新製品

TCL、日本市場本格参入
安い!これがグローバル、デジタル製品というもの


世界第二位のシェアを持つ、中国メーカー TCLが、本格的に日本に進出してきました。昨年から「日本オリジナル」を武器に、日本市場に攻め込んでいる世界第一位のシェアを持つハイセンスに続けてです。発表会で私が感じたのは、日本メーカーは、グローバル化ができていないと言うことでした。

会場で披露された、X10。
解像度:4K。色再生領域が15%広くなるQLEDを搭載。
Dolby Audio サウンドバーで、ドルビーAtomosにも対応。
画も音もこだわりのモデル。


■デジタルの意味をもう一度
よく勘違いされている方がいるのですが、デジタル化により、商品はどんどん安くなり、平均化されていきます。

「最新の技術を使っているのだから、『高い』のが当たり前じゃないじゃないの?」と思う方がいるかも知れませんが、それは認識違いです。確かに、新しい技術を入れた当初は、やや高く売られますが、半年もすると効果がなくなります。しかし、それこそがデジタル技術なのです。

デジタル化の大きなポイントの一つは、規格です。

古く、よく知られた映像&音の規格は、CDでしょう。
サンプリング周波数:44.1kHz。量子化数:16Bit。今では「たった」と思える様な数値ですが、規格化された1970年代末は、驚異的な数値です。このため規格化を進めたフィリップスとソニーも、揉めに揉めたと言います。フィリップスは実用化を考え、量子化数:13Bitを主張したのに対し、ソニーは16Bit。現在を取るか、未来を取るかです。

結局、「未来」を選択。この土台がしっかりしていたので、CDは未だにメインフォーマットで使われています。更新のSACD、ハイレゾ時代でもしっかり生き残っています。

そして、CDは爆発的に伸びます。それまでのレコードなど眼ではありません。本当に爆発的です。

理由は、CDデーターを読み解く専用チップができたからです。チップは、半導体回路ですから、通常の半導体より、少し高い位のコストでできることが一つ。あと一つは、安いハードでの音質です。

音の再生は、記録データーを電気信号に変換(CDプレーヤー)、増幅(アンプ)、空気振動へ変換(スピーカー、ヘッドホン)で音を出します。アナログの場合は、「記録データーを電気信号に変換」。この部分だけでも、すごくロスがでます。ところが、デジタル化すると、その信号ロスは、理論上なくなります。安いハードでも、音がそれなりにイイのです。このため、CDは、ラジカセでも、PC、ゲーム機でも再生ができることになりました。

ちなみに、この時代の日本が強かったのは、レーザーの位置合わせ、いわゆるサーボ技術に優れていたからです。この位置合わせの様な、アナログ系の技術は、日本が得意とするところです。

 
こうして、デジタル化は、多くの人に「安く」「一定の品質」を供給する技術なのです。加え、複製も楽です。このため、データーを守れと暗号化が進みますが、キーが分かれば暗号は解けます。

海外の映画、特にエンターテイメント系が3Dされるのは物理的にコピーを防ぐためです。3D上映中のスクリーンを撮っても、二重画ですから売れませんからね。

 
■最新の技術を持つ中国メーカー
つい10年位前まで、日本のメーカーは、テレビ技術でトップを走ってきました。それどころか、20年前は、生産台数でも、世界トップを狙っていました。

しかし日本は、人件費などの問題に行き着きます。それは、グローバル化の時、ある程度は仕方ないことですが、大きなリストラも引き起こします。海外メーカーは、その人たちを雇い入れます。韓国、台湾、中国メーカーは、そうして、日本の技術を吸収してきました。

また生産に対する考え方も違います。
中国13億人の市場としましょう。ざっくり日本の10倍です。ここに工場を建てるとしたら、日本の10倍規模はあり得る話です。日本は、ここで先例を考えます。当然、先例などありません。

また、アメリカでは、製造委託は当たり前の風土ですから、中国に多く出します。しかし、技術のキーパーツは自国で押さえますが、テレビの様に「規格」の塊の様な製品は、実に上手く生産されます。

今は、規格対応は当たり前。
ローカルディミング等の小技も持っている。


垂直統合型のモノ作りができるので、品質、コスト共に強いと強調。
20年前の日本メーカーのようだが、彼らは世界で買っている実績を持つ。


また中国企業ともなると、従業員数が多いです。例えば、優秀な人が10%の割合で出てくるとすると、日本の10倍の人数出てくるわけです。こうなると、中国の方がノビが速いわけです。

ちなみに市場に出たモノは、特殊な素材でない限り数ヶ月でコピーされます。これある意味、余剰人数に比例するとも言えます。中国は有利です。

コピーできると、それをちょっと変えて新しい技術にするのは容易です。

 
■TCLの3ラインナップ

商品に共通する要素。
「Android」とはAndroid OSのことで、スマホ配信されている映像は
全て見られることを意味する。


そんな勢いのある世界第二位テレビシェアを誇るのTCLですが、今回は3ラインナップで迫ります。

一つ目は、4K QLEDの「X10シリーズ」。二つ目は、4K液晶でサウンドにこだわった「C8シリーズ」。最後は、スタンダードの「P8シリーズ」。

X10の画


QLEDは、色域を通常の4Kの115%まで拡大する効果がある技術で、次世代液晶では注目されている技術です。有機EL同様、今は新技術の第名詞的な使われ方です。

P8の画


しかし、驚いたのは、それではなく、スタンダードの「P8シリーズ」の価格。オーブンですが、市場導入時推定価格が、65V型で10万円前後、55V型で7万円前後、50V型で6万円前後、40V型で5万円前後!

以前、4K大画面テレビが、ドンキホーテで限定数、5万円で販売され大きな話題となったことがありますが、それと同じ。日本メーカーより、1〜2万円安いわけです。

これは、ハイセンスと同じですが、日本メーカーからすると激安です。実質的に、廉価方向へ引っ張られたわけです。

 
発表会に同席した某メディアの編集長は、「多賀さん。5万円ので何か、悪いですかねぇ?」

品質もそれなりですし、この価格ですからね。余り躊躇する理由はないです。

今まででしたら、「やはり国産が」と言う人も多かったですが、企業が内部留保ばかりして、社員に還元せず、景気が後退している今、1〜2万円差は少なくありません。

私は、世界第一位と第二位のそろい踏みで、ブランド、画質に余りこだわらない人用の分野が創出された様、思います。

 
■グローバルメーカーが日本に進出する理由
これに関しては、いろいろなメーカーがいろいろなことを言って居ますが、大きくは日本を「修行の場」「品質研鑽の場」という答えが多いです。
TCLもそれを理由に挙げています。

実は、日本市場の規模は、極端に大きくない上、家電では、パナソニック、ソニー、シャープ他、強力メーカーが集っています。その上、ユーザーの要求もかなり厳しい。特に品質にはうるさく、アップル社のマッキントッシュのあるモデルは、樹脂のヒケのために、日本だけ金型修正を行わなければならなかったほどです。

日本メーカー=高品質という図式は、日本市場の厳しさとそれに対するメーカー対応があったからですが、今海外のメーカーは、日本市場で認められることにより、良品質と認められたいわけです。

当日は、サービス体制にも触れ、日本メーカーと遜色ないことをアピール。


家電の中でも、テレビは厳しく、アメリカ他のエリアで大成功した、韓国のサムソンが諦めた位です。

 
■鍵はデザイン
今回、TCLの発表会で、前に立ったのはデザイナーです。
これはユニークですが、グローバル企業は、「デザイン」に力を入れています。

一つは、技術による差別化が困難になってきたことがあげられます。
そしてグローバル化のもう一つの特徴は、製品品質はおちるということです。

グローバルに大量供給することを考えると、どうしても人件費が安いところで作ることになります。韓国、中国と来て、今はベトナム、タイ、インドネシア。欧州ではポーランド、トルコ。この次はアフリカ諸国が名を連ねるかも知れません。

実は、この作る人たちは、工業製品の目利きではありません。当然品質はおちます。日本のように、外見も性能の内という概念がないのです。

加えて、日本もそうですが「ブランド」で家電を守ることができなかったのです。家電でブランド化ができているのは、ドイツのミーレ、日本のソニー、位のモノで、パナソニックでさえ、まだ構築してないと思います。

ブランドとは、商品を使った体験がもたらす「イメージ」です。そんな中、独ミーレの「キチンとした」感じ、ソニーの「新しい」感じというのは実にすごいことなのです。逆に、パナソニックはどんな感じなのでしょうか?この「感じ」を、製品で固定化できないとブランドは作ることができません。

今、中国メーカーに対し、日本人が日本メーカーに思っているのは、日本メーカーは品質が良いと言うことにしか過ぎません。当然、実績のない中国メーカーは、日本で同じように思ってもらえません。これを感じさせるのが「デザイン」なのです。新興メーカーがデザインに力を入れるのは当たり前のことなのです。

デザインはミニマム。
「狭額縁デザイン」「スタンドデザイン」が大きなポイントとなる。


X10のサウンドバー。
素材感を活かしたデザイン。


X10の背面。かなりのバックシャン。


■若者訴求を狙い
テレビメーカーのCMタレント(アンバサダー)にスポーツ選手を使うことが多いです。ビッグ・スポーツ・イベントは、テレビ・コンテンツとして優れていますので分かりやすいからです。

TCLのグローバルアンバサダーは、サッカーのネイマール選手です。
そして、CONMEBOLコパ・アメリカ2019の地域パートナーでもあります。

しかし、世界スポートと言われるサッカーですが、アメリカは違いますね。アメリカンフットボールの方が、よほど人気が高いです。

手抜かりはないですね。アメリカでは、プロバスケットボールのミネソタ・ティンバーウルブズとミネソタ・リンクスの公式ホームシアター・サプライヤーをしていますし、フットボールでは、ローズボールの公式テレビスポンサーです。

ただ、日本でスポーツアンバサダーが食い込めるかは分かりません。本当に日本の若者を狙うなら、サブカル系のアンバサダーの方がいい様な気もしています。

ストリート系のスポーツ、e-スポーツも視野に入れている。


2018年にはハイセンスが、2019年はTCLと、中国の2トップが日本市場に本格参入。グローバル市場で培ったセンスと、品質、価格での勝負が始まります。

 
商品のより詳しい情報は、TCLのホームページにてご確認ください。
https://www.tcl-jp.co.jp
 
 

 
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2019年9月13日

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