新製品

三菱が冷蔵庫で見せたユーザーへの歩み寄り
冷凍室が真ん中のWXシリーズと、野菜室が真ん中のMXシリーズ(2018年モデル)【太鼓判認定】


延々と続いてきた家電の「省エネ」対応。未だに追求すべき目標ではありますが、省エネを追求すると、どのメーカーをとっても同じ方式(構造)になるようです。
例えばエアコン。省エネエアコンの前へのせり出しはスゴいです。個人的には「タヌキ腹」と呼んでいますが、エアコンの下にいると、落ちてくるのではと、ヒヤヒヤする程、せり出しています。性能は良いのですが、リビングに入れるのは、自分の美意識を否定するようで結構イヤなものです。これを汲み取ったか、昨年、三菱、ダイキンは薄型を発表。性能は究極ではありませんが、間違えなく部屋を居心地良くするエアコンです。

3月30日に発売されるダイキン工業の”risora”シリーズ。
デザインが魅力。


今回、三菱が発表した新型冷蔵庫も似た感じです。ただし冷蔵庫ですから、居心地ではなく、使い勝手となります。

 
■あなたの欲しい冷蔵庫は?
こう聞かれた時、一番は「外形寸法」だそうです。冷蔵庫は、家電の中で最も大きいですから、とにかく場所が必要です。「この幅に収まるか、どうか?」で気に入っていても買えなかったと言うのは、割とある話でもあります。

この次の重要ポイントは、「容量」。同じスペースを占有されるのなら、少しでも容量の広い方を選ぶ。特に共働きが当たり前、買い物は週一のご時世。大容量は魅力です。

「次のポイントは?」、となると「レイアウト」が来ます。400L以上なら当たり前の5ドア。結構いろいろなレイアウトが可能そうです。が、最もよく使う腰上〜目線の「冷蔵室」は位置的には定位置です。で、レイアウトで変わるのは、大きな「野菜室」と「フリーザー(冷凍室)」。要するに「新鮮野菜」を重視するか、「作りおき、冷凍食品」を重視するかの差です。

三菱が丁度買い換え時期のユーザーにアンケート調査をした結果、野菜派は6割だったそうです。彼らが望んでいるのは、野菜室が真ん中にある冷蔵庫です。

ところが実際にユーザーが購入するのは、実は「8割以上がフリーザーが真ん中にあるタイプ」なのです。

当日使用された三菱電機の資料から。


 
■何故?クェッションの嵐!
長期に渡り、冷蔵庫を作り続けて来た日本メーカー。他社と差別化をするために、ユーザーの意見は、どんなに細かいことでも聞いてしまう様なところがあります。当たり前なら、冷蔵庫の6割は、野菜室が真ん中であるべきなのですが、そうなっていません。

野菜にこだわる人は、キッチン台に、野菜室が近いととても楽。


自社の冷蔵庫のラインナップのほとんどを、野菜室を真ん中にしているのは、東芝だけです。(シャープは「フリーザー」重視のため、フリーザーを大きくしたため、野菜室は小さくなり、上のレイアウトをとらざるを得なかった。野菜室重視での位置決めではありません)

是非、自宅の冷蔵庫を思いだしてみてください。


何故でしょうか?
東芝が、特許でレイアウトを抑えているのでしょうか? それとも新鮮野菜重視は、ここ1年の流行なのでしょうか?

実は、フリーザーが上にレイアウトされているのは、「省エネ」に相応しいレイアウトだからなのです。

 
■ネックは「圧縮機(コンプレッサー)」
冷蔵庫はすごい家電です。夏でもギンギンに冷えます。エアコンと並ぶ文明の利器です。徳川将軍は、富士の氷穴から、夏、氷を飛脚で運ばれ涼を取ったと言いますが、現代日本は、自宅でガンガン氷を作ることが可能です。

冷蔵庫の原理は、夏の夕方に行う「打ち水」と同じです。打ち水は、水が気化する時、熱を奪いますが、冷蔵庫は冷媒が気化する時、熱を奪うのです。ただ、水は水道から、幾らでも取ることが可能ですが、冷媒はそうは行きません。ノンフロン冷媒になったとは言え、化学物質。野放しにはできません。では一定量の冷媒でどんどん「気化」させるには、どうするか、気体を圧縮、液化してやるのです。ここで使うのが「圧縮機(コンプレッサー)」。

要するに、「冷媒(気化)・吸熱」⇔「冷媒(液化)・放熱」を繰り返すことにより、冷やしてやるというわけです。

この圧縮機は、当然圧力が掛かりますので、分厚い金属製。とても重いです。冷蔵庫は結構高さがあります。倒れてきては大変です。最も重いパーツである圧縮機は、一番下です。

機械ですから発熱します。45℃前後になるそうです。当然、隣にあるものに熱が加わります。それでは質問。「「フリーザー」と「野菜室」、圧縮機が隣の場合、どちらが問題が発生しにくいでしょうか?」
答えはお分かりですね。「野菜室」です。

つまり冷蔵庫の原理から言うと、「野菜室」が下にあった方がナチュラル。つまり、省エネし易いわけです。各メーカー共に省エネを追ってきたわけですから、ユーザーが希望しているにも係わらず、「野菜室」は下にレイアウトされたわけです。

通常の冷蔵庫は、フリーザーを中心に温度が段々高くっていく
ように設計されている。効率(省エネ)を求めた結果である。


 
■冷蔵庫は省エネ住宅と同じ
さて、これに対し、三菱が採用したのは「断熱技術」です。端的に言うと、省エネ住宅で使う断熱技術の家電版です。ただ問題は、断熱材の「厚み」です。レベルが低い断熱材でも厚ければ問題ありません。が、しかし、それでは同じ設置面積で大容量化ができなくなってしまいます。断熱材は薄く高性能である必要があります。

冷蔵庫で使うのは「真空断熱材」と「ウレタン」。三菱電機は、このウレタンの発泡を制御することにより、薄型化しました。これにより、省エネ性を損なうことなく、野菜室を真ん中に持って来ることができました。

黄色でマーキングされているのが、断熱材で使用される三菱独自のウレタン。


今回、三菱は、フリーザーが真ん中のWXシリーズに加え、野菜室が真ん中のMXシリーズをラインナップしましたが、省エネ性能、容量共に同じ。双子のようなラインナップです。

 
■ちょっと感心した野菜室「中物エリア」
野菜は、結構場所を取ります。まだ丸ごとゴロッとしたものはイイのですが、ハーフカットは案外多いモノ。特に、この冬のように、葉物が高騰すると、白菜1/2カット。キャベツ1/2カットなどが出回ります。

カットしたところは傷み易いので、積み重ねとかできません。が、野菜室の棚は、ハーフカットを置くには、ちょっと浅めなものが多いです。

今までの野菜室。使い易いハーフカットの野菜を上手く収納できない。


今回、三菱は中物エリアを設けました。これハーフの葉物がすっきり収まります。切り口が触れないので、とってもイイ感じ。ちょっしたことですが、イイ感じです。

ハーフカットの野菜を考慮し、一部深い部分を作った新型。


 
■省エネの呪縛から解き放たれ、多用化へ行くのか?
今、ここ10年位の省エネ技術がまとまってきました。

結果、家電として設計の自由度がかなり高くなってきたと言えます。特に、エアコン、冷蔵庫など、制約が多く自由度が低かった家電の自由度が上がったのは大きな魅力。

今後のIoT、AI、などの提案を前に、基本が錬り上がった感じがします。私などは、停電しても良いように、冷蔵庫に充電池を入れ込みたいし、その高さから、見守りカメラもありだと思っている。

今後、どの方向へ行くのかは、断言できないが、「次のモデルは、予想だにしないものが出てくるのでは?」と思わせる新製品だ。

もちろん、次のを待つ必要はない。十分イカした新製品でもあります。
生活家電.comとして、太鼓判をついて推させて頂きます。

●三菱電機 冷蔵庫 MXシリーズ MR-MX57D
容量 572L、色 クリスタル・ホワイト、3月30日発売、導入時市場想定価格 約40万円(税抜)。
色は、他にグラデーション ブラウンあり
容量 503LのMR-MX50D(市場想定価格 36万円(税抜))もある。


 
商品のより詳しい情報は、三菱電機のホームページにてご確認ください。
http://www.mitsubishielectric.co.jp/index_p.html
 
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2018年3月3日

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