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扇風機の羽根はまだ進化する
シャープ ハイブリッド扇風機『PJ-H3DG』リビングファン


扇風機は、かなりバリエーションに溢れています。
設置場所、サイズ、羽根の枚数、羽根の大きさ、羽根の形状、ACモーターか、DCモーターか、バッテリー付きか、本当にいろいろです。中には、羽根なしというのもあります。
メーカーごと「こだわり」がありますが、シャープ一番のこだわりは「羽根」です。
■そよ風と扇風機 扇風機が理想とするのは、「自然の微風〜そよ風」でしょうね。風呂上がりの強風も悪くないですが、これは特殊状態です。
この微風に対し、バルミューダの答えが「DCモーター」と「バッテリー駆動」。一躍時の寵児となった仕様です。

これはかなり真似されました。
メーカーは、ヒットしたモノを抑えこむ必要があります。でないと、自社シェアが下がりますから当たり前と言えば、当たり前です。

バルミューダ Green Fanの最新モデル EGF-1600-WK。
最近の高級扇風機の標準モデルと言っても過言ではない。


では、真似のし難いのは何かというと「羽根」です。
直接、風を作るパーツです。一度位は、5枚羽より7枚羽の方がイイという話しを聞いたことはありませんか。
羽根で、風は大いに変わるのです。
現在の高級扇風機の標準機とも言えるバルミューダ Green Fanは9枚羽です。

 
■そよ風と羽根
まず、認識して頂かないといけないことは、自然の風と扇風機の風との違いです。

当たる面積です。
自然風は、基本的には体全体に当たります。「全体に同じ様に」です。これに対し、扇風機の風は「スポット」。面積が小さい。扇風機の風を体全体で浴びるには、巨大な扇風機が必要です。小さな扇風機をまとめて1つの扇風機にしているモデルもありますが、それはこれへの対応のためです。理想とは思いますが、現実的には厳しい課題です。

また、自然風は「連続して」当たります。これに対し、扇風機の風はちょっと違います。風の中に分かり難いですが、強弱があります。風は羽根が作り出します。羽根は1枚ごと風を作りそして終わる。それが連続しているので一連の一定した風のように感じられますが、その風は強弱があるわけです。

5枚羽より7枚羽と、羽数が多いこの間を小さくできます。つまり風の連続性の確保です。
更に付け加えると、羽根は空気を切り裂くこともします。間があくとその切り裂き音がはっきり聞こえる。つまり、うるさい扇風機ということになります。
その上、微風を操れます。

多枚羽根のメリットはいろいろあります。

 
■多枚羽根だけでなく、「形状」に着目
しかし、多枚羽根も欠点があります。
重さと生産性です。重さは羽根の枚数分樹枝を多く使うため重くなります。コストもかかりますし、モーターへの負荷もかかります。これにより羽根は、「枚数」以外に「形状」の要素が加わります。

今年発売のシャープの扇風機モデル。
今回の主役は下段左、真ん中のモデル(色違い)。


シャープがここで借りたのは「大自然の知恵」です。
地球には空飛ぶモノは、鳥、昆虫などいろいろいます。飛び方もいろいろですし、羽根の形状もいろいろです。
その中で。シャープが採用したのは、「アサギマダラ」の羽根形状でした。

日本にいる蝶、アサギマダラは、モンシロチョウ、アゲハチョウほどポピュラーではありませんが、日本は多く生息しており、一時は国蝶候補に挙げられたこともありました。国蝶オオムラサキもそうですが、知る人ぞ知るというのに近い蝶です。

アサギマダラが有名なのは、長距離飛行の達人だからです。
冬は暖を求めて、南下。西南初頭から台湾まで飛行する個体もいます。逆に夏は涼を求めて北上。要するに、南に北へ、飛び回っている蝶です。
長距離を飛び渡り鳥は、羽根の形から始まり、習性もそれに合わせます。渡り鳥が寝ながら飛行しているのは有名な話しですし、アホウドリ(アルバトロス)は飛行は雄大なのですが、それは翼の大きさによります。長距離を飛ぶ鳥は、省エネ飛行を心がけています。アホウドリはグライダー型です。このために大きな翼を持っています。羽ばたきも、少ないです。
アホウドリですが、地上では動きがトロイです。お陰様で、人間からは「アホウ」という差別的な名前を付けられましたし、乱獲されすぎて絶滅の危機に瀕しました。人は自分の役に立つ、立たないだけで判断するためですが、アホウドリにとってはいい迷惑です。

扇風機の羽根は、それより速く廻ります。強で、1,100rpm程。しかし、先日発表されたダイソンのスティック型掃除機、V10が16,000回転に比較すると1/10以下です。
しかし重要なのは、低回転でもしっかり風を送れること。そこで眼を付けたのが蝶です。蝶の羽ばたきは、10回/秒程度です。同じ昆虫でも、セミは35回/秒、トンボは40回/秒。
その蝶の中で、効率がいいのは・・・・。お分かりですね。長距離をモノともしない蝶、アサギマダラと言うわけです。
アサギマダラの羽根形状、「くびれ」と「うねり(曲面性)」を、扇風機の羽根に移植したわけです。

これでシャープは、そよ風を強弱なく、滑らかに送ることができるようになりました。

 
■リビングファンなのでハイブリッド化
さて、扇風機で一番対応しにくいのが、実が「リビング」です。
理由は「広すぎる」のです。

前述の通り、扇風機は「スポット」。しかし、一人ならともかく、リビングに多人数いると対応が厳しい。
拡散させながら、均一な風が必要だからです。
クルマでいうと、低回転でも粘りのある(低速トルクがある)エンジンに似たオーダーです。

 
で、シャープが眼を付けたのが、アゲハチョウの「尾状突起」です。
「尾状突起」は、アゲハチョウの仲間が持っている独特の形状の羽根です。

ただ、同じアゲハチョウ科に属するアオスジアゲハなどにはありません。
必要とする種、必要としない種に分かれたわけです。
アオスジアゲハは、アゲハチョウより敏捷で素速いです。もしかしたら幼虫がクスノキ科の葉を好むためかもしれません。巨木にすっと登るための、飛翔力です。

ちなみに、尾状突起がある理由は、未だに定説はありません。
ある人は「天敵に頭と思わせるため(尾状突起を持つシジミチョウは、近くに眼状紋がある)」といい、ある人は「飛行を安定させるため」と言います。ま、定説にはなっていませんが、少ない面積で、空気を巻き込むにはよさそうな形状です。

理詰めではありませんが、シャープの技術者は、この「尾状突起」を採用しました。

シャープの話しによると、効果は十分あったそうです。
「くびれ」「うねり」に加え「尾状突起」。それぞれ独立した軌跡を描くので、7枚の羽根が3倍の21枚羽同様の効果を持つそうです。
21枚換算が正しいのか分かりませんが、風が滑らか(等密度密度でゆらぎがない)で安定しているのは事実です。

その上、シャープの扇風機はプラズマクラスター搭載。送り出す風の中にプラズマクラスターイオンが含まれます。
プラズマクラスターイオンは、周りに水分子を引き寄せます。プラズマクラスターのマークが「ぶどうの房」にみえるのは、プラズマクラスターイオンの周りに水分子が取り巻いているのを描いたからだそうです。

シャープは今、扇風機のトップシェアだそうですが、きちんと進化させたモデルを皆さんにお届けしているわけです。

 
■根本的な高損問題は未解決なまま
しかし私は、「扇風機は今後、大幅な見直しを掛けなければならないのではないか」と考えています。
ダイソンの扇風機、エアーマルチプライヤーは、外に見える羽根を持ちません。しかも台部に、モーターがあります。すごく低重心。このため、倒れません。安全です。

扇風機は、モーターが高い位置にあります。要するに重心が高い。これに対しバランスが取れるように台座を重くします。しかも持ち運びができる様に、軽くしなければなりません。柱に付けると、使わない時、絵になりませんし、風向きが固定されます。
羽根から風をもらうのは好きなのですが、ちょっとインテリアとしては頂けません。

日本初の扇風機(東芝製)のレプリカ。
羽根の後ろにモーターというレイアウトは変わっていない。


扇風機は、団扇を4枚使ったものが、江戸時代からありました。
家電でもかなり初期から、発売されたモノです。この時のレイアウトが今に生きているわけですが、そろそろ見直してもイイのではと思います。(ダイソンのレイアウトを勧めているわけではありません。)

 
商品のより詳しい情報は、シャープのホームページにてご確認ください。
http://www.sharp.co.jp/products/


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2018年4月7日

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