新製品

技術の誉れ、シャープの業務用8K液晶モニター
しかしそれで・・・


4月中頃発表された、シャープの業務用液晶モニター『LV-70002』。
頭では十二分に理解していた積もりでも、いざ、1つにまとめられて、4Kモニターと比較すると格の違いがマザマザ。横綱と新入幕くらいの差は優にありそうです。
■技術の凄味が透ける逸品
液晶テレビは、TVの画質を解像度で表します。
ハイビジョンが、1920×1080画素。(2K。Kは1000(キロ)の意。テレビはアスペクト比(縦横の比)が16:9と決まっているので、1920を2Kと表現している)
そして4Kが、3840×2160画素。
8Kが、7680×4320画素。

この一コマ一コマををピクセルと呼び、この小さなピクセルが集まって、画を描写しているわけです。
4Kでは、この4倍の点、8Kではバイビジョンの16倍の点で描写、キレイに見えるわけです。

しかし、別の技術も必要です。
それは微細化技術です。
例えば、70型でのそれぞれの画素サイズを計算しますと、
2K 0.64mm2。4K 0.16mm2、8K 0.04mm2 です。

まあ小さいです。
通常の場合、点灯している液晶画面をじっと見ると、縦横に薄い線が見えます。全てではありませんが、ピクセルの間の線です。これは4Kもそうです。

ところが、これが見えない。
このためまるで違いますね。TVの様な感じでなく、画(絵)という感じです。
理論的には、分かっている積もりですが、見た瞬間「スゴい!」と思いましたね。

写真(静止画)映像。まさに画(絵)である。


 
■HDR規格に対応。色も広色域技術「リッチカラーテクノロジー」で対応
HDR規格というのは、ハイ・ダイナミック・レンジの略です。
白から黒までの明るさのダイナミックレンジを極めて細かく調整しているということです。
これにより、白とび、黒つぶれを極力防ぎ、眼でみた様ななめらかな画の表現となります。

また、4K放送は現在といろいろと違います。
その一つが色。当然、再生できる色の範囲が拡大します。
8Kしかもモニターですからね。
当然、広範囲再生できなければなりません。
で、新技術「リッチカラーテクノロジー」を投入。

技術一つ一つの場合は、まだ差を見つけ出し、納得できるのですが、複合だと「こうも変わるものか!」となります。

白とび、黒つぶれなく、細部まで見ることができる。


 
■先代との差
シャープは8Kモニターを2015年3月にも出しています。
その物理差を表にして置きます。
70型8K映像モニター 85型8K映像モニター
発売時期 2017年6月 2015年3月
寸法(W×D×H)
除スタンド
156.4×9.2×91.0cm 193.0×17.3×111.5cm
重量
除スタンド
42.5kg 100kg
消費電力 470W 1440W
寸法では厚み、重量、消費電力など、サイズ以上の違いが出ていることが分ってもらえると思います。
実用的にも使えるものへ、追い込んでいるのです。

業務用らしく、端子も良さそう。
注)ケーブルは付属品ではありません。


接続は図解。規格が多いのでちょっと嬉しい。


 
■液晶で8Kを行う意味
地デジ(ハイビジョン放送)への切替から、10年経たないうちに8Kの放送へ。
正直どこまで行くのか分かりません。

例えば、オーディオCDの規格は、「人の可聴域の上限20kHz」を基に決められています。
発売当初から、「音がモノ足らない」という話はマニアの間では当たり前でしたが、それよりもアナログメディアで当たり前だった「静寂の時、ノイズが聞こえる」ということがなくなった事、サイズ、使い勝手の良さが評価され、世界的に普及をしました。

1983年の発売で、現在も販売されていますので、20年以上販売されているわけです。
この遅さがあったからこそ、世に普及したとも言えます。

 
テレビは、オーディオとはちょっと違います。
2Kは必需品でしょう。しかしテスト放送、もしくはCS放送レベルでは必需品とは言えないでしょう。
しかも、それが4K、8Kという技術です。
一般価格なら兎も角、私には50万円のテレビが必需品とは思えません。

特に、一人暮らしが多くなると、その傾向に拍車が掛かります。
必需品にするなら、使える一番安いモノは5万円を切って欲しいのです。

8K受信機TU-SH1050。モニターの相棒。
最終的にはこれをモニター内に収め、スピーカーを付けないとテレビにならない。


また技術もそうです。
アナログ時代は、ある技術が普及するまで待ちながら、次を開発している状態でした。
ところがデジタル時代は違いますね。
次に作るモノが決まっているのです。

2K⇒4K⇒8Kの解像度アップは典型的です。

ここで本当に必要なのかは議論されません。
8Kのお題目は2020年の東京オリンピック。NHKの技研公開では中々面白そうな機能が展示されていましたが、本当に必要なのかは分かりません。
しかし現状は、確たる理由も述べられないまま、技術的に高い方向へ向かっています。

 
そんな中、シャープは2018年に向けたシャープの液晶テレビ事業の3つの方針を述べました。

「1.当社映像商品はお客様にもっとも「感動」を与えられる映像は何か?を追求する。感動は「真のリアリティ」、「本物感」を実現すること、これを実現できるのが8Kの高精細技術。
・8K解像度は人の視覚では実物と殆ど見分けが付かなくなる真のリアリティ実現できます。
・ディスプレイはFHD→4Kと進化し、8Kは本物感を目指す究極のディスプレイです。」

「2.現時点で8K高精細テレビをいち早く実現できる唯一の技術が「液晶」であり、当社は液晶パネルを採用しお客様にもっとも感動を与えられる8K高精細テレビに注力していく。」

「3.加えて、お客様のニーズをとらえて、いち早く4K8K放送の受信機関連機器のラインアップを拡充していく。
・高度BS放送に対応した、4Kテレビ、8Kテレビの早期商品化とサイズラインアップの拡充。
・高度BS放送に対応した、4K/8Kレコーダー、4K/8Kチューナーなどバリエーション拡充。」

正直言うと、2018年と期間限定の割りにかなり狭いモノの見方のような気がします。

 
早期開発、シェア獲得型のビジネスモデルは、画期的に違う世界観を持った家電が出てきた時にその成果がでます。
例えば、ビデオで言うとDVDがそれに当たります。

ところが、ハイビジョンだと言うことで、次世代DVD、つまりBlu-ray、HD-DVDの規格争いが起こりました。この時の各社のビジネスプランはスゴかったですね。
アップコンバーター、放送コンテンツの優位性などを無視して、DVD並の垂直立ち上がりの事業計画でした。

結局、DVDを持っている人たちに対し、BDは決定打にならず、緩やかな置き換えとなった次第です。

千葉県幕張市のシャープビル。


さて、シャープ。技術力はあります。液晶の研究にも多大な経費を掛けてきたはずです。
そのために、開発をリードしてきたことは事実です。
しかし、生産を含む事業的には失敗でした。
従業員どころか、会社すら守れなかった。

私には、技術的に「眼を見はる」ほどのこの技術が、ビジネスプラン的に会社復活のシンボルになるとは思えないのです。

 
しかし、こうも言えます。
技術は会社ではなく、基本的に「人」に付きます。
その視点で見ると、「シャープの中核はまだ健在である」とも言えます。
ここから、巻き返してくれると嬉しいのですが・・・。

 
さて、当システムは、5月末NHK技研公開でも見ることができると言います。
今、8Kの映像コンテンツを作り出せるのは、よくも悪くもNHK。
ドラマなどには興味ないですが、「スポーツ」「オペラ」などのライブ、そして「動物ドキュメント」「世界遺産」などはかなり見たいです。特に、NHKの動物ドキュメンタリーは世界でも有数です。

 
商品のより詳しい情報は、シャープのホームページにてご確認ください。
http://www.sharp.co.jp

2017年4月24日

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