インタビュー

VAIOのDNAは健在か?
二代目社長 大田義美氏インタビュー
~WEDGE Infinityより再掲載~


ソニーからスピンアウトしてVAIOが新会社になって1年。
6月に、大田義美氏が、代表取締役として就任されました。

大田氏は、ニチメン(現双日)入社。商社畑で活躍された後、サンテレホン社長を経て、VAIO社長に請われた方で、PC畑ともソニーとも無縁の所から来られた人です。

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VAIO社 社長 大田義美氏。
事業を軌道に乗せると共に
VAIOらしい製品創出が必要。



その様な経歴の大田氏が、今は独立していますが、ソニーでも有数のサブブランドだったVAIOをどちらの方向へ率いて行くのか興味があり、インタビューを試みました。

■「きちんとした会社組織で、自活できることが、第一目標」

「VAIOをどちらの方向へ率いて行くのか」とストレートに質問してみました。

そうすると次の様な答えが返ってきました。
「ソニー時代のVAIOは一事業部でしたので、営業はソニー・マーケティングを含め、ソニー系列の販売会社が行っていました。
これだと、商品を開発、生産、そして販売するというメーカーとしての仕事が閉じていません。
このため、今年から国内営業をソニー・マーケティングに委託しながらも、自前の営業部隊を持ちます。
売り込みも手がけますが、主にはユーザーと密なコミュニケーションをダイレクトに取り、商品にフィードバック、商品力を高めて行くことに力を入れます。」

当たり前といえば、当たり前の解答です。

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VAIOの大ロゴが付いたPC。
VAIOらしさが問われる。



しかし、私が注目したのは、VAIO事業に営業部がなかったことです。
話の途中にも何度か出てきましたが、VAIOの商品力は、メーカーの独りよがりの部分が多分にあったそうです。

VAIOはPCに後期参入したメーカーとしては成功した部類です。
だからこそ今でもブランドがあるわけですが、2つの意味で、面白い話だと思いました。

1つめは、マーケティングは、商品を作り上げる時欠かせないことの1つでもありますが、実は調査の方法によっては全く役に立たないことがあります。
というのは、多くの場合、調査は言葉により行われますが、言葉というモノは使い方が人により異なるためです。
要するに、マーケティング調査をしたはいいが、データーを読み違えましたという、ありがちな話です。

あと1つは思い込みの強さです。

実は底光りしている様に感じられる魅力ある商品は、思い込みから産まれます。
それはどういうことかと言うと、発案者が本当に欲しいと思っているモノを、そのまま組み立てると優れた製品が生まれることが多いからです。

ウォークマンなどは典型例ですね。
当時としては、録音機能がない、スピーカーのない機器はなかったからですね。
それを「飛行機の中でも音楽が聴きたい!」というので、作らせたのが始まり。
この延長線上にあったのが「どこでも音楽が聴きたい」というニーズ。
かくして、世界的な大ヒットになる。わかる様な気がします。

そうなると、あの差別化が難しいPCの商品群の中で、VAIOがある種の輝きを放っていた理由もわかります。

 

■財産は、「安曇野」

「VAIOの財産は、間違えなく安曇野です。
この工場のレベルは高く、これがあったから独立できたと言ってもイイ。
ラインは自社製品、請負仕事も含めて、フル操業してしています。
しかし会社的には、まだ不安定であり、皆が安心して勤められ、力を発揮できるようにするのが、私の勤めです。

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VAIO社正門。後ろに信州の山々が見える。



『自活』はVAIOの急務です。
営業部隊はそのためにも必要ですし、ここ1年で集中的に対応、以降うまく動くようにします。」

話をしていると、大田氏に対し「実に堅実だなぁ」というイメージを持ちます。
人生経験を踏まえて、父親が子供を諭しているような感じを受けました。
この場合は、VAIOが子供と言うことです。

VAIOは「商品力で勝負」と言うPCです。
しかしユーザーは移り気、常に支持されるとは限りません。
その時重要なのが営業力。
営業は売りにくいモノを、きちんと売って光り輝くのです。

営業に媚びるような商品もあります。
いろいろな新機能が付いており、店頭を華やかにできる商品です。
でも、日本のユーザーの目は肥えています。
品質が悪いと、店頭から出て行きません。

やはり商品は、ユーザーにアピールし、それで買ってもらえる仕様にすること。
営業は、店に商品の魅力を伝え、店と一緒に店頭作りをすることが重要です。

そのためには、できる限り風通しのよい組織が必要です。
が、それを作り上げても、生活への不安が募れば、その組織も上手く廻りません。
その様なことがないように、ここ1年は経営の安定と組織作りに力を入れるというわけです。

 

■B to Bに力を入れます

組織作りが終了した1年後、もしくは1.5年後、野心的なVAIOのPCが出てくるのかとの期待を込め、次の商品のあり方について聞いて見ました。

「B to BのPCに力を入れます。ルートも商品も重要です。」

実は、期待していた答えとは、ちょっと違いました。
が、これしかないことにも、思い当たりました。

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VAIO工場の皆様方。現時点でVAIOは全てMADE IN 安曇野。



今、B to Cに力を入れても、すぐに経営は上向かないのです。
理由は、スマートフォン(以下スマホ)。
その昔、B to Cは、メールにネット、ゲームに年賀状と言われましたが、今、年賀状以外は、スマホで対応可能です。
本来、PCは創造性を助けるツールなのですが、B to Cはそのニーズは大きくないわけです。
その点、B to Bは、スマホよりじっくり考えることの出来るPCが支持されるというわけです。

このため、VAIOは基盤市場をB to Bに置いたわけです。

 

■1年で海外展開に踏み切った理由

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米国での展示会(開場前)。VAIO Canvas Zは、
大いに注目を集めたという。



Canvas

そうは言いながら、VAIOは1年で、米国、そしてブラジルでの販売を決めています。その当たりを細かくうかがってみました。

「まず、双方共にVAIOブランドに愛着を持ってくれているエリアで、高い人気があります。
が、米国とブラジルでは性質が異なります。
米国での販売の中心は、VAIO Canvasです。
理由は米国では、日本の数倍個人クリエイターがいるからです。仕事の質により収入が大きく変わるわけですので、彼らはいいツールと判断すれば、お金を払います。

ブラジルの方は、POSITIVO INFORMATICAとの提携です。
こちらは日本より輸出しません。
製造、販売ともに海外です。
ブラジルではいろいろなモデルが必要になりますから。」

ブランド力の有効活用ですが、この「郷に入れば、郷に従う」かつ、リスクを小さくする方法は、商社畑の経験がある大田氏に相応しいと感じました。

 

■VAIOのDNAを見せつけるモデルは?

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今、もっともVAIOらしさが感じられる
VAIO Canvas Z。



インタビューしながら感じたのは、打てる手を打ったので、今からそれをきちんと芽吹かせて実らせようとする、堅実な経営の考え方です。

これはこれでイイのですが、やはりVAIOに期待したいのは、「VAIOらしい」PCです。やはり、これが気に掛かって仕様がない。
で、素直に B to CのVAIOらしいモデルの投入に関して質問してみました。

「PCでも、半年で設計ができるかと言えば、そうではありません。
長いものは数年かかります。
すでに仕込みに入っていますので、ご期待ください!」

人間には、雌伏の時と雄飛の時があります。
会社も法人ですから、同じです。
ここ1年雌伏の時を過ごすVAIOの、雄飛の時が待ち遠しいです。

注)当原稿は、2015年11月5日に、WEDGE Infinity、家電口論に投稿した記事を、WEDGE Infinity様のご厚意で、再掲載したものです。

 

VAIOのホームページはこちらです。
https://vaio.com

2015年11月22日

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