豆知識

日本の空気は、どの程度汚れているのか?


「田舎は、空気がおいしいなぁ!」よく言う言葉です。
昔は光化学スモッグで、生徒が外に出るのを禁じていたことがあった東京もですが、今はそんなことはありません。一時報じられていたPM2.5も、今、テレビでやることはまずありません。
工場、流通、家庭。化学汚染に対し、最大限の力で対応してきた結果、日本の空気は、安全でキレイなモノになったのでしょうか?

白モノ家電の空気清浄機は、花粉対策だけのためと考えていいレベルなのでしょうか?
WHO他のデーターを紐解いて見たいと思います。

 
■PM2.5の基準レベル その前に、PM2.5の基準レベルをお復習いしておきます。
PM2.5というのは、日本語では「微小粒子状物質」のことであり、サイズが2.5μm以下の粒子状物質を指します。花粉、黴菌より圧倒的に小さいサイズです。

ポイントは、その物質が何であるかが問題ではなく、そのサイズであることが問題と言うことです。

人間は、空気中の微粒子に対抗すべく、「鼻毛」「粘液」などを持っていますが、完璧ではありません。これらが対応できるのは、10μmまでだとされています。

当然、小さければ、小さいほど、体内に侵入しやすくなります。人体へは、呼吸器疾患、循環器疾患、及び肺がんの増悪因子になるとされています。

このため、日本では、平成21年(2008年)9月9日にPM2.5に関わる環境基準を告知しました。それによると「1年平均値が15μg/m3であり、かつ、1日の平均値が35μg/m3以下であること。」になっています。

 
■実害があった事例 基準を聞いてもピンと来ないと思います。PM2.5は大気汚染ですから、過去の有名な大気汚染をPM2.5の観点から見て見ましょう。

ロンドンの霧。シャーロック・ホームズでも有名なロンドン名物ですが、これ「スモッグ」です。原因は石炭暖房による高濃度二酸化硫黄です。英国紳士は、黒で身を固めることが多いですが、案外スモッグ対策かも知れません。

それはさて置き、1952年12月の頭2週間スゴかったそうです。11月30日に二酸化硫黄濃度:約400μg/m3だったのが、12月7日には2000μg/m3になります。総粉じん濃度は、約250μg/m3が1600μg/m3。基準値と2桁違います。

身体の弱い老人、子ども、呼吸器・循環器の慢性疾患患者への影響は大きく、2週間で4,000人以上死亡。影響は12,000人を越したと言われています。これ位の濃度になると、人への影響も早く出ます。

 
日本でも、1960〜70年代の四日市喘息は、二酸化硫黄濃度が1ppm(1ppm=0.0001%)以上だったとの記録があります。被害にあった人は、死ぬまでの苦しみです。
 
これらは即問題になるレベル。今、ここまでの濃度であることはまずありません。どちらかと言うと、長期曝露による人体影響が問題視されている状況ですが、どりらにせよ空気は汚れています。

 
■WHO発表の都市部のPM2.5の年平均濃度

WHO 世界保険統計データー 2018年版に掲載された2016年の都市部でのPM2.5の平均濃度。TOP 10とキリ番、そして文中に使用した都市を抜粋掲載した。


1位はネパールの99.5μg/m3です。特に酷いと言われているのは、釈迦の生誕地「ルンビニ」地域。花祭りのようなイメージはなく、今や一大工業地域だといいます。

インド熱帯気象研究所がWHOと協力して行った研究の報告書によると、「汚染度の高いヒンドゥスタン平野から国境を越えて運ばれた大気と、気温の逆転によって地域に取り残された工業汚染の大気、複合的な影響が冬季の深刻な汚染を起こしている。それ以外の季節は、主に地元で出た排気ガスが空気の質を落としている。」とあるそうで、「工業汚染」「クルマ」「大気が循環しない」のが問題であることがわかります。

木々にはホコリ(大気の汚れ成分)が付着。白くなり、息ができないレベル。喘息の持病がある人は、即 発作に見舞われると言いますので、生きづらい土地になったわけです。

因みに、隣接のインドは7位。バングラディッシュは12位。エリア全体がよくないことが分かります。

 
工業による汚染と言えば、お隣の中国も有名です。こちらは15位。51.0μg/m3。
ちなみに2016年1月1日に中国政府が定めた環境基準は、年平均値:35μg/m3、日平均値:75μg/m3ですから、年平均で外れています。甘めにした環境基準、しかも年平均を上回っているのが中国の現状です。

上位を占めるのは特異な例を除いて、砂漠地方、アフリカです。乾期があり、雨が降らないと本当にホコリっぽいと言いますが、そのようです。

 
中国のお隣、北朝鮮は31.0μg/m3で54位。韓国が24.7μg/m3で73位。中国から距離を置くと空気がキレイになるようです。

 
ヨーロッパでは、工場が多いポーランドが21.5μg/m3で92位。フランスが12.4μg/m3で151位。イギリスは10.6μg/m3で169位。ロンドンスモッグは過去の黒歴史になったようです。

そして、アメリカは7.6μg/m3で182位。

 
日本はというと11.8μg/m3で、159位。なかなかのポジションです。

 
■Environmental Performance Report における日本評価
こちらでの大気評価は、現在のスコア:90.78、ランク:27位なのですが、過去10年間の記録をから算出されたベースラインは、スコア:91.49、ランク:15位なので、基本良好だが、少し良くなくなりつつあるという感じです。

 
2016年の時点で、日本の都市の大気は世界でも良かった。これが今の状況です。

 
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2019年1月13日

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