ方です。では、なぜ、この淹れ方が注目されているのでしょうか?

 
◾️コーヒー豆は農作物
野菜が時期によって味が変わること。お米の味が毎年変わること。当たり前です。農作物ですからね。コーヒー豆も同じです。農作物です。出来が毎年変わるのです。

それを、感じさせないようにする技術があります。それが「ブレンド」です。悪い豆があっても、他の豆と混ぜ合わせることにより、それを感じさせない、いつもの味にする。それがブレンドです。ブレンドは、自分の唯一の味を作り出す技術ですが、それをキープするための技術でもあるのです。お酒でいうとシャンパンなどがそうです。ワインと異なり、シャンパンは年により味がほとんど変わりません。それは、ブレンドで作るからです。

さて、では何故、ストレート、ハンドドリップという、豆の出来がストレートに感じられるコーヒーが、今ドキなのでしょうか? それはサスティナビリティーと関係あります。

元々、紅茶、コーヒーも熱帯の植物です。欧州から見ると、植民地で作られるモノです。植民地統治は、生かさず殺さずというところがあります。要するに、原住民を安い賃金でこき使い、作らせるわけです。農園主は儲かりますが、農民は儲かりません。また市場でも、かなりピンハネされます。

植民地が独立しても、状況は余り変わりません。
良質な労働力は、お金がある方に引かれます。良い働き手がいないと、農作物の質は低下します。要するに、コーヒーのサスティナビリティーは、農家の一人一人にまで、お金が正しく渡される様にして、代わりに質の良いコーヒーを作ってもらうことです。

このため、スペシャリティー・コーヒーは、全履歴が追えます。農園のどこにある樹でいつ収穫され、その後、どの様にコーヒーチェリーの果肉を取り除き、豆になったのか、分かります。

この様に丁寧に作られたコーヒー豆へは、当たり前のことですが、きちんと対価が支払われます。と書くと、今までと変わらない様ですが、実は大いに違うのです。コーヒー市場は基本先物取引。重要なのは、豊作か、否かだけで、味は関係ありません。先物買いですから、投機者がかなりの利益を持っていきます。スペシャリティー・コーヒーは、この流れから外れたのです。つまり、市場を通さずに、直接農場から買うのです。こうすると投機者の取り分も、農園に入ります。つまり、農園で働く、従業員にもお金が回るということです。

そうして多くなった収入で彼らは何をするのかというと、教育に使います。最低でも、息子の代は、欧米人と対等に取引できる様にするというわけです。

昔の日本も、そうして、対等へと上がってきたわけですが、日本の教育機関は昔よりレベルが落ちています。教授を上回れない弟子など本当は意味がない(「出藍の誉」という言葉があるほどです)のですが、それが日本では当たり前。学問など、重要なところ締めずに、グローバルだ、経済だと浮かれているわけですから、根本対策としては全くなっていない。本当に日本はダメになるかもしれません。

話が飛びました。ちょっとコーヒーブレイク。

 
🔳コーヒーを楽しむために
コーヒーは飲み物ですが、嗜好品です。嗜好品は、ほとんどの場合、いい香りを持ちます。それは、コーヒーだけに限りません。お茶も、マツタケ、トリュフなどもそうです。

良い豆で、それにあった焙煎をして、上手く淹れた場合、何種類もの香りが立ちます。色々な香りの花を、何種類ものの熱帯の熟れた果実を顔に近づけられた感じ。一瞬にして、かなり幸福な感じになります。これを引き出してやるのが、「焙煎」と「抽出」技術です。この2つ、食材に対する「料理」と同じです。やればやるほど、興味が尽きなくなります。

もちろん、料理と同じである段階にきたら、足踏み、伸びにくくなります。しかし、そこまでのトライは決して無駄になりません。コーヒーの勘所がわかるのです。同じことを、人によってすこぶる適当に淹れている見えても、素人とは全く状況が偉く異なルのです。

ただ、香りを嗅ぎ、舌で味わうだけでなく、コーヒーを自ら扱うことにより、よりポテンシャルを引き出す。これがコーヒー粉からコーヒーを淹れることをお勧めする理由です。

 
◾️「抽出」から始める
「抽出」。
豆を挽いたコーヒーの粉にお湯を注ぎ、コーヒー粉の中に含まれているコーヒー成分を取り出す作業です。

大量のお湯を流しっぱなしでは、コーヒー成分はすごく薄くなります。コーヒーはあれだけ濃厚な飲み物です。となると、少ないお湯で成分を抽出させなければなりません。

となると、コーヒー粉の中を、お湯で満たす。そして成分をお湯に移す。その濃厚なエキスを少量のお湯で外に出してやる。というイメージが出てきます。

そして香りは大事。温度が高いと香成分は一気に飛散。ゆっくり楽しむことはできません。また、アイスコーヒーでもお分かりのとおり、温度が低いと香りの華は開きません。

そういうイメージを頭の中に描きながら、抽出してみます。

 
すると抽出の最初に行う、少量のお湯をコーヒー粉にゆっくりとかけ止め、しばし待つ。「全体を蒸らす」という意味が分かります。粉にお湯を適量かけ、成分を粉から流せ出せる状態にするわけです。

実際にしてみると、コーヒー粉にお湯が入り「膨らむ」のがよく分かります。また、時間が立つにつれ、「香りが強く立ってくる」のが分かります。また、「音」も変わってきます。

コーヒーを美味しく淹れるとは、どういうことであるかが分かります。五感の楽しみでもあります。

 
◾️弘法、筆を選ぶ 〜メタルフィルター〜
弘法大師は、能書家として知られます。嵯峨天皇、小野道風と共に日本三筆の一人に挙げられます。後年、どんな筆でも綺麗な文字を書くことから、「弘法筆を選ばず」ということわざが生まれましたが、初めは絶対に筆を選んでましたね。人間、一つのことを極めるには、探究心と忍耐は欠かせません。

これをコーヒーに当てはめると、ちゃんとした道具を使いましょうということです。

 
で、コーヒーの世界もピンキリです。多くのメーカー(工房クラスを含む)があり、全部、主義主張を持っています。

その中で、私が推したいのは、Cores(コレス)の GOLD CONE FILTER & SERVER CM750GDです。

Coresの GOLD CONE FILTER & 
SERVER CM750GD。
名前の通り、メタル(ゴールド)フィルターと
ガラスサーバーからなる。


まず、フィルター(FILTER)ですが、紙フィルターとメタルフィルターがあります。紙フィルターの場合は、それをドリッパーにセットして使います。が、メタルフィルターは、ドリッパーと一体になっています。

CORSAのGOLD CONE FILTER。
ドリッパーと称さないのは、フィルターの方がより重要なため。


紙フィルターの最大の特徴は、コーヒー成分の一部(主にはオイル成分)が紙に吸われてしまうことが挙げられます。このため、やや軽めの香り、軽めの味わいになります。メタルフィルターは、そんなことはありません。あるがままのコーヒーが味わえます

GOLD FILTERの目。コーヒーの粉をトラップし、抽出液を下に流すのが役割だが、
色々なノウハウが詰まっている。


それ以外にもメリットがあります。紙フィルターの様に使い捨てなくても済む。これは大きいことです。特に、スペシャリティーコーヒーのテーマの一つは「サスティナビリティー」。持続性。紙フィルターレベルだと影響は少ないかも知れませんが・・・。

 
さて、次はメタルフィルターでなく、GOLD CONE FILTER &
SERVER CM750GD の特徴です。一番大きいのは、スペシャリティー・コーヒーのスタンダードともいえるハリオのV60型ドリッパーに似た形状だということです。V60ドリッパーは、抽出されたコーヒーを手早く、そのままサーバーに送ります。このため、すっきりした飲み味になります。逆な言い方をすると、コーヒーの特徴が分かりやすい。それのメタルフィルターです。金メッキは味に影響を出さないためです。

ハリオのV60ドリッパー。(私物)


ドリッパー内部は螺旋。スムーズに、一度フィルターを通った抽出液が
再度、コーヒー粉に当たらない様に設計されている。


また、V60の紙フィルターは完全な円錐型ですが、Coresの GOLD CONE FILTERの底はちょっと平面になっています。これは円錐の底(通常尖っている部分)に流れが集中しないようしたためです。底の部分をフラットにすることで、ドリップの過抽出を防ぐのが目的です。過抽出されるとコーヒーのエグ味や、渋み、雑味までもが抽出され、コーヒー豆が有する旨味成分だけを味わうには難しくなります。

尖った部分からは抽出液が落ちにくいため、
過抽出の原因となる液溜まりができやすい。


平面にすることにより、抽出液は360° どちらへも流れる。
V60の理念を継いでいる。


 
 
◾️弘法、筆を選ぶ 〜ガラスサーバー〜
またサーバーの方も、独特の形状。通常のサーバーにカップを加えた様な形状です。これはサーバー上部がワイングラスのように膨らんだかたちをしていることで、ドリップをすると、その膨らみに蒸気と香りが充満し、サーバーからコーヒーの心地よい芳醇な香りが立ち上がってきます。

実に独特な形状。機能、使いやすさも
さることながら、形の面白さもイイ。


ドリップは、コーヒーの香りをもっとも楽しめるひとときで、香りがポイントのコーヒーで、その瞬間を取り入れないなんて、すごくもったいコトでもあるのです。

 
◾️それ以外に欲しい道具
さて、こうして貴方も、ハンドドリップの道を歩み始めるのですが、続いて欲しい物があります。

それは、秤、そしてポットと温度計です。

双方ともタニタ製。(私物)
色が合っていないのは、急いで買ったため。後悔してます。


秤はコーヒー豆の重さを測るためです。コーヒー粉を購入すると、挽き方の粗さで体積が変わります。このため重さ管理がベストです。

コーヒー用の秤は、0.1g単位まで測れることが必要。


そして温度計は、当然、湯温確認のためです。色々な人が色々な見解を述べていますが、お湯の温度は、83℃前後。温度計は、それを確認するためです。

プロが、その様なものを使わないのは、自分の一連の動作、道具が全て数値化されているためです。このため、使わないのですが、抽出は料理と同じ。調味料の量が狂えば、予定の味にならないのと同じです。慣れれば使わなくても良くなりますが、始めは使ってください。自分が、何をしているのかを正確に掴めると、その分、上達が早いです。

ハリオのV60ポット。散々使った年季モノ。
湯温コントロールし難い。


ベストセラー ティファールの「アプレシア
エージー・プラス コントロール オニキスブラック 0.8L」
お湯の注ぎ量をコントロールし難い。


ちょっと気になっているラッセえうホッブスのTケトル。


ポッドは、電気でもガスでも構いませんfal 、温度コントロールできるモデルがいいです。温度以外のポイントは、注ぎ口にフタなどの抽出時お湯の流れを阻害するパーツがないこと。そして水量をコントロールしやすいことです。

 
あと、粉コーヒーの管理関連の家電もありますが、それはまた書きます。

 
◾️まとめ
今回、自分でコーヒーを淹れる第一歩として、抽出道具のお話を取り上げさせていただきました。単に抽出するだけですが、それでも全てのことが密に関与しています。

これに、豆を自分で挽くことを付与するのが、第二ステップ。ここまでは、是非体験してもらいたいです。そして焙煎。これを上手くモノにすれば、すごいモノです。

ハンドドリップ(今では、プアドリップと言われることが多い)にエスプレッソがあります。こちらはエスプレッソマシンを使います。

加えて、ミルク(牛乳)の追加方法でも、色々な舌触り、味、香りが楽しめます。
「コーヒーは一日してならず」。息の長い趣味として楽しみたいモノです。

 
 
●コレスに関する情報はこちらから
https://cores.coffee
●ハリオに関する情報はこちらから
https://www.hario.com/index.html
●ティファールに関する情報はこちらから
https://www.t-fal.co.jp
●ラッセルホッブスに関する情報はこちらから
https://russellhobbs.jp
●タニタに関する情報はこちらから
https://www.tanita.co.jp
 


 

2021年3月7日